炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

Chapter:1/Scene:2

「あらあら、何の騒ぎなの朝っぱらから…?」
「…まだ眠い」
 少女の大声に、ぞろぞろと部屋に人影が現れる。
「…?」
 少女に叩かれた頬をさすりながら状況を把握すべく頭をフル回転させる少年だが、イマイチ飲みこめない事態に、目を白黒させる。
 部屋の主の妹と姉だろうか、彼女より年上の女性と、まだあどけなさを残す少女が1人ずつ。
「何があったの、まひるちゃん…あら?」
 ふと女性と目が合った。おっとりとした物腰の綺麗な人だ。
(似ている…)
 見覚えのある顔に、少年は既視感を憶える。それに…
 彼女が言った「まひる」と言う名前に、彼は聞き覚えがあった。
「まひ…る?」
 呟いた自分の名前に、少女…まひるは彼に視線を向ける。
「…な、何?」
 今度はまひると少年の目が合う。先ほど以上の既視感を憶える。今度はお互いに、だ。
まひる…? まさ…か?」
 バンッと弾かれたように立ち上がり、自分の背後にあった窓に飛びつく。
「あ痛っ!」
 ガラス窓を空けることなく突っ込んだため、鼻っ面をぶつけてしまう。
「ガラス…マジかよ…?」
 うわごとのように呟き、少年はガラス窓を開く。眼前に広がる風景を見て、彼は傍から見て取れるように愕然とした。
「…地上!? 戻って…きたのか…?」
 再び部屋の方へ振り返る。姉、妹と順に視線を向け、最後にまひるに目を合わせた。
「じゃあ…君は……」
 まひるも、少年の顔に旧友の面影を見出す。
「ひょっとして…通之介…なの?」
「やっぱり…まひるちゃん…なのか…?」
 少年が自分の名…通之介…を呼ばれ、疑惑が確証へと変わる。それはまひるも同様だった。
「嘘みたい…」
 まひるが言葉を失う。かつて自分の前から姿を消した幼なじみが、成長した姿で目の前に居ることに。
「じゃ、こっちは…朝子さん?」
 ふと、視線を姉に向ける。
「うん、正解♪ …おおきくなったわね~」
 姉…朝子がにこやかに頷く。
「……」
 くい、と妹が朝子の服の裾を引っ張る。
「流石にこの子は憶えてないかしら?」
「咲夜ちゃん…だよね? 憶えてるのは、赤ちゃんだった頃のだけど」
 憶えてくれていたのが嬉しいのか、妹…咲夜が嬉しそうに微笑む。
「それにしても…10年以上もどこで何をしていたの?」
 朝子が問いかける。
「それは…」
 通之介が答えようとしたその時、

  グォォォーーーーーーン!!!

「!!?」
 突如外から轟音が響く。
 窓から外を窺う通之介たちの目に、巨大な骸骨の塊が軋みと唸りを上げる姿が飛び込んだ。



 -つづく-