――叫べナオ、“ジャンファイト”と!
「ジャンファイトッ!!!」
澄んだ声がキーとなり、“私”の……<ジャンバード>の身体を、変える。
全身を、敬愛するエメラナ姫からもたらされたエメラル鉱石のエネルギーが駆け巡り、腕を、拳を、脚を、そして心臓部……私自身の心を、滾らせる。
“立ち上がった”私と、コックピットの少年・ナオの体がリンクする。
今この瞬間、私とナオは、二人でひとりの<私>となったのだ。
「んっ!」
飛び込み、タックルを繰り出す。ダークゴーネが怯んだところに、私は左拳を撃ち出す!
――ジャンナックルッ!
強烈な推力を伴った一撃がダークゴーネを打ちつけ、派手に吹き飛ばしてみせた。
「すごいよ、ジャンバード!」
――<ジャンボット>と呼んでくれ! ともに戦おう!
右腕からエネルギー剣・ジャンブレードを展開し、私は声高らかに叫んだ。
ULTIMATE FORCE TETRALOGY
Episode:JEAN-BOT/強き勇気と鋼の身体
ナオの体さばきが、私を文字通り“動かす”。
コックピットに立つ者の動きを寸分違わずトレースする特性をフルに活かし、私はナオの言うところの<アヌー拳法>を再現し、悪しき闇の参謀と切り結ぶ。
エメラナ王家に代々仕え、<鋼鉄の武人>の二つ名を持つ私だが、長らく平和な日々が続いたために、私自身が戦うことはほとんど無かった。
ゆえにこの姿をとっても、歴戦の勇士たるゼロやグレンファイヤーのように戦えないと、密かに感じていた。
だが、それをナオが補ってくれる。
彼の小さな身体に刻み込まれた経験が、私の経験となる。
私と彼の力が合わさり、敵と戦う力となるのだ。
「――!」
不意に、振るわれたジャンブレードが空を切る。ダークゴーネが、闇にまぎれてその姿を隠したのだ。
――センサーに反応しない……?
「ハハハ……」
周囲を警戒していた私たちの背後から、不意に笑い声が響く。次の瞬間、太いエネルギーロープが私の身体を拘束した
しまった!
ほとばしる電撃が、全身を駆け巡る。
その苛烈な衝撃に、思わずひざを突く。
受けるダメージは、生身の人間であるナオの方が辛いだろう。もともと王族護衛用として開発されたものゆえに、コックピット周りの防御性能は高いが、それでも、苦痛に叫ぶナオの声が、私のセンサーを、電撃による痛みよりも辛く感じさせた。
「ハハハ……ワハハハ……」
ダークゴーネの下卑た高笑いが背後から少しずつ近づいてくる……
「ジャンボット、いまだ!」
――!
ナオの声に、はっとなる。
彼は機を待っていたのだ。身体が引き裂かれそうなほどの痛みに耐えながら、自分と、私の勝利を確実のものとするために。
ならば、私も応えなければならない。
その身を呈して、私に力を与えてくださったエメラナ姫のためにも。
その技を以って、私の力となってくれたナオのためにも。
――バトルアックスッ!!
左肩で展開する巨大な刃が、エネルギーロープを切り裂き、戒めが解かれる。
いまだ! 行こう、友よ!!
手にしたバトルアックスの重みが、手に伝わる。
ナオはその重みを武器に、私の身体を軽やかに舞わせた。
1回、2回、3回……回転するごとに、バトルアックスにパワーが集まる。
頂点に達した勢いが、ダークゴーネの身体を裂き、叩きつける。
――必殺!!!
「風車ぁっ!!!」
断末魔の叫びとともに、黒き参謀が爆裂四散した。
――よしっ!
「やった!」
ガッツポーズをしてみせるナオ。私が彼と同じサイズであれば、互いに手を取って健闘をたたえられたのだろうが……
いや、かまわない。
私がジャンボットだからこそ、ナオとともに戦えるのだから。
「……あっ、兄貴が!」
と、ナオの指先が指し示す。そこには巨大な怪獣と、その手の中に……
――ゼロ!?
「行こう、ジャンボット! 兄貴を助けるんだ!」
――了解ッ!
背中のスラスターを全開に、私は飛び立つ。
ナオの兄を、<仲間>を……ウルトラマンゼロを救うために。
-It continues to the Final Bout!-
ウルティメイトフォース・テトラロジー、3番手となったのは
OVでまさかの「万死に値する!」発言をやってのけた絶望先生……もとい、鋼鉄の武人ジャンボット。
前2作は本編で語られていない部分の描写ですが、今作は本編の時間軸とリンクさせてみました。
……まぁ、ジャンボットの姿で活躍するタイミングって、「ゼロTHE MOVIE」の中だとあのシーンしかありませんしねぇ。
当該シーンでのジャンボットの心情描写は、あくまで二次創作ですので「私はこういう解釈をしている」とだけ感じていただければ。
それこそ、ご覧になった方の数だけ解釈があると思いますし、作者の考えを押し付けるものでは決して無いことをご了承いただければ幸いでゴザイマス。
さて、今回の執筆にあたり、列伝放映分の「ゼロTHE MOVIE」を見直してましたが……
やっぱ演技力パネェな龍臣くん……