炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#DGEX】44日目II:旧市街の決斗!もうひとりの…

ヴィーナスの魂をフランに渡していると、ノックもそこそこにレゼルムが飛び込んできた。

 

「悪いが急を要するので、野蛮人の流儀でやらせてもらうよ」

いつになく慌てた様子の道具屋は、「カッスルの身に危険が迫っている」と告げた。

曰く、彼がルル…賞金稼ぎの少女、ルルことルゥ・ルナークに決闘を申し込んだのだという。

どう言う経緯で…

「前々から計画していたらしい。おそらく決闘は口実で、本当の狙いは別にあるんだろうがね…」

本当の狙い?

「答え合わせは後にしよう。場所は赤の旧市街だ。いくらなんでも相手が悪すぎる。彼に少しでも友誼を感じているのなら…急いでくれるかい、デモンゲイザー」

言われるまでもない。僕は管理人室を飛び出して、階下の仲間たちを大声で呼びつけた。

 

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「おお!来たか、若」

赤の旧市街に入ると、レゼルムとその傍にオヤカタの姿を見つけた。

「このもやしっ子もついて行くと聞かんでのぅ…仕方がないから護衛を買って出たんじゃよ」

まぁ、カッスル坊のことはワシも気になるからな…とオヤカタが頭をかく。どうやら一緒に仕事をしているはずの彼にも黙っていたらしい。

「さ、決闘の場所はこの先だ。気づかれないように行くよ」

レゼルムの案内で、おっとり刀で奥に進んで行く。果たしてそこには、ルルと対峙するカッスルの姿があった。

 

「俺は別に決闘がしたくて、てめえを呼び出した訳じゃねえ」

聞きたいことがあると言うカッスルに、対するルルが怪訝な表情を浮かべる。

「ルル…いや、ルゥ・ルナークと名乗る者よ」

 

  ──お前、本当は何者だ?

 

「…なるほど」

 

 しばしの沈黙のあと、ルルはゆっくりと笑みを浮かべ…

 

「そっちの話かよ」

見た目にそぐわぬ凶相と、荒々しい口調をのぞかせた。

 

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その後の会話は、僕達にはついていけない内容だった。

ルルが纏っていた、いくつかの違和感を、まるで探偵小説の主人公のようにカッスルが一つずつ紐解いて行く。

そこから導き出されるのは…ルル、否ルゥ・ルナークが只人ならぬ存在であり…カッスルは、その本性にほぼ正解と言っていいレベルにまで察しがついているということらしかった。

 

「口ばっかりで穀潰しの…腰抜けのジャリが!」

 

可愛らしいと形容できる声色で、耳障りな暴言を吐き散らかすルルに、さらにカッスルは問いただす。

 

「あの夜…ランスローナが死んだ夜のことさ。あれは…てめぇの仕業か?」

 

ルルの目が一層細まり、けたたましく笑い声を上げる。

「ったりめえだろうが。オレ以外の誰にあんなことが出来る?」

 

…え?

それって…まさか…

 

「…若?」

 

あの時僕の身に起きたことは…

 

「オレがこの“眼”で、ひと睨みしてやったのさ」

 

つまり…

あの夜…僕がローナを死なせてしまった、本当の…理由は…!

 

「そうかい…それだけ聞けりゃあ満足さ。…行っちまいな、どこへでもよ」

 

 ──ダメだ!行かせない!

 

声を張り上げた僕を見て、カッスルが目を見開いた。

「お、おい!」

 

ルル…本当にキミが…キミが…ローナを…!

 

「…だからそう言ってんじゃねえかよ、デモンゲイザー。いや…」

 

 ちろり、と赤い舌を覗かせ、ルルが嗤う。

 

「直接手を下したのは、てめえだったなぁ…ははっ」

 

お前…ッ!

 

頭に一気に血が昇る。もし自分に、自在にデモンへ変身できる能力があれば、この怒りで変じてしまうんじゃないか。そう思うくらいに、目の前が真っ赤に染まった。

 

「まずい!キミたち、彼を止め…!」

レゼルムの声を背に、ルルに向かって斬りかかる!

「ケッ、身の程知らずが」

瞬間、その場にいたはずの矮躯はすでになく…代わりに背中に鋭く熱い痛みを感じた。

 

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「ヘヘッ、腹ァ真っ二つにしたつもりだったが…さすがに丈夫だな、“テラ”よ」

テラ…?

 

「黙って帰るつもりだったが…気が変わったぜ」

ルルの冷えた目つきが、僕を見下ろす。

「てめえら今すぐ…一人残らず消し飛ばしてやる」

その姿が見る間に変わり…

 

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「なんだよ…それ…てめぇ、その姿は…まさか…!?」

絶句するカッスルに、オヤカタが喝を入れて遠ざける。

 

「見知りおけ、我が名は“ルナ”…」

 

ルル…否、月なるデモン・ルナが名乗りを上げる。

「地に走った裏切り者…我が兄弟たるテラに代わり、大天使ソルによって創り出されし者ぞ!」

 

兄弟…?それって…僕のことなのか?

「ああそうさ…てめぇは覚えちゃいないだろうがな。まぁ、そんなことはどうでもいい。ここで漏れなく…あの世に送ってやるからよ!!!」

 

振り下ろされた鎖は、僕の脳天に叩きつけられ…る前に地を抉った。

「フン、ネイの小娘の幻影か」

気がつくと、仲間が僕を取り囲むように並んでいた。

『お父様!お父様、大丈夫!?』

「まったく…冷静さを失って取り乱すとは大将らしくもない」

「大丈夫。これくらいの傷なら、後遺症なく癒せます!」

…ごめん、心配かけたね。

ビアンカの治癒が終わり、再び立ち上がる。

「どうするの、リーダー?」

どうするもこうするもない、戦うさ。ローナのために…そして…

 

 ──僕はデモンゲイザー!デモンを狩るのが、僕の使命だ!!

 

 

  −つづく−

 


この辺のイベント、無印の時に覚えてたはずなのに存外発生タイミングは忘れちゃうものですネ。

オヤカタ久々に登場。どっか日常回で出そうと思ってたんですが、ここまで引っ張るハメに。

原作では激昂してルルに突っ込んでいくのはモブハンターだったんですが、ここは僕らがデモンゲイザーに。なのであのハゲ、こっちの世界線では地味に生きてます。出番ないですが(ぇ