シーン11~蠢く殺意~
エウルディーテ…かなみの体を中心に、禍々しい負のオーラが衝撃波を生み出す。
「ぐっ…!」
体を意識を吹き飛ばされそうになり、必死に持ちこたえる斬の目に、想いを寄せる少女が見るも無残な姿に変わっていく光景が映る。
「かな…みっ!」
圧される体を奮い立たせ、かなみの体に近づく斬。
「―――!」
不意に、かなみの目が青白く光った。刹那、猛烈な衝撃波が斬を襲い、弾き飛ばされた斬の体は、神殿の巨大な柱に叩きつけられた。
「がっは!」
口の中に鉄の味が広がる。
「もう…だめなのか…」
斬が歯噛みする。
『諦めちゃダメよ斬! 貴方が諦めたらもう二度とあの子は戻ってこないの!』
ヴィスタの叱咤が飛ぶ。
「だが…既にかなみの体は…」
少女の体を覆うのは、腐臭にまみれたホラーの肉。その眼は既に生気を喪い、青白くぼぉっと光っている。
『まだよ! まだ完全に取り込まれては居ない筈!』
「どういうことだ?」
ゆっくりと立ち上がりながら、斬はヴィスタを目の前にかざし問いかける。
『思い出しなさいな。いまお嬢ちゃんの体にはエウルディーテがいるのよ? それに、あのホラーの陰我とお嬢ちゃんのは適合していない。つまり…』
「まだ…付け入る隙があるってことか」
『ええ。…恐らくはあの神官、自分の意思でホラーの力を取り込む腹積もりだったようね。抜け目ないったらありゃしないわ』
ヴィスタが吐き捨てるように言った。
―――クス、クスクスクスクス…
「!!」
ホラーと化したエウルディーテから笑い声がこぼれる。
―――斬…今すぐ殺してあげるね…
―――それから、ゆっくりいっしょになろう…?
―――ずうっと、永遠を、私と生きるの…
『っ言ってること、矛盾してない!?』
「くっ…」
斬が魔戒斧を振るう。魔導火を刃に纏わせ、構えた。
「かなみ…ちょっと熱いが、我慢してろ!」
腹の底から叫び、同時に斧を振り下ろす。刃の軌跡に載った真紅の魔導火が、少女を捉え、その身を灼いた。否、その炎は少女の身を包み、ホラーと化した部分のみを灼いている。
「…あぁぁぁッ!」
精神を集中させ、魔導火を遠隔操作する斬。火の扱いに最も長ける、紅蓮騎士ならではの技能だ。
「燃え尽きろッ!」
斬の言霊が、魔導火を一層燃え上がらせた。体を蝕んでいたホラーが焼滅し、かなみはぐらり、と倒れる。
「かなみっ!」
駆け寄り、少女の体を抱き寄せる。目を閉じたまま、動くことのないその体は、僅かに温かく、鼓動も感じる。
「よかった…大丈夫か…」
―――なぁんちゃって☆
ドシュッ
エウルディーテの鈴の転がるような声が響き、次の瞬間、斬の脇腹を長い爪が貫いた。
-つづく-
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お待たせしましたの第3場スタート!
ほぼ全編バトルシーン。俺よ、俺に死ねというのか?(ぉ
つーかいきなり斬大ピンチだし!
とりあえず、待て次回!
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