炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【二次創作】GARO/異聞譚

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン4【真鍮騎士篇】

「な……なに、これ?」 敵前であることを忘れているかのような、獅子丸の素っ頓狂な声が転がる。 『どうした!? ぼさっとしてんな!』 そんな相棒に喝を入れると、うなづきながら剣を握り直し、跳んだ。 「うわっ!?」 『む!?』 その跳躍に、俺のみならず…

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン3【真鍮騎士篇】

俺……こと魔導具<アルド>が、魔戒騎士・立神獅子丸の“相棒”となってから、一週間が経過した。 未だ任務には当たってないものの、こいつの“人となり”的なものはだんだんわかってきた。 『獅子丸よぉ……なんで一言の言い返しもしねえんだよ……言われたい放題だ…

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン2【真鍮騎士篇】

オレが阿門のじーさんトコに厄介になってから、数ヶ月が経った。イカついじーさんとの二人(?)暮らしってのも存外悪くは無いもんだね。 ボロボロだったオレの“身体”も修復が終わった。鏡で見せてもらったが、ずいぶんとイケメンになってて驚いたもんだ。 …

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン1【真鍮騎士篇】

<アルド> それがあのじーさん……阿門法師からもらったオレの名前だ。 「なんだお前、旧い魔戒語のことも憶えておらんのか? ……“名も無き者”という意味だ」 『!? っテメー、それ結局<名無し>ってことじゃねえか!!!』 かんらかんらと笑ってやがった。……

【牙狼SS】無銘の友誼:プロローグ【真鍮騎士篇】

―――誰だ…… 誰だ、オレを呼ぶのは……? 沈んでいた“意識”が急速に浮上する。ぼんやりとした光が、やがて鋭くなって……オレは目を醒ます。 「……おう、ようやっと起きたか」 『うおわああああああっ!!?』 とつぜんぶつかった視線に驚き、次は馬鹿でかい自分の…

【牙狼SS】血錆の兇刃:エピローグ【緑青騎士篇】

白み始めた東の空を眺めながら、6人の若者たちが思い思いに疲れた身体を地面や樹木に預けている。 人払いの法術は間もなく解ける。日が昇れば、公園の惨状が人目に晒され、ちょっとした騒動になるだろう。 それまでには突き刺さった緑青剣を引き抜き、ここ…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン16【緑青騎士篇】

――真なる烈火炎装 魔戒法師の祖、<炎人>の末裔とも言われる、紅蓮騎士の系譜に伝わる最大奥義である。 鎧に魔導火を纏わせる通常の烈火炎装とは大きく異なり、ソウルメタルを文字通り燃やし、炎の鎧を以って戦う。 今世において、この技を扱えるのは、当代…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン15【緑青騎士篇】

「さあて、そんじゃま行きましょうか!」 優雅に舞う揚刃が、ソウルメタルで造ったメダルを取り出す。魔導火をともし、ぱっと投げ上げ、気合を放つ。念を送り込まれたメダルは、炎の飛礫となって一斉に咎牙に降り注ぐ。 「まだまだいくわよっ」 次々にメダル…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン14【緑青騎士篇】

咎牙と同じく、錆びた銅の色を持った甲蟲の鎧が、少しずつ黒ずんでいく。心なしか、少しずつ大きくなっているようにも思えた。 『ソウルメタルが、デスメタルへと変貌している……』 「デスメタルって、確か闇に堕ちた魔戒騎士の鎧の……?」 相棒の呟きに反応し…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン13【緑青騎士篇】

既に幾合の攻防が繰り広げられたのか。11を最後に、誰もが数えることを放棄していた。 90秒前後を、狼を象った鎧が数体組み合い、切り結び、叩きつけ、かわす。 制限時間ギリギリで鎧を脱ぎ、紅牙たちは身体を休めていた仲間と交代し、肩で大きく息をし…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン12【緑青騎士篇】

「あれが……緑青騎士・咎牙」 「鎧を纏っただけで心が折れそうになる気魄を放ちやがるぜ……ったく、とんでもねえ」 びりびりと皮膚に受ける殺気を感じ、斬と紅牙がごくり、と固唾を呑んだ。 「――来る!」 誰かの声が聞こえた刹那、錆びた鎧が飛び掛り、大きな…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン11【緑青騎士篇】

「律さん……」 突然の闖入者に、驚きとともに一瞬の安堵が、あかねの緊張の糸を切る。力の抜けたその肩を、瑠璃色の袖がそっと抱いた。 「大丈夫、あかねちゃん?」 「光さんも……どうして……」 問いかけに、「そりゃこっちのセリフだわよ……」と光が返しながら…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン10【緑青騎士篇】

人の気配のない……事前に人払いの方術でも仕掛けていたのか……公園に、金属音と打撃音がこだまする。 既に打ち合いは両手の指を使い切ってなお足りないほどの数に及び、周囲の地面や植木には、弾かれ受け流された衝撃の余波による傷跡がいたるところに刻み込ま…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン9【緑青騎士篇】

ふわり、と不意に譲一郎の黒衣が風圧に揺らぐ。 「……!」 咄嗟に、あかねが前傾姿勢になる。“無形の位”……構えなき構えをを得手とする彼女ではあったが、噴き上がる殺気が彼女に僅かながら恐れを抱かせ、それが身体を動かしてしまったのだ。 刹那、佇む譲一郎…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン8【緑青騎士篇】

日没から、数時間が経過した。 間もなく大気に漂う陰我の密度は最高潮に達するだろう。 そんな闇夜の中を、魔戒騎士の正装たるコートが、三つ翻る。 「今のところ、妙な気配はないみたいね」 「……だな」 先んじた女性のような男の声に、静かに別の男の声が答…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン7【緑青騎士篇】

騎士たちが南の管轄に集結し、一夜が明けた。 紅牙の提案に乗り、ローラー作戦を以って咎牙を追跡することにした彼らは、早速ペアを組み、管轄の南と北から作戦を開始した。 「そっちはどうだった?」 「特に異常は無かったな。周囲に気を配っても見たが、付…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン6【緑青騎士篇】

「よう、遅かったな斬」 南の管轄の各所を案内した後、斬と透は番犬所を訪れた。 「ああ。北からの客人を案内していてな。…ええと、なんだ、俺たちが最後かな?」 そうみたい、とあかねが応える。 「さて、そんじゃま全員そろったところで、簡単に自己紹介し…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン5【緑青騎士篇】

大降りの魔戒剣が、ホラーの肉体をたやすく切り裂き、続けて振るう二の太刀で、魔獣は断末魔すら許されることなく地面に骸を叩きつけられる。 魔戒騎士…緑青騎士となり、<咎牙>の銘を襲名して数年。 男は、ただ無感動に剣を振るい、無表情に魔獣を屠り、無…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン4【緑青騎士篇】

「…む?」 午後になり、再び緑青騎士の捜索へと出かける紅牙とあかねを送り出した後、自らも出かけようとした斬は、“紅葉の家”の前にたたずむ人影を見かけた。 白いコートを羽織り、漂わせる特異な雰囲気から、それが同業者…魔戒騎士であることは容易に想像…

【牙狼SS】血錆の兇刃:閑話~透~【緑青騎士篇】

「サバックの出場を蹴っただけのことはあったな」 『アンタくらいなものよ? 名声より目の前の報奨金だーなんて言ってサバックへの参加を断るなんて』 ぶーたれる相棒の言葉を涼やかにスルーし、白いコートに足音を反響させていく。 <南の管轄>へと繋がる…

【牙狼SS】血錆の兇刃:閑話~光~【緑青騎士篇】

「…ふぅむ」 浮かび上がった魔道文字を見やり、御堂 光が腕組みをして唸る。 「腰を落ち着ける暇も無いわねぇ…まぁ、どこもかしこも人手不足っちゃしょーがないけども」 さて、と呟いて、魔戒筆を一振りする。頼まれていた武器の修繕の、最後のひと仕上げを…

【牙狼SS】血錆の兇刃:閑話~律~【金鋼騎士篇】

「…よし」 紺色のコートに袖を通す。数日振りに羽織るそれは少し重く感じ…それが使命の重たささ、などと律は気障りに心の中で呟いてみた。 「おや、体はもういいんですかい? 若旦那」 実家の造り酒屋で杜氏を任されている次郎之介が声をかける。 「ああ。ど…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン3【緑青騎士篇】

南の神官・スーニャより、緑青騎士討伐の命を受けてから、一夜が明けた。 斬と紅牙は、それぞれ手分けしてゲートの破壊へと赴く。 これは日課であると同時に、ゲートを回収しているであろう緑青騎士を見つけるためのものだ。 「これで4つ目か……ヴィスタ、周…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン2【緑青騎士篇】

分厚い雲に覆われ、文字通りの闇夜が訪れる。 南の管轄のはずれ、建設途中で放棄されたビルの中に、彼はいた。 「…さて、これぐらいあれば当分は遊べるか?」 低く呟いて、黒衣の男―――緑青騎士・咎牙が集めたオブジェの群れを一瞥する。 その全てに<陰我>…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン1【緑青騎士篇】

太陽が真上から照りつける昼時。人気のない裏路地に転がったトーテムポールのようなものに、斧の刃が重々しく振り下ろされる。 …が、深々と食い込んだものの、斬られるでもなく折られるでもなく、刃が離れた後は、傷一つ着いていなかった。 「…ふぅ」 <ゲー…

【牙狼SS】血錆の兇刃:プロローグ【緑青騎士篇】

闇夜に響く、強烈な衝撃音。 そして、わずかの後、地面に叩きつけられる肉体。 「がはあっ!!?」 紺色のコートを血にぬらし、青年が地面をのた打ち回る。 『律…律! しっかりしなさい!!』 彼の右耳のイヤリングが叱咤するが、うめき声はその返答にはなら…

【牙狼SS】虹彩の双翼:後編【水晶騎士篇】

深夜の病院。 その中の一室が―――爆ぜた。 弾けたように割られた窓ガラスと同時に、黒い影が飛び出し、次いで白いコートが二つ、空を舞う。 ひとつは冴島鋼牙の。 もうひとつは僕……雪野透の。 「…くっ、間に合わなかったか」 空を走る中、ちらりと病室を一瞥…

【牙狼SS】虹彩の双翼:前編【水晶騎士篇】

―――どこまでも、底抜けに青い空。 僕は、空を見る。 空を通して、僕は……世界を見ているんだ。 『…ねぇ』 行きかう雲に思いを馳せる。 あの雲はどこからきて、どこへ行くのだろうか。 『……ねぇ』 嗚呼、だだっ広い世界に反して、僕と言う存在の、なんとちっぽ…

【牙狼SS】流麗の楽師:後編【瑪瑙騎士篇】

「はあっ!」 気合一閃、白夜槍が空を切り、二つに分かたれたカラクリの片割れを襲う。 が、ぐねぐねと軟体動物のように動く魔獣は、打突の連撃を悉く交わした。 「はっ、ほっ、やっ、とっととと!」 一方、アゲハは防戦を余儀なくされていた。矢継ぎ早に繰…

【牙狼SS】流麗の楽師:前編【瑪瑙騎士篇】

「…おい、御堂光(みどう・ひかり)」 背中越しにぶっきらぼうに呼ばれる。閑岱ではそうそう聞かない若い男性の声、そして、“彼”のことをフルネームで呼ぶ人物は限られる。 「……あによ、翼」 「ついてこい」 山刀 翼(やまがたな・つばさ)……閑岱を守る白夜…