復活の秘術の先で、軽く女王と謁見。得られるものも少なさそうなので早々に立ち去ろうとすると、なぜかオレとキリクだけ呼び止められた。
「…聖騎士ジークのことです」
先日その件でウールを怒らせてしまっていることを考えれば、この場にオレたちだけを残したのは、まぁ女王なりの配慮ってやつなんだろう。
「裏切りの聖騎士は、闇の力に魅了されてしまいました。今や彼は闇のしもべ…魔物となんら変わりません」
視線が泳ぐ。この場にウールがいないことを再確認してから、女王は小さく息を吐いて、言葉を続けた。
「再び出会うことがあれば…今度こそ、彼の魂に安らぎを」
言い方こそ柔らかいが、要は息の根を止めろということと同義だ。闇の力に魅入られた存在がどうなるか、なんてオレたちには分からない。だがこの世界の女王様が殺すしか手立てがないというのなら…つまりはそういうことなのだろう。
「都合よく出会えるかはわかりませんが…その時があれば、必ず」
恭しく頭を下げて、キリクが誓うように言った。その言葉に静かにうなづいた女王が、こっちに視線を向けた。キリクの言葉だけじゃ信用できねえのかねぇ?
「右に同じ、だが…」
「お、おいアノン…変に口応えすんじゃ…」
帽子のつばごしに女王を睨む。ま、こんなんでたじろぐようなタマじゃあ女王は務まんねえか。
「ちゃんとウールと仲直りしろ」
「…えっ?」
オレの発言が予想外だったのか、女王が目を丸くした。
「あんたとウールの間に何があったのか…まぁ聞いてねえわけじゃあねえが詳しく知らねえ。でも、あいつはあんたと仲直りがしたくて勇者になったって言ってたんでな」
ウールにこの会話を直接聞かせなかったところで、ジークとカチ会う以上、ウールはかつての恩人に杖を向けることになる。それを強いるのは、かつての親友…ってぇのは、なんとも厭な話じゃあねえか。
「あいつが許すかは知らん。でも、せめて言葉くらいは交わしてやれ。女王だろうが勇者だろうが、あんたたちは“タニア”と“ウール”なんだからよ」
…我ながら柄にもねえ事を言ったと自覚して、帽子を深く被る。
「…善処いたしますわ」
少しだけ震えた声で、女王がそう言ったのが聞こえた。
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「そういえば、今の君たちの装備ってどうなってるノ?」
一夜明け…朝食後のブリーフィングと洒落込む俺たちに、ふとチュッケがそう声をかけてきた。
「可もなく不可もなく、かねぇ…魔物もあんまりいい物持ってないんじゃあねえの?」
と言いつつ、メンバーの装備を並べていく。こう見えて勇者ギルドの主人だ。何かしら助言とか貰えるかもしれん。
「ふむふむ…なるほどねぇ。悪くはないかな?あとはしっかり使いこなして体に馴染ませることと…おや」
ふとチュッケが目に止めたのはディーネとウールの装備だった。
「やあ、ヒイラギのチャームに妖精のローブか。いいモノを拾ったようだネ」
「そーうーなーのー?」
チュッケ曰く、これらには同じ系統の装備があるのだという。
「妖精シリーズには、あとリボンとローブが。ヒイラギには髪飾りとローブがあるんだけど、これらを二つ以上一緒に装備すると相乗効果で秘めた力を発揮できるんだヨ」
「へぇ…そいつは便利だな!なぁおっちゃん、あたしの装備はどうだ?」
「キリクは…特に無いねぇ」
「えー」
まぁ、同じ系統の装備を見つけるためには兎角魔物を倒すしかない。それが結局オレたちのパワーアップに繋がるのだ。件の装備が揃おうが揃うまいが、な。
「そうそう、その意気だヨ!勇者は一日にして成らずってネ」
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そういうわけで、何度目かのビスヘイムへのアタックである。
「やることはいつもどーり。魔物をブッ飛ばして、お宝頂いて、強くなる!」
事実ではあるがあんまりにもあんまりなキリクの言に思わずげんなりである。
「できればあの犬の魔物(ヘルハウンド)を苦せず倒せるようにはなっておきたいでござるな」
イヅナの言い分にも一理ある。再現なく湧いてくる魔物の群れを如何に対処するかが、魔王フェンリル攻略の糸口と言えるだろう。
「後衛組は〜ワンちゃんをほっといて攻撃できる手段を用意する〜? それとも〜ワンちゃんを集中攻撃〜?」
ディーネの問いにはたと考え込む。後衛戦力も注ぎ込んでヘルハウンドを落とせば、その分フェンリルに向ける手数を増やせるかもしれない。
「でーもー、あーのーまーもーのーたーちー、すーぐーくーるーかーらー…」
そう。全滅させたと思っても即座にフェンリルが呼び出してくるのだ。呼び出すタイミングに穴を開けることができれば、あるいは勝機もあるかも知れないが…
「もう一度喧嘩売りに行って確かめるか…?」
「何度も食べられるのは、ちょっといや…かな」
不死人アンデッドのナナシが言うんだから相当だ。いやオレだって嫌だが。
「まぁ、どんな作戦するにしたって、まずあたしらが強くならねえことには話になんねーよ。コレからもっと強い武器や装備が見つかるかもしれねえし、スキルの使い方だってもっとうまくなるかもしれねえ。そうなってから作戦立てたっていいんじゃあねえか?」
「…ほぅ」
「…あんだよ?」
「いや、割といいこと言うなと思った」
そこそこ本心だったが、キリクからは「いつも言ってんだろーが!」と噛みつかれた。
「おら、いつまでも入口でだべってもしょーがねーだろ?さっさといくぞ!」
金棒を振り回してオレたちを鼓舞してみせる様は、ようやく隊のリーダーらしさが芽生えたようにも見えた。
−つづく−
サブタイ詐欺だなコレ…
ほぼ会話だけで終わってますが、ちゃんと15回目のアタックはやってます。リザルトは16日目と合わせて次回で。
序盤の女王との会話、なんかアノンが説教くさくなっちゃったなぁ…と反省。まぁ、彼にも人間関係でそれなりに思うとこがあるんですよというアッピル?(適当
セット効果という要素は、おそらくエクスペリエンス作品としては初の試みかな?同一名称の装備を複数装備できればパラメータに補正が付くようになってる。
「妖精の〜」とつくシリーズ…おそらく旧作における「エルフェン」シリーズだと思うけど、こう言う系統の装備は過去にもあったけど、セット効果はなかったもんなぁ…
言及してないけど、デミヘイム攻略時点でも「狩人」シリーズで補正かかったり、武器で言うと、サムライ装備の「エインの長刀」と「エインの短刀」を同時装備で…と言った感じ。
この長短装備ってのがちょい厄介で、当然ながら攻撃力は長刀>短刀なんだけど、長刀2本装備しても補正つかないんだよね…攻撃力を取るかステータスアップを取るかを強いられているんだ!(集中線
今の所の予定は、19日目まで強化で、20日目でフェンリル再戦狙い…だけども、はてさてどうなるやら。