「かんぱーい!!!」
竜姫亭の大広間で、グラスを打ち付け合う音と、朗らかな笑い声がこだまする。
館を襲った魔物はわたしたち…つまりデモンゲイザー隊により倒され、今はその祝勝会というか、リーダーの借金返済のお疲れ様会というか…まぁつまり、ちょっとした宴席が設けられていた。
「……」
主宰たる管理人は、自分の財産が目減りしていくのを複雑な表情で見届けていたが。
「楽しんでるかい、マイコ?」
ええ、おかげさまで…っていうかリーダー、あなた主賓みたいなものなんだしそんな甲斐甲斐しくお酌して回ってるんじゃないわよ…
「まぁいいじゃない。みんな楽しんでるんだし」
根っからのお人好しなんだからもう…まぁ、だからみんな、あなたの事なんだかんだ慕ってるんだろうけどね。
「それって、マイコも?」
…さぁね?
はぐらかして肩をすくめて見せると、すでに彼の姿は無く…賞金稼ぎ連中に連れ出され馬鹿騒ぎの真っ最中であった。
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「おい、ちょっとこっち来いよ。管理人さんが一緒に呑もうって言ってるぜ」
武器屋のカッスルがリーダーを引っ張って、上座へ連れて行く。
メイドのピーネに、ローナさんも一緒に混ざり始めて、おしゃべりが聞こえてくる。別に聞き耳を立てているわけじゃないけど、少し気になったわたしの、猫を祖に持つ耳がぴくっとなった。
「そういや昔、ちょろっと聞いたな。管理人さんは自分の力を認めさせるためにここをやってる、とか…」
武器屋の呟きが耳に届く。
認めさせる…ね。つまり、力を示したい誰かが、管理人にはいるのだろう。
…わたしと同じ、か。
普段お金のことしか考えてなさそうな女主人と自分との、ちょっとした共通点を見つけてしまった。
まぁ、だからどうしたって話だ。
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一旦切り上げて、ひと風呂浴びる。戻りがてら大広間を覗くと、まだリーダーはそこにいた。
まぁ主賓だから仕方ないと言えばそうだけれど…そろそろ寝ないと明日からの探索にも支障を来たしかねないだろう。
「賢明なる邪眼の主に──乾杯っ!」
リーダーが掲げたグラスは、管理人とローナさんのそれらとともに小気味良い音を立て、中身は一気に飲み干された。
飲みすぎたのか少し熱っぽいその眼差しが、ローナさんをずっとみていることに気づいて…
ズキリ。
どこかが痛むような音がした。
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「うぉ〜い…ああ、いたいた」
そのまま談笑を続けていたリーダーたちのもとへ、薬屋のレゼルムと美容師のククレが声をかける。
そのまま手を引かれたリーダーが、急にその場に倒れ込んで…
「…逃げてッ!みんな、今すぐここからッ!!」
異変を察知した管理人が声を張り上げる。
蹲るリーダーの身体は、見る間にその姿を異質なものへと変えていき──
「嘘だろ…」
カッスルのうめきは、まさしく今自分が言いたい言葉だった。
「お、おまえ…その姿はまるで…」
──デモン、だ。
「うわっ!?」
彼(?)を中心に、魔力が暴風のように迸り、自分たちを吹き飛ばして行く。
転がった私たちの前、リーダーの前に立ちはだかるようにローナさんが躍り出て…
彼女が眼帯を外した刹那、わたしの意識は途切れた。
−つづく−
序盤の山場、ローナが…
エクストラで救済があるかと思ったけど、そんなことはなかったぜ!(ぇ
やりすぎるとネタバレになっちゃうんで、こーいうのはバランスが難しいですな。
割と台詞回しも端折ってるところが多いです。
さて、次回は一夜明けて…
もうちょい、マイコ視点が続きます