炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#140字小説】#只井さんは多々いる〜彼女たちはレギオンであるがゆえに【Xまとめ】

一目惚れだった。今告白しなければ僕は一生後悔する。だからすれ違いざまに彼女を呼び止めて「好きです!」と叫んでしまった。
顔が熱い。視界がぼやける。ゆっくりと彼女が振り返るのが分かって…
「…ねぇ」

──あなたが好きになったのは…どの"私"?

目の前で、"只井さん"が群れを成していた。

1.【#只井さんは多々いる〜彼女たちはレギオンであるがゆえに】

ーーー

気がつくと保健室だった。どうやら目の前で繰り広げられた情報量の多さに気を失っていたらしい。
「驚いたでしょ?」
ギオンである彼女は、感情が昂ると体に宿る別人格の霊体が飛び出してしまうのだという。つまりは自分も突然告白されて驚いちゃった…と、只井さんは照れ臭そうに微笑むのだった。

2.【お互いビックリした】2024.9.19

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とりあえず「お友達から始めましょう」ということでその場はお開きになり…放課後。
一緒に帰ることを約束していたので急いで昇降口へ向かう。靴箱の陰に憧れの背中を見つけて…

「…おう、来たか」

振り返ったのは、只井さんのようで少し違う…あの時うすぼんやりと見えていた別の只井さんだった。

3.【ちょっとツラ貸せや】2024.9.28

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唯衣ゆいのどこを好きになった?」
その質問は…正直答えに困る。なにせ一目惚れ。魅力なんて全部わかる訳もなく…それを正直に伝えたら、彼女は「はぁ?」と目を見開いて。
「訳わかんねえ…変なこと言ってあいつのこと誑かそうとしてんのかお前…!?」
警戒心と敵意を視線に変えて、僕を睨みつけた。

4.【そういえば下の名前も知らなかった】2024.10.8

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…少し考えて、僕は小さく息を吸う。
「わからないから、少しずつでも知りたいと思う」
それは勿論──"君"も含めた全ての彼女について。
「だって、君たちだって"只井さん"でしょう?」
そう言うと、目の前の只井さんは驚いた表情を見せて。
「…やれるもんならやってみろ」
ぶっきらぼうに呟いた。

5.【その言葉の真意を、僕はのちに知ることになる】2024.10.18

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「昨日はごめんね。“あの子”がどうしても話したいって聞かなくて…」
只野さんの謝罪に「気にしないで」と返すと、彼女は少しホッとしたような表情を浮かべて。
「でも、あの子に気に入られたみたいで良かったよ」
気に入られた…のかなぁ?
「嫌いな人が相手だとあの子まず手が出るから…」
怖っ!?

6.【仲良くなってくれて嬉しいな】2024.10.28

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今日は一緒に帰ろうね?と只井さんから逆に誘われた…これはひょっとしなくても脈アリというやつかも?
「ふふっ、楽しそうだね〜」
不意に声をかけてきたのは件の彼女…いや、違う。
「いいねいいね〜。君の恋バナ、聞かせて欲しいな?」
昨日とはまた違う、また別の只井さんがにこやかに手を振って。

7.【多分彼女は3人目だから】2024.11.7

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本人と比べるとちょっとふわふわとした“只井さん”だな…と思っていると、不意に真面目な顔になる。
「昨日のコに、私たち全員のこと知りたいって言ったんだって?」
その問いに頷くと、彼女は小さくため息をついて。
「思いつきでそういうこと言わない方がいいかな…“私たち”はね」

──666人いるの。

8.【レギオンの中では最多級らしい】2024.11.19

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「…まぁ、私たちみたいに明確な自我を持ってるのはほんの一握りだけどね。それでも全てを知ろうってことは…そう言うことだよ」
絶句する僕を見て、“只井さん”はクスッと笑う。
「…でも、一目惚れしちゃったんだもんね。しょうがないよね?」
“私”個人としては応援してるからね!と背中を叩かれた。

9.【また恋バナ、聞かせてね♪】2024.11.29

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「なんかもう重ね重ねすみません…」
「いやまぁ…結果的に只井さんのことが知れたんでそれはそれで?」
“二人”のおかげで、下の名前や、レギオンとしての彼女のことを知ることができたのは大きい。
「むう…それはそれでずるいなぁ…?私だって君のこと知らないのに」

ぜ、ぜひ色々聞いてください!

10.【まずは名前から…え、それはもう知ってる?】2024.12.13

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「只井さんって幽霊なのに実体があるんだね?」
ギオンはゴーストやレイスと同系統の種族だ。彼らは物理的な肉体を持たないことが特徴なのだが…
「私たちは100人以上の霊格があれば実体化できるんだよ」
割とレアケースだけど…と笑って僕の手を取って。
「ふふっ、さわれるって…なんかいいよね」

11.【それはきっと、666人分の温もり】2024.12.24

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ところで“只井さん”たちには個別の名前ってあるのだろうか。
「うーん…特に決めてないんだよねぇ」
基本的に表に出ることがないので、名前がなくても問題なかったようだ。でも名前がないとどの子も“只井さん”呼びは混乱しそう…主に僕が。
「それはまぁ確かに…あ、じゃあきみが付けてみる?」
…え?

12.【あの子の名前は】2025.1.2

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ちゃんと会話をした別霊格といえば、ポニーテールの気が強い子と、ショートのふわっとした子だ。どんな名前がいいだろう…?
「せっかくだし、本人の意見も聞いてみる?」
次の瞬間、髪型がするりと変わり──
「…な、なんだよ。なんか用か?」
急に出てきた“只井さん”が戸惑い気味に僕を睨みつけて。

13.【名前をつけよう①ポニーテールの彼女へ】2025.1.12
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「名前?要らねえよ別に」
ポニーテールの“只井さん”が肩をすくめて。
「話は終わりか?じゃ、唯衣に戻るぞ…」
「ま、待って──真宵!」
口をついて出たその“名前”に、彼女が振り返る。
「…まよい?あたしの名前かそれ?」
「だめ…かな?」
「…別に」
そっぽを向いた横顔が、少し嬉そうに見えた。

14.【名前をつけよう②冴える月夜が似合いそうで】2025.1.22

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『はーい、余韻に浸ってるとこ悪いけど交代こうたーい』
「ばっ、別に余韻になんか…!」
どこからともなく声がして、只井さん…もとい、真宵の髪型が変わる。
「真宵、かぁ…いい名前だねぇ。これは私の名前も期待できそうかなぁ?」
くすくすと笑いながら、ショートカットの只井さんが表に出てきた。

15.【名前をつけよう③プ、プレッシャーだなぁ…】