炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【SS】双海亜美&真美誕生日記念【書いたナリ】

 初夏が近づき、そろそろエアコンも冷房の時期だな…と思いながら机に向かう。
 アイドルのプロデュースって、デスクワークも多くて大変なんだよなァ…

「兄ちゃん兄ちゃん!」
「…んー、どうした真美?」
「うわっ、すごいよ兄ちゃん。後ろ向いたまま声だけで真美が真美だって分かったの?!」
「そりゃ、付き合いも長いんだ。区別もつくようになるさ」
 生返事を返しつつ、書類整理を着々とこなしていく。

「…で、何の用だ?」
 ひと段落着いたところで、自分の肩をとんとんと叩きながら僕は背後にいる真美に向き直った。
「あのねあのね、もうすぐ真美たち誕生日なんだけど…そのことでナイショのそうだんがあるの!」
「ナイショの相談ねぇ…?」
「ぜったいっ、ぜーったいナイショだよっ。特に亜美には、ぜぇ~ったい教えちゃダメだかんねっ!」
 息巻く真美に思わず気圧される。勿論断る理由も無い。
「わかったわかった。じゃ、用件を聞こうか?」

 ・
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「じゃ、よろしくね~兄ちゃん♪」
 手をブンブンとふって真美が事務所を後にした。
「ふぅ、やれやれ…」
 と一息つく間も無く、再び事務所の扉が勢いよく開く。
「兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃん兄ちゃんに~いちゃ~ん!!!」
 耳を劈くほどの亜美の声が事務所中に響いた。
 …オマエなぁ…僕が大きな声で挨拶したら怒るくせに…。
「どうした? もうすぐ誕生日だけど、その件か?」
「えっ!? どうして分かっちゃったの? もしかして兄ちゃんエスパー?にゅーたいぷ??」
 目をキラキラさせて問いかけてくる。
「いや、どっちでもないけどな。…で、話はなんだ?」
「うんうん。あ、これはぜったいにナイショのお話だからねっ。真美にもゆっちゃダメだよ。いーいっ!?」

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 ・

「ふむ…」
 二人からの相談の内容を整理して、最善のロジックを組み立ててみる。…ん、これならイケるかな。
 さてさて、僕もちょっと頑張らないと…ね?





   Ami & Mami 's Birthday Short Story
   キミはステキなもうひとりのワタシ





「えーと…2階の応接室と、3階のプレイルームの使用ですね? はい、許可します。…ところで、同時に二部屋も使って何をされるんですか?」
「ん、準備…かな?」
「?」
 首をかしげる小鳥さんをよそに、鍵を受け取って目的地に向かう。
 まずは亜美の待つ2階だな…。


「それじゃ、始めようか?」
「はーいっ!」
 学校で使うお裁縫セットを掲げて元気よく返事する亜美。
「前の採寸データがまだ使えてよかったよ。…じゃ、僕はこっちの作業をするから、亜美はこれと、これ、頼めるかな?」
「あいあいさー☆」


 1時間ほど作業していると、僕の携帯にメール着信。どうやら3階の真美が痺れを切らしたらしい。
「亜美、しばらく作業1人で大丈夫か?」
「どしたの?」
「ん、ちょっと別のお仕事が入ってね」
「そっか。うん、だいじょーぶだよ。亜美、家庭科とくいなんだ~☆」
 意外だなァ…
「あ、今兄ちゃん、意外って思った!」
「そ、そんなことないぞ?」
 ごまかし笑いを浮かべつつ、この部屋があと1時間までしか使えないことを伝えて、僕は応接室を出た。


「兄ちゃんおそーい!」
「ごめんごめん。他の仕事が立て込んでてね」
 互いにばれないようにしつつ、と言うのは存外大変である。子供だと思って油断していると、こういうのはすぐばれてしまうのだ。
「…どこまで出来てる?」
「ここまではなんとかできたんだけど…なんか変になっちゃって」
 手渡された代物を確認する。…なるほど。縫わなくていいところまで縫っちゃったのか。
「直る?」
「ん、任せろ」
 自慢じゃないが、そんなに裁縫は得意と言うわけではない。だけど、できるところまでは手伝ってあげたいよな。
「…よし、これでいいだろ。真美、次やるぞ」
「うん!」



     * * *


 そんなかんじで、二人の間を行ったり来たりしつつを繰り返し…一週間が経過した。
 いよいよ5月22日。誕生日の当日だ。

「わーっ、ひっろーい!」
「学校の体育館よりずーっとずっと広いよーっ!」
 僕たちは先日落成したばかりの文芸館ホールのステージに立っていた。全国的にも有数のハイスペックなステージは、完成前から各団体の予約が殺到するほどだ。
「…でも、ここで何するのー?」
「ぱーてぃするには、ちょーっと広すぎないかなぁ?」
 ステージ上をぱたぱたと駆け回りながら首をかしげる二人。
「まぁ、ここに来たのは仕事兼ねてだしな」
 うろちょろする二人を手招きで呼び寄せ、その頭にぽんと手を乗せる。
「じゃ、改めて。…誕生日おめでとう、亜美、真美」
「うん!」
「ありがとー!」
 にぱっと笑顔の花を咲かせて応える。
「パーティは帰ってから事務所でみんなでやるとして…その前に。二人とも、用意してるものがあるんだろ?」
 うんうんと頷いて、二人は背負っていたナップサックからラッピングされた紙袋を取り出す。
 別々に作ったはずなのに、ラッピングもどこか似通っている辺り、やっぱり双子なんだなぁと再認識する。
「はい、真美」
「はい、亜美」
「「ありがとー♪」」
 同時に手渡し、同時に受け取る。そしてまた同時にラッピングを解き…

「「あれ、あれれ???」」

 同時に驚く。
「「おんなじ…?」」
 お互いの手に渡ったのは、緑色を基調とした小さな衣装。
「もしかして…」
「兄ちゃん…」

「「ばらしたでしょー!?」」
 ぷぅっと頬を膨らませて抗議の声を上げる二人。
「…いや、バラしてないよ?」
 僕がそう言っても、二人は信じる気配が無い。
 まぁ、仕方ないと言えばそれまでなんだけど。
「…亜美は、『真美にアイドルとして大きな仕事をプレゼントしたい』。真美は、『亜美のためにお手伝いがしたい』」
 …こくんと頷く二人。
「二人の、お互いを思う気持ちを、僕は大切にしたいと思ってね」
 折りよくオファーがかかっていた仕事があった。伴うリスクは大きいが、やりがいはある。社長に直談判し、二人の為にどうにか押し切ったのが…
「はい、コレは僕からのプレゼント」
 二人に包みを手渡す。いそいそと解く二人の手の中に、ちょっと分厚い台本と、羽のついた帽子が乗っかる。
「『ピーター・パン』のダブルキャストだ」
 表紙に描かれたファンタジーなイラストを、二人は食い入るように見つめる。
「いつもどっちかが出られない、ってのは、僕の思ってる以上に寂しいことだよな」
 1人のアイドルの振りをしてる以上、それは避けられないことなのだけれど。
 でも、方法があるのなら、僕は力になりたいんだ。
 僕は、プロデューサーなんだから。

「このステージで、ピータ・パンをやるんだ」
 僕がそう言うと、二人はぐるりとステージを、客席を見渡す。
「…当然、そう簡単にはいかないぞ? 覚悟はあるか?」
 軽く脅しをかけるように言うと、
「ぜんっぜん!だいじょーぶっ!」
「真美たちをナメないでよねっ!」
 ぱんっ、と手を繋ぎ
「「二人なら、どんなに大変なことでも乗り切れるんだからっ!!」」
 ヒマワリのような満面の笑みで、そう答えた。
「そっか」
 双子は合わせ鏡のもう1人の自分。苦難や悲しみは半分に、楽しいことや嬉しいことは、2倍にも3倍にも出来るんだ…。

「「兄ちゃん」」
「ん?」
 唐突に声をかけられ…と思った瞬間に、僕は二人に寄りかかられる。決して重いわけじゃないけれど、バランスを崩した僕は押し倒されてしまった。
「お、おいおい…」
「「んっふっふ~」」
 二人の小悪魔は可愛く笑い…
「「兄ちゃん、だーいすき♪」」
 両の頬に口付けをした。




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あとがき

 今迄で一番難産でした(超トオイメ
 とりあえずやりたいことが消化できたので善しとすべきかな。

 でもなんか、自己満足に凝り固まってる感覚が…。
 この辺、要精進だなぁやっぱり。




 さてさて6月は…23日に律子だな

 むぅ、今回以上に難しそうな(汗
 つかネタが浮かばねぇ!!!