「ついにこの手に…待っていたわぁ!」
嬉々としてファンタジーバックルを掲げ、ゴルドギーツがうっとりとした声を上げる。さっそく使おうとデザイアドライバーへセットを試みるが、どちらのスロットも塞がってしまっているため使えない。
「どっちかバックル外したらいいんじゃないかな?」
「あぁ、そうねぇ…」
しれっと助言するナーゴに頷き、ゴルドギーツは自分のドライバーを見る。
「こっちがジャマね…よっと」
自身の左側…上半身を構成するスロットにセットされているアームドジャッカーレイズバックルを引き抜こうとするが、なぜか抜けない。
「くっ、ちょっ…面倒くさいわねぇこれ…あ、ここね」
脱落防止のためのロック機能を解除し、ゴルドギーツはようやくレイズバックルを外すに至る。
「ふぅっ、手間取らせてくれちゃって…でもこれで…!」
意気揚々とファンタジーバックルを装填しようとしたその先で、デザイアドライバーで火花が走った。何事かとエンプサが向けた視線の先で、ドライバーに備わっていたオージャカリバーバックルの存在が薄れ、その輪郭を曖昧にしていた。
「な、なんで…っ!?」
戸惑うエンプ差を尻目にオージャカリバーバックルはなすすべなく消滅し…結果的にそれを元にゴルドギーツの身体を守っていた王鎧武装は文字通り霧散。無防備なエントリーフォームが顕になった。
「…そりゃあそうよ」
醜態をさらすゴルドギーツに、嘆息混じりにナーゴがつぶやく。
「あなたが使っていたバックルは、もとを正せば今取り外したバックルの武器が変化したモノ!」
「つまりそのバックルが取り外された今…偽りの聖剣も偽りの王権も…貴女は失ったってこと!」
「ぎッ…お前たち…それを知ってこのわたくしを謀ったっていうのぉ!?」
エレガンス・モーからもたらされたドクター・エンプサの弱点…それは、彼女の病的なまでの蒐集癖であった。それも単に集めるだけに留まらず、道具であれば存分に使い倒そうとする。それはレイズバックルであっても同様…城内にいたエレガンスは彼女が集めていたレイズバックルをドレスの着替えの如くとっかえひっかえして装備の使用感を試していた。つまり手に入れれば即使おうとする筈…と推測した祢音たちは一計を案じ一芝居打った…というわけである。
「貴女がニセカリバーの方を外す可能性もあったけれど…そのへんは賭けね。まぁ見事にあたりを引いてくれたわけだけれど」
どうもありがとう…と大袈裟に慇懃につぶやきながら、ヒメノが力を取り戻したオージャカリバーを起動した。
-Come and Kick it!-
「王鎧武装!」
転瞬、本来の持ち主のもとに美しくも雄々しき王鎧が戻る。カマキリオージャーの降臨である。
「わが名は絢爛の女王ヒメノ・ラン!偽りの女王よ…わが道の前より立ち去れ!」
「ぐっ…言うじゃないの小娘風情が…でもお二人さん、お忘れかしらね…わたくしの手には万能の器が存在することを!」
ゴルドギーツが奪い取ったファンタジーバックルを手に勝ち誇ったように叫ぶ。
「あら、何を持ってるって?」
そう言ってナーゴが指をパチンと鳴らす。次の瞬間、ゴルドギーツの手の中のウルトラレアのバックルは、何の変哲もない小型バックル…アームドハンマーへと変化した…否、戻ったのだ。
「なっ…何よこれ!?ウルトラレアどころかノーマル…クズバックルもいいとこじゃないの!」
「人聞き悪いなぁ割と便利だったのに…まぁともかく、見ての通り。ついでに言えば…今のこの私の姿も含めて…フェイクよ」
指をもう一度鳴らす。ビートフォームの装甲が光とともにきらびやかな紺と金の装甲…ファンタジーフォームのそれへと転じた。仮面の奥でエンプサが息を吞む。
「短い天下だったようね…元女王様?」
「だまれだまれ!王の力などなくたって、あんたたち二人を蹴散らせるくらいの力は持ってるのよ…!」
激昂するゴルドギーツが、バックルホルダーに収めていたブーストバックルを取り出し、ブーストフォームへとチェンジする。そのまま拡張装備たる専用バイク・ブーストライカーを召喚し、エンジン音とともにカマキリオージャー目がけて突撃を仕掛けた。
「王権はもう一度奪えばいい!何しろあなたはわたくしに一度負けているのだから!あなたを倒してからじっくりといただ━━!?」
刹那、ゴルドギーツの視界からカマキリオージャーの姿が掻き消えた。
「侮るな。同じ相手に二度負けるほど、このヒメノ・ランは甘くない!」
一瞬にしてブーストライカーの真横に肉薄したカマキリオージャーが、オージャカリバーと合体させた大鎌モードのキングズウエポンを構える。
-OHGER SLASH!!-
逆袈裟に舞う一閃がバイクごとゴルドギーツを捉え…吹き飛ばされたゴルド…否、ブレズギーツはドクター・エンプサの濁った絶叫とともにはるか上空で爆ぜた。
-つづく-
決着!とはいえ絢爛編はあと1回続きます。戦後処理あるからね(言い方
この展開は執筆当初から考えてました。というか、全員対処方法は変える方向で構想しています。そのためにバックル周りの弱点を多めに設定してたり。明言はしてませんがそれっぽい話は幕間等でにおわせてるので読み返すと予測できるかも?
しかし、そろそろ執筆開始から1年経ちそう…なるはやで完結させねばw