ルゥ・ルナーク…もとい月のデモン・ルナとの戦いから一夜明け、ソルの復活阻止に向けて決意を新たにした僕たちは、グリモダール城の次なる下層に降りた。
「無限坑道…か」
壁を見ると至る所にほのかに光る鉱石が埋まり、洞窟だというのにむしろ明るすぎるくらいだ。
「こいつはミスリルだな。魔力を帯びた特異な金属だ」
ノアル曰く、ドワーフはこの金属の加工にもっとも長けているらしい。オヤカタにお土産で持って帰ろうかな?
「やめときな。この辺のは魔力の含有量が弱すぎる。精製しても二足三文にもならねえや」
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はしごを介して、坑道内を探索する。
「一方がマグマで、もう一方が水底とは…同じ階層のはずなのに、何とも奇妙ですねぇ」
「恐らくミスリルの魔力が、断熱材みてーな役割を果たしてるんだろうな。恐らくは偶発的なもんだろうが…さすがグリモダール、人外魔境って言葉がピッタリだぜ」
それはそうと…なかなかサークルが見つからないなぁ。
「地図、ちゃんとつけてるの?」
つけてるよ…行ける道は粗方通ってるはずなんだけど。
『お父様』
と、双子が僕の袖を引っ張る。どうしたの?
『向こう側に、通路を発見しました』
本当?…見えないけど。
『相当遠くです。ヒトの視力では目視は困難かと』
そうか…どこかに通じてるところがあれば良いけど…隠し扉は無かったみたいだしなぁ。
「コメットの目が節穴なんじゃないの?」
「しっつれーね!」
マイコボヤきに、コメットが鍵から飛び出して噛み付いた。
「ダレカ…イルノカ…?」
と、その騒ぎを聞きつけたらしい誰かの声がした。…どこだ?
「オマエノ アシモト…」
え!?
数歩下がると、盛り土かと思っていたそれがゆっくりと起き上がった。
「こりゃあ…エルダーゴーレムだな。長い年月を経たゴーレムは、自由意志を持つんだ」
ノアルが説明してくれた。
「しかし…随分と弱ってんな?この辺はゴーレムのエサになるミスリルは充分にあると思うんだが」
「オレ ヨワイ みすりる クチニアワナイ…」
…ゴーレムの世界にも美食思考があるのだろうか。たしかに、この辺りのミスリルはあらかた掘り尽くされた後のようで、ノアルのいう、純度の低いものしか無さそうだ。
「オレ みすりる玉 ホシイ…」
ミスリル玉?
「高純度のミスリルを加工したやつだな。大将もいくつか持ってるはずだぜ」
ああ、穴掘りドールからもらったりしたやつか…これ?
「オオ…みすりる玉! ホ、ホシイ…!」
ぶるぶると体を震わせる。ちょっとした地響きだ。
「クレタラ ホウビ… オマエラ ムコウ トバス…」
向こうって…双子が言ってた向こうの道ってこと?それは助かる!
手持ちのミスリル玉をエルダーゴーレムの手に乗せる。大きな手は口元(?)に動き、ミスリル玉を一息で飲み込んだ。
「オレ ダイブ ゲンキ モドッタ!」
約束通り向こう側へ送り飛ばしてくれるらしいので、彼にしたがい手のひらに乗る。
「オオキク フリカブッテ…!」
え、ちょ、飛ばすってそう言…うわぁぁぁぁぁっ!!?
あっという間に向こう側の地面が目の前に迫り…
「ひ、光の盾よ!」
「オォーイ!」
向こう側でゴーレムの巨体が手を振っているのが見える。凄い距離飛んでったんだな…
「オレ でもん コワイ…コノアタリノ さーくる、ゼンブ ツブシテクレタラ、オレ モット ゲンキ!」
サークルを攻略したら、力が回復するのだろうか。終わったらまた、彼に会いに行こう。
−つづく−
リプレイ書く都合上、各階層を順番にやっていくスタイルなんだけど、この階層はヴィーナスの撃破前提なんだよねぇ…先に行っておけば書くネタ増えたのにw損したなw