「勇介」
鈴の転がるような声に、名前を呼ばれた青年は振り返る…その前に動きは背後から伸びた腕に絡めとられて阻まれる。
「どうした、コロン?」
勇介はその腕の持ち主の名前を呼び返すが、返事はなく。ただ彼女の冷たく硬い感触を背中に感じた。
Kissing to……
Case:03/Yusuke × Colón as LIVEMAN
なんだかすっかり背中を気に入られたものだ……と勇介が述懐する。
いつか、バイクの後ろに乗せた時のことがあったが、どうやらあのとき以来、彼女に抱きつき癖……のようなものが付いたらしい。
果たして人工知能に“癖”が身につくのかは、科学者の端くれである勇介にもわからない。彼の恩師たる星博士によって生み出されたサポートロボットである彼女……コロンは、自分が今まで触れてきたそれらとは明らかに異なる存在だった。
ときに怒り、ときに悲しみ……人間より遥かに人間らしい、豊かな表情をみせる。
そんな彼女の立ち振る舞いに、あるいは自分のことを、仲間として以上の感情で見ているのではないだろうか……と錯覚する事もしばしばあった。
そう思う度に、まさか、とかぶりを振るのだが。
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勇介の背に顔を……それからこっそり唇も……押しつけ、コロンは彼の心音を聴く。
両耳に備わった高性能ソナーが、とくん、とくんと脈を打つのをキャッチする。
ーーうん、生きてる。
ロボットの自分にはない、人間の鼓動を “確認”するように、自分のメモリーに刻んでいく。
「…コロン?」
いつまでこうしていられるだろう……と、時折コロンは不安に駆られる。
武装頭脳軍ボルトとの戦いは激化の一途を辿っている。大きな怪我を負った事も、一度や二度ではない。
このまま手を離して、彼を送り出してしまえば、もう会えなくなってしまうのではないか。
とるに足らない“もしも”だとわかっていても、そう考えてしまう度に、彼女のメインモーターが締め付けられるように軋む感覚を覚えた。
コロンは気付いている。恐らくはこの感情こそが、恋と呼ばれるものなのだと。
「……あの、コロンさん?」
行かないで欲しいと言いたい。でもそれは許されない。全ての命を守るために戦うのが、勇介たちライブマンの使命なのだから。
「コロン!」
「は、はいっ!」
弾かれるように勇介から離れる。彼はというと、少し困った顔でコロンを見ていた。
「もう出ていいか?」
「えっ? あ、う、うん…大丈夫コロン」
「何やってたの?」
「何って……ええと……そ、そう!勇介のメディカルチェックしてたの!体温とか、血圧とか!」
我ながら強引な言い訳だ……と内心ため息をつく。
「……そっか。で、結果は?」
「あ……」
その言い訳に気付いているのかいないのか、勇介の問いに「う、うん!大丈夫!健康そのもの!花マルよ!」と慌てて返して、背を向ける。
「あの……勇介?」
「ん?」
ーーいってらっしゃいコロン♪
「……ああ、行ってくるよ」
表情の変わることのないコロンに“笑顔”で見送られ、勇介はグラントータスを後にした。
-Kissing to back.“Conflrmation”-
2年ぶりのキスの日オムニバスは、我が青春の「超獣戦隊ライブマン」より。
YouTubeでも配信されたばかりなのでご覧になった方も多いはず。
そして勇コロに目覚めた人も多いはず。いや、多いでしょ(断言