炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【SS】音無小鳥バースデー記念【書かせていただきまして】

 ―――6:45am
 無機質な目覚ましのベルに安眠が遮断され、私はのそのそと起き上がる。
 乾いた音とともに引いたカーテンが動き、昇る朝日が視界を支配する。んーっと背伸びして、寝惚けた体を完全に覚醒させると、私はいつもどおり鏡に向かう。
「おはようございますっ」
 私―――音無小鳥の一日が始まる。




   Kotori's Birthday Short Story
   リコリスをあなたに



 ―――9:50am
「小鳥さん、おはようございます!」
「おはようございます」
 事務所一番乗りは春香ちゃんと千早ちゃん。いつもどおりの挨拶を交わしたところで、二人ははいっ、と私に小さな包みをくれる。
「?」
 首をかしげる私に、春香ちゃんが補足する。
「今日、誕生日ですよね? …あれ、違ってました?」
 …ああ、そういえば。
 9月9日は私の誕生日。すっかり忘れていた。
 まぁ、誕生日を祝われて素直に喜べる歳でも…ないことはないけれど。
「ありがとう。春香ちゃん、千早ちゃん」
 プレゼントを受け取ると、二人は柔らかな笑みを返してくれた。
「おはよう、みんな」
「おはようございます、プロデューサーさん」
「あ、おはようございま…」
 プロデューサーさんの動きが止まった。私の手の中の包みを見たのが原因…のようだけど…?
「…す」
 どうにか語尾を絞り出して、今度は壁のカレンダーを見ている。何かプロデューサーさん、顔色悪くなってる気がするんですけど…?
「……」
 カクカクと不思議な動きを始める。…どうしたんでしょう?
「あ、あの…プロデューサーさ」
「おお!担当アイドルとミーティングをしないと!」
 妙に大きな声でそう言うと、そのままプロデューサーさんは応接室へと消えていった。
「…なんなのかしら?」
 というか、今プロデューサーさんが担当してるあずささん、まだ来てないですよ?



 ―――13:25pm
「はい、では伝えておきます…はい。ありがとうございました。それでは失礼いたします」
 受話器を置いて一息。日曜日の問い合わせ電話は少し多めで大変。

「…ですからね~……わけなんですよ~」
「はぁ…たしかに……ですよね」
 …あら?
 あずささんと…プロデューサーさん?

 事務所に戻っていたあずささんとプロデューサーさん…何か様子がおかしい。いつもならプロデューサーさんがあずささんに色々指導しているであろう状況のハズなのに、なにやら立場が逆っぽい。
「…よし、じゃあ僕。ちょっと出てきます。あずささんは休憩しててください」
 そう言って、プロデューサーさんは再び事務所を出た。
「プロデューサーさん、何かあったんですか?」
 あずささんに聞いてみる。
「うふふふ…ちょっと女心を勉強してもらいました~」
「…はぁ?」
 いつもながらあずささん、つかみ所がない人よね…

 それにしてもプロデューサーさんは何をしてるのかしら?



 ―――10:30pm
 アイドルのみんなが帰ると、少し手狭だな…と思っていた事務所も心なしか広く感じる。
 さて、私もそろそろ帰らないと…
「小鳥さんっ」
 …プロデューサーさん?
 ちょっと緊張を帯びた声で呼ばれ、顔を上げると、プロデューサーさんが隣に立っていた。
 直立不動で、口を横一文字に結んで。よく見ると顔が赤くなっている。
「どうかしました?」
「あの、その…」
 しどろもどろになりながら、泳いでる目を更に泳がせる。
「これ!」
 後ろに回していた手をぱっと出す。その両手には、一輪のお花が綺麗にラッピングされていた。
「…私に…ですか?」
「その…今日、誕生日ですよね? ごめんなさい、すっかり忘れてたもんで…」
 本当に申し訳無さそうな顔で、プロデューサーさんが頭を下げる。
「何がいいか、色々考えたんだけど…持ち合わせもあんまりなくて、こんなのになっちゃったんですけ

ど…」
 そのお花には見覚えがあった。リコリス。9月9日…今日の誕生花だ。
 プロデューサーさんが、花屋の店先で必死に悩みながら、探して選んでくれたであろうリコリスの花。
 その様子を思い浮かべたら、なんか可愛いなぁ…なんて思って。
 私は、くすっと笑みを浮かべた。
「ありがとうございますね。プロデューサーさん」
 リコリスを受け取ると、プロデューサーさんの顔がぱぁっと明るくなった。
「ど、どういたしまして…っ!」
 照れ隠しなのだろうか、頬をかいて苦笑いを浮かべている。
「あ、そうだ」
 せっかくだから、もう少し…プロデューサーさんとお話しようかな。
「これから時間、空いてます?」
「え? ええ、まぁ…」
「だったら、ちょっと私に付き合ってくれませんか?」
「はいっ!?」
 耳まで真っ赤になるプロデューサーさん。あらあら。あんまりこういうこと、免疫ないのかしら?
「ちょっと遅いですけど、夕食、いっしょしません?」
「あ…は、はい!」
 大きな声で返事が跳ねた。




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 あとがき

 降臨、満を持して…!(違
 そんなわけで、小鳥さんの誕生日をお送りしました~
 2chのアイマススレでネタを軽く募ったときに見かけた、「小鳥さんの一日」なる言葉をモチーフにしてみたんですが…案外うまくいかないものですね。結構苦戦しました(ぉぃ

 四六時中いっしょに居ることが多いアイドルたちと違って、内勤である彼女って、プロデューサーとの接点が少なくて少なくて…
 まぁ、この辺は小鳥さん側の視点で物語を進行させることでカバーしましたが。

 ちょっとお姉さんぶってる?
 いや、確かにプロデューサーより年上なんでしょうけどね。
 …なんかキャラが迷走している様な気もする。大ファンの方、気分を害されたらゴメンナサイ(平伏


 さて、次は10月…美希か。

 表にするか、裏を書くか…



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