「そういえば、鎧装竜ってなんなんだろ?」
ふとコウが呟く。ヴァルマからの伝言をナダに伝えたはいいが、それが何なのかは、ついぞ知る由もない。
「鎧装竜……ずいぶんと懐かしい名を聞いたな」
安楽椅子で居眠りをしていた尚久がすっくと立ちあがる。彼のうちにあるセトーの魂が目を覚ましたのだ。
「知ってるのか、セトー?」
「騎士竜が生まれるよりも遥か前、ドルイドンの侵攻にたったひとり……いや、一頭で立ち向かった恐竜がいた」
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「それが……鎧装竜?」
偶然再会を果たした長老に誘われるまま、彼の経営する喫茶店で、サンドイッチをぱくつきながらナダが尋ねる。
「うむ。名こそ伝わってはおらぬが、巨大な翼竜であったとされておる。自らの身体が傷つくことも顧みず、彼はリュウソウ族や恐竜たちを守るためにドルイドンと戦っていたという」
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「その翼竜に、リュウソウ族の科学者ヴァルマが鎧を与えた。それは彼の身体を守り、ときに武器としてドルイドンを退けたそうだ。その雄姿を見て、ヴァルマがのちに生み出したのがガイソーグであり……ディノミーゴをはじめとした騎士竜たちだ」
セトーの解説に、メルトが「知らなかった……」とこぼす。
「鎧装竜についての伝承は、ほとんど残されてはおるまい。せいぜいが口伝として、歴々の長老が先代より寝物語に聞く程度だったのかもしれぬな」
「えっ何々? 鎧装竜の話してんの?」
とティラミーゴの背中に乗って、ピーたんことプテラードンが口をはさんできた。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も、オレのあこがれだぜ! あのでっかい翼で空を飛んで、オレたち騎士竜みたいな鋼の身体を持たなかったのに、ドルイドンに果敢に立ち向かった! あーいうのを、生まれながらの騎士っていうのかもな!」
ピーたんが熱い口調で語るが、気が付くとそこには誰もいなかった。
「……あれ?」
「みんな出てったティラ。ドルイドンが出たって」
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「せやけど騎士竜やない、ただの恐竜ってことは……」
「うむ。他の恐竜と同じく、天寿を全うしたと伝え聞いておる」
せやろなぁ……とナダがグラスに残った氷を噛み砕く。
「ただ、彼のソウルの居場所には心当たりがないわけではない」
「マジか!?」
すぅっ……と息を吸い、長老が重々しく口を開く。
「……試練の断崖」
リュウソウ族の騎士の鍛錬の場として、セトーによって造りだされた場所だという。
「セトーは唯一、騎士竜を封印する力を有していた。あるいは、鎧装竜のソウルも彼の手によって封印されかの地に留まっている……かもしれない」
「かもしれない、か……。ま、アテもなくウロウロするよりはマシやな。ついでに修行もできるし一石二鳥や!」
席を立ち、長老にその場所を尋ねる。
「やはり行くか。先に言っておくが、生半可な覚悟では断崖を登りきることすら困難だぞ?」
曰く、マスターレッドでさえ登るだけで一週間を要したという。与えられた試練を超えることができずに帰ってくることのなかった騎士も多くいたらしい。
「今更そんなんでビビるタマやないで。オレは強くなりたいんや。前みたく独りよがりやない、あいつらと肩を並べて戦える強さが……オレは欲しい」
「……成長したな、ナダ」
その表情に、かつての危うさはもう無いと確信した長老が、断崖への道筋を伝える。聞き出すや否や「おおきに!」と残りのサンドイッチを頬張りながら駆け出して行った。
「騒がしい奴だ……さて、そろそろコウたちにちも試練の断崖の事を教えなくては……弓矢どこにやったかな?」
-つづく-
続いてのBパートは、本作オリジナル要素の一つ「鎧装竜」についてちろっと。
ガイソーグのビジュアルを見る限り(特に頭部デザイン)、劇場版で同時に出てきたディノミーゴがベースとは思いにくいんですよね。カラーリングも含めて。
どっちかっというと翼竜っぽいかな…と(やや強引ですが)思い、ガイソーグの元となった存在ということで鎧装竜を設定しました。強化改造を受けた恐竜ではなく、ただの恐竜が鎧をまとったヤツです。パンツァードラグーンみたいな(わかりにくい
先に言うと、プテラノドンではありません。ピーたんいるし。
その正体についてはCパート…ではなくさらに次の話になっちゃいますので、いろいろ予想してみてください。そんなに難しくはないですが(ぇ