炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】4日目〜6日目:イヅナのやりたいこと

翌日から、俺たちは隊の強化を優先すべく、魔物との戦いを続けている。

時折、突出しすぎたキリクやイヅナがぶっ倒れることはあったが、そこは女王の加護で復活するのでなんとかなっている。

 

むろん、その時はオレのお説教コースが待ち受けているわけで。

 

…とはいえ、オレの采配ミスでやられちまうこともあるから、その時はオレが平謝りする側になるのだが。

 

 

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「秘剣・燕返し!」

 

イヅナの斬撃が頸を落とし…

 

「押し潰されちゃいなさ〜い!」

 

ディーネの岩魔法が降り注ぐ。

 

「…っは!」

 

影に隠れたナナシの手裏剣が足止めした魔物を…

 

「だらっしゃああ!」

 

キリクの渾身の振り下ろしが文字通り叩き割った。

 

「ふぅっ、だいぶ荒くれ魔物相手もキツくなくなってきたな」

荒くれ魔物とは、積極的にオレたちを追ってくるタイプの魔物のことだ(キリクが命名した)。

「アノンどの、戦利品は…?」

「ええと…ちょい待ってろ…お、銃だな。こいつはありがてえ」

 

ディーネによると、火の精が宿っているらしい。これは大きな火力アップだろう。火だけに。

 

「ううむ…そろそろそれがし新しい刀が欲しいでござるよ…」

 

そうボヤくイヅナは、右手こそ刀だが、左手にはナイフを装備している。サムライである彼女には扱えはするものの少々使い勝手が悪いのかもしれない。

 

「まぁこればっかりは巡り合いだわな。もうしばらく辛抱してくれ」

うぐぅ…」

 

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「なんだ、まだ起きてたのか?」

 

イヅナ「んひっ!?」

 

「んひっ!?」

 

6日目の探索を終え、夜。

全員が自室に戻った後、少々寝つきが悪く外の空気を吸おうと外に出たら先客がいた。

 

「そういや…刀、あの後見つかって良かったな」

「う、うむ…」

「……」

「……」

 

会話が続かない。

「なぁイヅナ」

「ひゃいっ!?」

「…そんなビビることねーだろーがよー…だいたい塔の中じゃ割かしフツーに喋ってんじゃねえか」

「そ、それは…塔の中…は、せ、戦場ゆえ、に…」

 

まぁそりゃ戦場でコミュ障なんか言ってられねーのはそうだけどもが。

 

「じゃあ、今この場を戦場と思ってみたらどうだ?」

「戦場…」

「そうそう、会話はキャッチボールじゃなくて、真剣勝負ってな感じで…っておい」

 

ふと見たイヅナの目つきは、明らかに修羅のそれであった。

 

「…悪い、その方向はなしにしとこうか」

「い、いや…悪くない提案でござる。今のままであれば、アノンどのとも臆さず話せるやもしれぬでござるよ」

「いやオレが臆するわい!」

 

視線だけで殺されそうな勢いんなんだが!?

 

「…じゃ、じゃあ目を見ずに会話をするでござるよ」

「そーしてくれ」

 

 

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「…ダメでござるな、それがしは」

「ん?」

 

イヅナ「それがしは…このような性根を変えたくて、勇者の任を請け負ったというのに」

 

「それがしは…このような性根を変えたくて、勇者の任を請け負ったというのに。結局誰にも声をかけられず…声をかけられても言葉も返せず…キリクどのに受け入れてもらえなければ、こうやって皆とともに塔に挑むこともできなんだ…」

 

極度のコミュ障な彼女の、塔に挑む目的を初めて聞いた。

 

「い、いやそれだけが目的ではござらんよ!?、う、うむ…」

 

そうかな?

 

「そうでござるよ!ア、アノンどのは意地悪でござるな!?」

「悪い悪い…じゃあ、ほかに目的があんのか?」

「…笑わぬでござるか?」

 

 おずおずと視線を向けるイヅナに、ああと頷く。声こそ弱弱しいが、常在戦場を意識している彼女の眼は異様に怖い。

 

「…伝説の妖刀」

 

彼女の出身世界に古から伝わるという、いかなるものも斬り、あるいは斬らず。その生殺与奪は持ち手にのみゆだねられるといわれるカタナ。

その銘をして、“ムラマサ”という。

 

「それがし、自分の生まれ故郷ではそれを探して旅をしていたのでござるよ。だがムラマサどころかその手掛かりすらつかめず、途方に暮れていたのでござる」

「それが、この妖精の国ティル・ナ・バルクに…竜王の塔ユグ・ドランにあるってか?」

「確証はないでござるが…な」

 

とはいえ、宝箱から様々な武器が出てくる奇妙な迷宮だ。いずれそんなトンデモなカタナが出てくることも…あるいはあるかもしれない。

 

「でござろう!?拙者は初めてこの塔に挑み、武器を見つけたとき、ついに天啓を得たと心した。それがしがここに来たのは、まさしく天の采配であったのでござるよ!」

 

だんだん興奮してきたイヅナが、こっちを向いてぐんぐんと迫ってくる。っていうか、押し倒された。

 

「お、おいイヅナ…」

 

イヅナ「アノンどの。それがしたちへの協力、改めて感謝するでござる!」

 

「アノンどの。それがしたちへの協力、改めて感謝するでござる!あのときは言うことができなんだが、今この場で感謝を告げるでござ…」

「近ぇ!」

 

振り絞ったオレの声に我に返ったイヅナと目が合う。素のふにゃっとした表情が見る間に赤くなり…

 

「も、もうしわけござらんっっっ!!?」

 

兎もかくやの脱兎ぶりで飛びのき、一気に自室へと引っ込んでいく。

 

「…ア、アノンどの」

 

ややあって、真っ赤になった顔を少しだけのぞかせて。

 

「…おやすみなさい、でござる」

「お、おう…おやすみ」

「で、では…ごめん!」

 

…律儀なやっちゃな。

 

 

   -つづく-

 

 


この辺はとくに特筆すべきイベントも起こしてないので、ダイジェスト的な。

実際この3回分のアタックでキリクやイヅナがちょいちょい落ちました💧

 

前々回のデモンゲイズエクストラのリプレイSS執筆時は、強化中のアタックについてはリプレイすっ飛ばしてましたが、今回はそのすっ飛ばす間に各ヒロインとのお話をクローズアップしようかなー、などとなどと。

せっかくコンセプトがハーレムラブコメなのでね。

 

で、今回はイヅナをセレクト。コミュ障キャラを会話させるためにどうしようかと考えあぐねた結果、戦場モードでは収まる性質を利用しましょう、ということで。

 

これはこれで本人軽い興奮状態にあるので危険が危ないのですが(ぇ

 

さて、次回が7日目なので、キリよく進めていこうかなと。