翌日。
第一の島たる<幽寂ノ孤島>を訪れたストークスの面々は、ベースキャンプに合流した後、現在調査中という樹海へと足を踏み入れる。
「ここか…」
鼻を鳴らすザジの服の裾を、レアが「ねぇねぇ」と引く。
「いと、もった?」
「おう、ちゃあんと買ってきてるぜ?ホラ」
そう言ってザジが取り出したのは、<アリアドネの糸>と称されるアイテムだ。
「ふふっ、そのやりとり見るのも久しぶりねぇ」
ザジとレアの会話を見ていたリコリスが笑う。
「これ見ると、本格的に冒険が始まったんだ!って感じがします」
「まぁ実際こいつが買えるようになってからが本番みたいなとこはあるわな」
このアリアドネの糸は、樹海や迷宮のどこにいても脱出が可能なアイテムなのだが、マギニアにおける司令部やエトリアにおける執政院等、その土地の中枢に認められないと購入を許可されない代物である。つまり、これを持てるということは一種のステータスと言えるだろう。
「…へへへっ」
今一度糸を一瞥するザジから低い笑みがこぼれた。
「いつまでニヤニヤしてんのよ、気持ち悪いわねもー」
「いくらなんでも気持ち悪いはねーだろリコリス…」
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階段を降りると、最初に踏み込んだ遺跡とはまた異なる雰囲気に一同はしらず身震いする。
「…うん?」
「どうしました?」
ふと違和感を感じ取ったザジに、ノノが尋ねる。
「なんか見覚えあるような…?」
『この樹海にか?我々はここに今日初めて来たわけだが』
「いや、そりゃそうなんだけどな…むむむ」
考え込むザジであったが、今は探索を優先すべきとベテルギウスに諭されて「そりゃそうだ」と肩をすくめた。
地図を書きつつ、樹海内の探索を進める。
「倒木が道を塞いでますねぇ…」
「さすがに壊して進むには無理があるな。一旦後回しだ」
地図に倒木の存在を書き加えて奥へ進むと…ぞわり、と嫌な感覚がザジの背中を苛んだ。
「…!」
少し離れた先にある倒木が、嫌な音を立てて砕け散る。飛び散る甘い樹液の香りを漂わせながら出現したのは、先に討伐した花獣もかくやのき巨体を誇る熊であった。
「あいつは…!」
「何、知り合い?」
「モンスターに知り合いはいねーよ…」
リコリスの軽口に脱力しつつ、似たような魔物をタルシスで見かけたことがあるというザジ。
「性質も同じだってんなら…よし、誘い込むぞ!」
ザジがメンバーに後退を支持すると大熊もそれに合わせて着いてくる。数歩も歩くと、先ほど地図に記した倒木の背後にまで退がった。
「ちょっと、行き止まりじゃあないですか!?」
「問題ねえ。このまま横に逸れて…」
熊の進行方向からズレると、そのまま進んだ熊の大きな爪が倒木を粉々に砕いた。
「うわぁ…あんなの喰らったらひとたまりもないですねぇ…」
「ま、お陰で邪魔な木を退かすことが出来たわけだがな」
「あ、なるほど」
「このままやり過ごしつつ、壁壊してもらおうぜ」
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熊の剛腕が倒木を破壊し、追跡をいなしつつ壁の先も探索していく。
「よーし、あらかた地図も書けたな。一旦帰って司令部に報告すっか」
「あらもう終わり?私はまだ動けるわよ?」
「お前が動けても他が限界だっつの…」
先の遺跡に比べると、魔物も地味に手強い。前衛を張るレアとノノはもとより、戦闘要員組はことごとく疲労困憊だ。
「時間的にレアも電池切れが近いし、今日はここでお開きだな」
「しょうがないわね…」
リコリスの首肯を確認して、ザジはアリアドネの糸を発動するのだった。
-つづく-
「いと もった?」はシリーズ伝統?の文言ですね。アリアドネの糸を買い損ねてなんど焦ったことやら…(自業自得
過去作リスペクトの迷宮が出るのは知ってましたが、一発目がIV発ってのがびっくりですねぇ…
どういう順番でどういう迷宮が出るのかも、この作品の楽しみになりそうですね(^▽^)/
そういえば、初回の探索で出てきたNPC二人ですが…↓
リプレイにおいてはちょっと出番を端折らせてもらっております(ひどい
まぁ一応出会ってるていなので、重要なイベント回にはちゃんと出てくると思います。多分(ぇ
初心者ギルドを導く立場って立ち位置ゆえ、一応経験者ぞろいな弊ギルドには余分かな…と💧
彼らやほかのNPCギルドの役割は、今後登場予定のウチのサブパが担当することになるかも?