アイドルたちが帰り、小鳥さんが帰り…事務所内にいつしか静寂が訪れる。
「…さて、そろそろいいかな?」
僕は立てかけていた包みを引っさげ、社長室へと向かう。
人一倍働き者のあの人は、今夜もギリギリまでいるはずだ。律子から「残業は効率悪いからとっとと帰ってください」って言われても聞く耳持たない人だしね。
…まぁ、かく言う僕も似たようなものだけど
Takagi Shacho's Birthday Short Story
酌み交わし、男二人。
コンコン
「ん? …入りたまえ」
聞きなれた重低音ボイスがドア越しに聴こえる。ドアを開けると、疲れ目を指で押さえる社長の姿。…ちょうどひと段落、といったところかな?
「おや…もう帰っていたと思ったのだがね?」
「ええ、多少仕事が残っていたので。小鳥さんから鍵を預かっています」
チラりとデスクを見ると、カラフルな包装紙に包まれた箱が幾つか積まれている。今日は社長の誕生日…ということで、アイドル候補生の子たちからのプレゼントなんだろう。
「…大人気ですね、今日は」
僕がそう言うと、社長は照れくさそうに口の端を持ち上げた。
「ははは…娘からもらっているような気分だったよ」
確かに…社長と彼女達は、親子のような関係といってもいいかもしれない。
「それじゃ、“息子”からも…これをどうぞ」
包みをデスクに載せる。僕の地元の酒造メーカーが造っている特性の吟醸酒だ。社長がお好きだと小鳥さんから聞いていたのを取り寄せたのだ。
「おお…これはまたいいものを…♪」
子供のように社長の声が弾む。
「社長には常からお世話になっていますからね。ほんの感謝の印というヤツですよ」
「これはありがたい。いや、大事に呑ませて貰おう…いや、そうだな…」
すこし考えるそぶりを見せる社長。
「そういえば君は、通勤はマイカーだったかね?」
「いえ、電車ですが…?」
「そうかそうか」
満足げに頷くと、社長は戸棚からぐい呑みを二つ取り出した。
「折角だ、一杯どうかね?」
満面の笑みを浮かべ、社長が勧めてくる。勿論断る理由もない。
「それじゃ…お言葉に甘えて」
「君には感謝しているよ…彼女達を次々とトップアイドルへ導いてくれている。私としても鼻が高い」
「有難う御座います。でも、社長の指導あってのことだと思いますよ」
「いやいや。私は何もしておらん。ひとえに、君の実力だよ」
社長に手放しで褒められ、照れ隠しに酒を呷る。喉にかっと熱が走っていく。
「僕は…ワンダーモモの大ファンだったんです」
「ワンダーモモ…神田君か…いや懐かしいな」
ナムコシアターでワンダーモモを見て、それから彼女をプロデュースしている人物の存在を知った。…それが、社長だったんだ。
「ワンダーモモと社長は、今でも僕の憧れの人なんですよ」
「はっはっは。おだてても何もでんよ」
そう言いながらも、社長は上機嫌だ。
「時に…穂村君」
と、社長の声のトーンが若干下がった。
「“彼女”とは…最近どうなのかね?」
ぎくっ。
社長の言う“彼女”とは、もちろん“あの子”のことに違いないわけで…
「まぁ…あまり深くは追求する気はないが、あまりおおっぴらにはしないでくれ給えよ。お互いの為にならないことは、君とて良く知っているだろうからねぇ」
「も…もちろんです!」
例え立場の壁があったとしても、そのために彼女をなかせたりはしないし、彼女の未来を奪ったりもしない。
「僕は…彼女を守る。それだけです」
「…ふふふ。分かっているよ。さすが、私が見込んだ男なだけはあるな」
キラリ、と社長の鋭い眼光が僕の目を刺した。
「まぁ。なんにせよ、だ…」
僕が注いだ酒を一気に飲み干して、
「頑張ってくれたまえよ。君は私の誇りなのだからね」
「は…はい!」
社長の温かな笑顔がとても優しく、とてもくすぐったく…
僕は腹の底からの声で、それに応えた。
そしてまた、朝が来る…
「おはよう諸君。今日もいい天気だね」
「あ。おはよう御座います、社長!」
今日も765プロは大忙しだ。
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本日更新の公式HPでいきなり紹介されていた社長の誕生日。
正直、まさか本当に設定されてるとは思ってなかった(汗
でも、折角なので書いてみた♪
これで全キャラ誕生日SSコンプリートにまた一歩近づいたのだ!
…なんつてw