革命団の仕事は、なにも斬った張っただけではない。
革命を円滑に進めるためのモノやカネの確保…この辺りはカッスルなどが担当し、レゼルムはラジオを流通させて(当人の思惑はともかく)賛同者の増加に一役買っている。
そして、革命団の古参のひとりである彼もまた、禁域調査の傍らもうひとつの任務を請け負っていた。
「よぅ、おめえさん方見ねぇ顔だが余所モンかい?…やっぱりか。仕事を探しにきたんだろう?ああ、城じゃあねえよ。オレが紹介してやるからついてきな」
出稼ぎにやってきた街の外の人間を、オルム街の飲食店などに連れて行き仕事を斡旋する。それが、革命団の老剣士・ガリーの請負ごとだ。
これまで仕事を求めてやってきた者たちは、もれなく城に連れて行かれ、地下の【錬星炉】に灼かれて星力へと変えられてしまっていた。
そんな犠牲を少しでも減らすために、ガリーをはじめとした革命団の面々が仕事を紹介していたのだ。
「ふぅっ、最近は素直に聞いてくれる奴が増えてくれて助かるぜ…」
ガリーが独りごちる。
これまではどれだけ言葉を尽くし、時に実力を行使してでもかなわず城の中へ消えていった出稼ぎ人たちだったが、ここ数日は革命団の話にもちゃんと耳を傾け、街の住人になってくれる者も現れ出した。
「こいつも、ゲイザーのダンナやデモンの嬢ちゃん方のお陰ってぇ奴なのかね?よくわからんが」
デモンゲイザーことラッキーの活躍で、禁域の奥の奥…デモン空間に鎮座していたボイスクリスタルが破壊された事で、マグナスターの呪縛に少しばかりの綻びが生じた。その影響で、ラジオを聴き自分達革命団への支持者も増え、死んだような目をしていた流れ者たちの瞳にも輝きが見て取れるようになった。
無論、その数はまだわずかだ。相変わらず城へと去るものが圧倒的に多い…が、全て消えていたはずの命がこの街にどうにか留まってくれている。その事実が、今までただ去りゆく背中を見送ることしか出来なかったガリーにとってはこの上なく嬉しいことなのだ。
「今度なんか美味えもんでも奢ってやるか…うん?」
と、ガリーの視界に端に見覚えのある背中が見切れた。
「おぉ、噂をすりゃあってやつだな」
早速考えを実行に移そうと、ガリーがその背中に声をかける。
「おーい、ゲイザーのダンナ」
が、背中の主はすたすたと歩き去ってしまう。
「ん、聞こえなかったのか?おーい!ダンナってばよ!」
「…どーしたとっつぁん、大声でよー?」
「ぬな!?」
遠ざかる背中に声をかけようとしたら本人が自分の背後にいた。
「は?ん?!な、なんでおめえさんこっちにいるんだ!?さっきまで…あれ?」
慌てて視線を元に戻すが、件の背中はとうに姿を消していた。
「なんでって、今日は大星堂でデモン退治するって予定出してたぜ?そっから街に出るならこっちからしか道ねーじゃんよ」
「あ、そうか…やれやれ、トシはとりたかねぇもんだなァ」
「?」
ラッキーたち曰く、予定より早めに終わったので、オルム街で打ち上げがてら小腹を満たしにきたのだという。
「で、なんか用だったのか、とっつあん?」
「あ、ああ…丁度いい。おめぇさん達に何か奢ろうと思ってたんだよ。美味い屋台を教えてやるぜ」
「ほんと!?わーい、たのしみー!早く行こ、おじーちゃん!」
飛び上がってはしゃぐペガサスに目を細めながら、ガリーがラッキーたちを先導する。
いつしか彼の脳裏から、先ほど見かけた背中の存在はぽろっと抜け落ちていた。
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「…ふうん、あれがデモンゲイザー」
その様子を、禁域に続く裏路地の陰から伺う姿があった。
「凄いね。この短期間でもう3体…いや、4体か?デモンを倒しているとは、ね」
チャリ…と右腕に巻かれた鎖に触れる。
「でも、まだまだ足りない…もっと狩るんだ…デモンを…」
──僕のためにも、ね。
フードに隠れた右目が、妖しく輝いた。
-つづく-
こちらは本編に無い、所謂二次創作の範疇となりますが、今回この「デモンゲイズ2」のリプレイを書くにあたってやりたかった要素の一つ
“もし2が(1同様に)リメイクされたら”
…をコンセプトにした追加ストーリー。つまり「EXTRAシナリオ」とも言うべき存在です。
キーパーソンは、ガリーが見かけたラッキーに良く似た?人物。
果たしてただの他人の空似なのか、それとも…?
以降も、特定のタイミングで出現予定。
気長にお付き合いくださいませ。
…とはいえ、次回からは「モン勇」のリプレイを再開するので出番はもう少し先になっちゃうのですが。