炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ディケイドSS】-誰かが君を…-【BLACK&RX】

 荒くなった息と鼓動が、内側と外側から鼓膜を刺激する。

 身を隠した陰から耳をそばだてると、追っ手の足音が遠ざかっていくのが聞こえた。

 とりあえずは撒いたようである。


「…はぁ、はぁっ…く!」

 腕に痛みが走る。先ほど、追っ手の中の一人である怪魔妖族・スカル魔スターの鎌の一撃を受けたものだ。白のブルゾンのポケットの中にバンダナを見つけ、それを使って止血する。

「…あ、これは」

 腕に縛りつけたところで、そのバンダナの元の持ち主を知る。

「ジョー…」

 今は遠けれども限りなく近く、しかして決して交わらぬ“隣”にいるであろう“仲間”に思いを馳せ、南光太郎はふと目を閉じた。


 お調子者だが情に厚く、頼れる相棒。光太郎自身、何度となく窮地を救われたこともある。
「今、お前は何をしてる……?」

 ふとこぼれた呟きにはっとなり、微苦笑する。

「…ダメだな。こんな弱気、あいつに怒られる」

 立ち上がり、全身の状態を確認する。数刻の休息ではあったが、体調は幾分本調子に戻りつつあった。この分なら再度の進行は問題ない。

 たとえこの先にあるのが幾重にもめぐらされた罠であろうとも。


「行かなければならない。俺は……」


 自らを奮い立たせるように拳を握り、目の前を見据えた。




    仮面ライダーディケイド/A.R.WORLD STORYS
    EPISODE:BLACK&RX-誰かが君を…-




「兄貴!」

 廃倉庫に軽快な声が響く。置くから黒いブルゾン姿の男が顔を出すと、青年は笑顔を見せて駆け寄った。
「どうだ、ジョー?」
「とりあえずざっと偵察した限りだと……」
 ジョーと呼ばれた青年が手にしていた見取り図を開く。
「敵さんの警備が手薄なのはここと…ここ。とくにこっちのほうはわざとかってくらいに人っ子一人いなかった」

 おもいっきり罠だろうな、と続け、ジョーが男の……南光太郎の表情を伺う。

「どうする?」
「…行くに決まってるだろう?」
 薄く笑い、ジョーの肩をぽん、と叩く光太郎。
「だけどさ…」
「……たとえ罠だと解りきっていたとしても」

 難色を示すジョーに、光太郎の声が凛と響く。

「行かなければならない。…俺は、<仮面ライダー>だからな。ゴルゴムの…いや、大ショッカーは、俺が止めなければいけないんだ」

 自らに言い聞かせるように語る光太郎に、ジョーが微苦笑した。

「?」

「いや、俺のいた<世界>の兄貴も、おんなじこと言ってたな…って」
「…そうか」

 あの時―――ディケイドと大ショッカーとの戦いの中で一度だけ邂逅した、もう一人の自分のことを思い出す。

 今も彼は、独りで戦い続けているのだろうか。

「…ジョー」
「ん?」
「…もといた世界に、戻りたいとは思わないか?」

 光太郎の問いに、ジョーは腕組みをして考え込むしぐさをしてみせたが、すぐに笑顔になってこう答えた。

「そりゃ戻りたいさ。でも、今兄貴を置いて向こうに戻れたとしても、今度は向こうの兄貴に怒られそうだ。戦いを放り出して何やってるんだ!…ってさ」

 その言葉に、知らず光太郎も笑う。もし自分が“彼”の立場なら、そう言ったかもしれない。そう思えて。

「……さぁ、おしゃべりはここまでにしよう。いくぞ」

 愛車・バトルホッパーにまたがり、エンジンを高鳴らせた。


   *


「……ここか」
「ああ」

 敵アジトの前に着いた光太郎と霞のジョー。確かに警備は手薄すぎるほどに手薄だったが、その入り口はまさしく虎穴と言わんばかりの威圧感を見せていた。

「…行くぞ」
「おう!」

 ・
 ・
 ・

「…いくぞ、クライシス!」

 一方、もう一人の光太郎も、立ちはだかるクライシス帝国の尖兵たちと対峙していた。


 両者が、丹田に力をこめる。腰に光が宿り、ベルトを生み出す。


「変―――」



「―――身!」


 刹那、太陽の如き閃光がふたつの<世界>を照らす。
 そして、二人の漆黒の戦士が―――起つ。




仮面ライダー……ブラァァァァックッ!!!」


「俺は太陽の子! 仮面ライダーBLACK・RX!」



 太陽に愛されし、両雄が叫ぶ。


「パワーストライプスッ!」


「リボルケイィィン!」




「「 い く ぞ ! ! ! 」」



 BLACKが。
 RXが。


 戦場に躍り出た。



   -了-



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 今回はBLACK&RX編。
 ブラック世代ストレートど真ん中な当方としては、これの執筆は譲れなかったじぇ…w

 さて、両者の世界をリンクさせる技法を取ったのですが、はたして読みやすいかどうかは未知数orz

 おもしろければいい!って読めなきゃ意味がねえからなぁ…


 次回はアマゾン編を予定。それが終わればクウガ編…はてさて。