炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#DGEX】51日目:無垢なる新神乱心す。さらばシャーク教団

さて、それじゃあ今日から新しい階層に挑もうか。

「いいけど…上の階層に向かう昇降機はまだ使えないんじゃ?」

うん、だから先に、シャーク教団のところに寄っていこう。色々教えてくれるみたいだし。

 

「すみませーん、出かけるの少しお待ちくださいっ」

と、ピーネに呼び止められる。どうかした?

「なんだか変なお念話が来てるんです。管理人さんが取ったら、あなたをよんでって言うので…」

僕?外から僕宛にかけてくる人に心当たりはないけど…

ともかく大広間に戻ってフランから受話器を受け取る。…もしもし?

ヒレっ!』

ヒレ

『救い手様!聞いておられまフカ!お助けくださいまフカ!?』

この声…シャーク教団の司祭?どうしたの?なんかそっちが騒がしいけど…

『おおっ、その声はまさしく救い手様!お、お聞きくださいませ!シャーク様がご乱心召されまして…っ!』

受話器の向こうで、教団員たちの阿鼻叫喚が聞こえる。どうやらシャーク様が彼らを襲っているようだ。

『どうか、お助けを…』

一際大きな水流の音がした刹那、念話が途切れてしまった。

「何があったの?」

フランに説明をしたものの、いまいち要領を得ない様子だ。まぁ、教団絡みの話はフランにはしたことないから無理もない。

「…助けて、あげてください」

 


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いつの間にかやってきていたプロメスが僕の袖を引く。

「なんだか悪い予感がします。彼らは念話機を持ちません。しかし彼らの声は届いた…彼らの心の叫びが、念話機を鳴らしたのでしょう」

その想いを、無駄にしないでください。そう言ってプロメスは目を伏せた。

 

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「一体何が起こってるんでしょう…?」

「いくら新しい神といっても、所詮はマンタール…つまりは魔物の一種に過ぎねえからなぁ…」

だが魔物の中でも高位の存在ではあるはずだ。それが自分を慕う教団員に牙を剥くのは…

「…ルナが絡んでる可能性も、あるかしらね?」

先日、無限坑道にあらわれたルルは、シャーク教団のアジトで待つと言っていた。関係がないとは思えない。

『お父様、ともかく急ぎましょう』

『彼らは時計塔の動力を復活させる手段を知っているのでしょう?教団がなくなったら、上の階層に行く手段を失ってしまいます』

わかってる。みんな、行くよ!

 

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──グリモダール城・礼拝区画。

シャーク様の被り物をした教団員たちの姿はそこにはなく、ただ一枚の紙が落ちていた。

 

“裏切り者であるシャーク教団を断罪せよ!”

“また共犯者ルゥ・ルナークの処刑を時計塔にて執行する!”

 

これって…!

「っリーダー、上!」

マイコが指差した先、巨大な羽音ともに彼らの主神が降臨した。

 


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“なお、シャーク教団の主神である魔物は、我らが下僕と化すこと”

 

最後にそう記された命令書を握りしめる。

みんな…倒すよ!

 

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最後の一撃が、マンタールの巨体を打ち…やがて光となり消え去る。その神々しさは、まさしく神…といえた。

「…す、救い手さま…」

と、小さな声が漏れ聞こえた。司祭だ!ビアンカ、治療を!

「いえ、お構いなく。もうこの身はいずれ力尽きましょう…」

力なく首を振ると、今回の惨劇の顛末を語ってくれた。

「デモンが、シャーク様を暴れさせたのか…」

「左様…その上救い手様まで手をかけようとは…なんたる…フカ…く…!」

司祭の動きが鈍りつつある。まもなくその命は尽きるのだろう。

「救い手様…雷と魔石の力を得られたよう…ですな…」

うん、これでしょ?

「おお…鍵越しにも伝わる、魔力…確かに!では、城に動力をもたらす“ミスリル電光石”、今こそ作りましょうぞ…」

いや、無茶をしないで。作り方さえ教えてくれれば…

「残念ながら、作り方をお教えしているいとまはございません。我が命の源たる…最後の魔力のひとしずく…救い手様のために…!」

 

司祭は、自分の体に二つの鍵を突き立て…

 

「ああ、白く美しいシャーク…さま…いま…おそば…に…」

 

倒れ伏し、動かなくなった司祭の身体の中にあった魔石が、強い魔力を帯びたミスリル電光石となって…僕の手に収まった。

 

「…みな、やられてしまいましたね。ひどいものです…」

 


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気づくと、プロメスが惨劇の跡地に佇んでいた。フランが連れてきたのだという。

「シャーク様は…どうなりましたか?」

その問いに、首を横に振って答えとすると、プロメスは静かに眼を閉じて…天に祈りを捧げた。

 

   −つづく−

 


一連のシャーク教団がらみの物語は、ここでエンドマーク。

精霊神はいつの時代でも、嘆きで終わる物語を忘れないそうです。

魔城に生まれ、魔城に消えた小さな神を、光の精霊神は永劫、忘れない。