炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

今日はちょっと趣向をこらして☆

プレイして無いの厳密には日記ではないのですが

折角のクリスマスなので、


季節イベント4.5(クリスマスVer)


を勝手にデッチ上げますw

ここでは24日に誕生日を迎えた雪歩を扱うのが定石ではあるのですが…
現在こちらはプロデュースしていないので、今回は他のプロデューサーさんにお任せする方向で(ぉぃ



 ―――クリスマス・イヴ。
 身を切るような寒さも、躍る心に忘れ去られてしまう、そんな日。
「ンもうっ、折角のクリスマスになんで仕事なんか…っ」
 特製のサンタ衣装に身を包んだ伊織は、少々おかんむりの様子だ。
 今日はクリスマスイベントということで、765プロ所属のアイドルたちの特別ライブを行っている。
「まぁそう言うなよ。クリスマスこそ稼ぎ時なんだからさ。トップアイドルを目指すのなら、避けては通れないよ」
 そう諭す僕自身は、トナカイの着ぐるみを着せられている(スタッフの制服らしい)。
 ちなみに、社長や小鳥さん、砕牙くんや菅原くんもトナカイである。

 …なぜか僕だけ赤鼻のオプションがついてるんだけど、なんで?

「今日は久しぶりにパパも兄さんも帰ってくるから、家でパーティする予定なのに…」
「なるほど。朝、妙にご機嫌だったのはそのせいか」
 僕は伊織の頭をぽんぽんと軽くなでた。
「じゃ、なおさらキッチリやらなきゃね。今日はスケジュールどおりに事が運べば、5時までには終わるから。終わったら今日は帰っていいよ」
 そう言うと、伊織の表情が一気に明るくなる。
「ホント!?」
「ホント。僕が今までスケジュールのことで嘘ついたこと、あるかい?」
「2回あるわよ」
 …う。まだ憶えてたのか(汗
「こ、今回はほんとーに大丈夫だって」
「…ま、いいわ。今回は信じてあげる。そうと決まったらサクサク終わらせましょ!」
 軽快にそう言って、伊織はくるりと踵を返してステージに向かった。
「…やれやれ、いつもこれくらいやる気に満ちてくれてるといいんだけどね」
 彼女に聞えないように、僕は呟いた。

  * * *

「「おつかれさまでしたーっ」」
「ああ、お疲れ」
 砕牙くんのプロデュースしている二人が事務所を出ると、空間は一気に静まり返った。
「なんか、気温まで下がったみたいですよね」
 菅原くんがぽつりと漏らした一言が、妙に印象に残った。

  * * *

「…随分と遅くなっちゃったな」
 書類をクリップで束ねて一息つく。机においていた缶コーヒーはすっかりぬるくなっていた。
「さて、独り者は独り者らしく、わびしいイヴでも過ごすかな」
 溜息混じりに独りごちて、事務所を出るべく扉を開ける。
「…?」
 その瞬間、外にいた一人の少女と目が合った。
「い…伊織?」
 何で?
 今日はパーティがあるからって早めに帰ったんじゃ?
「…くしゅんっ」
 と、伊織がくしゃみをした。よく見れば、肩も小刻みに震えている。
「とにかく中へ入って。風邪引くよ」
 僕は入り口に引っ掛けてあった僕のコートを羽織らせ、応接スペースへ通した。


「落ち着いたかい?」
 ホットココアを口に含んで、伊織は小さくうなづく。
「一体、何があったんだ?」
 あ、言いたくなければいいけどね。と付け加えておく。
「…パーティ」
「?」
「中止になっちゃったの。パパも兄さんたちも急に来れなくなって」
 ぐすっと、鼻を啜る。
「つまんないから、とびだしてきちゃった」
 …え?
「って、家からココまで? 歩いて?」
 こくんとうなづく。
 伊織の家には何度か行った事があるが、少なくとも、歩いてどうこうって距離じゃなかったはずだ。
 僕はともかく、14歳の女の子がほいほい歩ける距離でもない。
「…だって、ここしか行くトコなかったから」
 溜息混じりにそう呟いた伊織の姿は、普段のパワフルさを微塵にも感じさせない、歳相応…いや、それよりも小さな、薄く脆いガラス細工のような印象を受けた。
「こういうとき、友達の家にでも転がり込むのがフツーなんだろうけど、私、そーいうの無いのよね」
 やや自嘲気味に、伊織が微笑む。
「つくづく、私の世界の狭さってのを思い知らされたわ」
「…まだまだ。狭くて当然さ。これから幾らでも広がるよ」
 僕の言葉に、伊織はいつもの憎まれ口でなく、溜息で答えた。
 こりゃ、相当まいってるな…。よしっ
「出かけよう!」
「?」
「折角のイヴだ。ここでくすぶってたってつまらないだろ?」
「でも…」
 躊躇する伊織。ここまで大人しい彼女も珍しいが、それじゃ僕の調子が狂ってしまう。
「それとも、僕じゃ不足かな?」
「そ、そんなことない!」
 急に大声になり、伊織の顔がぼんっと赤く染まる。
「…じゃ、決まりだね」
 立ち上がった僕は、彼女に手を差し伸べる。
「お手をどうぞ♪」
 伊織は一瞬ためらった後、僕の手を取る。
「まったく…エスコート期待してるわよ、プロデューサー。…にひひっ」
 ようやく笑顔…僕にだけ見せてくれる、特別な…を浮かべる伊織。
 僕もそんな彼女に笑顔で応え、クリスマスソングの流れる街へと繰り出していった……



 ・
 ・
 ・


「ところで、何処に行くかもう決めてるの?」
「あ、いや。その…まだ、全然…
「あっきれた! あれだけ大きな口叩いておいて? …しょうがないわねっ。私がいいところ、教えてあげる☆」

 …うう、情けないなぁ。

 でも、伊織が元気を取り戻してくれて、良かったよ。



 ―――Happy Marry X’mas!