炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【二次創作】GARO/異聞譚

【牙狼SS】酒呑の豪腕:後編【金鋼騎士篇】

狼の面の、真紅の瞳がらんらんと光る。 「だらっしゃあああ!」 金剛棍が唸りを上げ、ホラーへと突き進む。 『……いつもながら酒入っただけでこの変わりようって怖いわよねぇ…』 「耳元でうるせー!」 呟いたカルマよりもはるかに大きな声で律が怒鳴った。 そ…

【牙狼SS】酒呑の豪腕:前編【金鋼騎士篇】

―――鬼塚酒造。 数多くの酒豪に好まれる地酒を創り続けて数十年の、老舗中の老舗である。 日本酒をはじめ、焼酎や果実酒など、地元で取れた材料をふんだんに使った酒が魅力であるが…… 一般人には知られていない、隠しメニューともいえるべきものが存在してい…

紅蓮騎士篇:総あとがき

総あとがき~戦友(とも)に捧ぐ凱歌~ 牙狼剣は、時間さえ斬り裂く――― 小説版で、この言葉を初めて目にしたとき。 それなら、斬が振るう紅蓮斧は何を切り裂けるのだろう? その答えを、ずっと追っていた。 シーン15を書き終えたとき… 紅蓮斧が斬り裂いた…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:エピローグ“月夜”【紅蓮騎士篇・完】

エピローグ:弐“月夜” 「ふぃぃ~…悪いな。奢ってもらってよ」 「…本当に悪いと思ってるヤツは、浴びるほど呑まないと思うがな」 夜の繁華街を、紅牙と天翔、そして斬が並び歩く。 そのいでたちは少々奇妙ながら、すれ違う人々は振り返ることなく過ぎていく…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:エピローグ“約束”【紅蓮騎士篇】

エピローグ“約束” ―――南の番犬所での決戦から、一月が経過した。 エウルディーテの魂と、バイアラァスの毒と病から解き放たれたかなみは、多少衰弱してはいたものの、心身ともに異常なく、すぐに元気を取り戻した。 凍りついた7年の時を取り戻すように、斬…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン15【紅蓮騎士篇】

シーン15~灼熱なる想い/真なる烈火炎装~ 小さく破裂音が響く。 一呼吸おいて、ベガの左腕を中心に紅蓮の炎が一気に噴出した。 「ぐぅ…っ」 魔導火の炎は、時に蛇のようにのた打ち回り、時に嵐の如く荒れ狂ったようにベガの鎧を駆け巡っていく。 「すご……

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン14【紅蓮騎士篇】

シーン14~紅蓮騎士~ “これから教えるのは、紅蓮騎士に伝わる最大にして最強の奥義だ” “だが、この技は初代ベガ以来、誰一人として会得することは出来なかったという” “もちろん、この私もだ” “迂闊に使おうとして命を落とした者も少なくないと聞く” “諸…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン13【紅蓮騎士篇】

シーン13~届かぬ力、届かぬ想い~ 「おおおおおおおおりゃああああああっ!!!」 朱狼の十文字槍が空を裂き、無数に襲い来る触手を文字通り薙ぎ払う。 「そらぁっ!」 討ちもらした触手は天翔が放つ光術で弾き、僅かながら中枢に通ずる路が顕われた。 「…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン12【紅蓮騎士篇】

シーン12~並び立つ紅と朱~ 「ぐぅ…っ!」 苦悶の表情を浮かべながら、斬は握り締めていた魔導火のライターを灯し、爪のついた触手を焼こうとする。が、爪は瞬時に引き抜かれ、体のバランスを崩した斬は、続いて飛んできた触手を防ぎきれず、殴り飛ばされ…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン11【紅蓮騎士篇】

シーン11~蠢く殺意~ エウルディーテ…かなみの体を中心に、禍々しい負のオーラが衝撃波を生み出す。 「ぐっ…!」 体を意識を吹き飛ばされそうになり、必死に持ちこたえる斬の目に、想いを寄せる少女が見るも無残な姿に変わっていく光景が映る。 「かな…み…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン10【紅蓮騎士篇】

シーン10~その愛と狂気と~ 「あ~、やっと帰ってきたっ」 南の番犬所につくなり、エウルディーテが口を尖らせる。いつもどおりの笑顔だが、目が笑っていない。 「…アレ、使おうとしたでしょ」 少女の声が1オクターブ下がった。同時に、番犬所の空気が冷…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン9【紅蓮騎士篇】

シーン9~手掛り~ 「知らぬな」 北の番犬所。その中央の神殿に仁王立ちする神官は、斬の問いをあっさりと切り捨てた。 「…そうか」 『いや、ちょっと…あっさり納得してどーするのよ斬!?』 ひとりヴィスタが大声を張り上げてツッコミを入れる。 『神官も…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン8【紅蓮騎士篇】

シーン8~贄/Scapegoat~ “―――依代を見つけるのはすぐじゃなくてもいいわ” “何事にも最適な時というものはあるの。その血清が、最も効力を発揮するのは新月の晩” “つまり、この娘を癒すためにはその時が一番適しているのよ” “そして、次の新月まで…あと3…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン7【紅蓮騎士篇】

シーン7~かこ と いま ―――遠い日の記憶。 “それ”は、突如現れた。 仲の良かった幼なじみが、怪物に襲われた。 行くなと言われた、夜の森に出て。 魔戒騎士である父親が経営している孤児院にいた、同い年の少女。冷やかされながらも、僕たちはいつも一緒に…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン6【紅蓮騎士篇】

シーン6~帰還、そして~ ―――地上とは隔絶された異空間。そこに設けられた細く長い廊下を、コツ、コツと乾いた足音が進んでいく。 真っ直ぐな視線を進行方向にのみ向け、斬はひとり…正確にはヴィスタと“ふたり”だが…拠点である南の番犬所へと急ぐ。 「…ん?…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン5【紅蓮騎士篇】

シーン5~目的~ 着地と同時に、鎧の戒めを解く。その顔には、僅かな疲れと確かな充実が混在していた。 『斬、血は採れていて?』 「ああ…大丈夫だ」 手にした瓶をヴィスタに見せる。 『さっきのホラーの血…? 何に使うの?』 「“染まりし者”でも作ろうって…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン4【紅蓮騎士篇】

シーン4~吼えよ紅牙~ ―――ギャシャァァァァァァ! ホラーが叫び、その口から歯を数十個ほど飛ばす。宙を舞う歯はむくむくと変化し、小さな素体ホラーのような姿をとった。 『“ビルズス”よ、気をつけて!』 鎧を纏ったことで手首に移動したヴィスタの声が跳…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン3【紅蓮騎士篇】

シーン3~毒と病~ ドクン…! 「「!!!」」 ホラーの気配が瞬時に肥大化、凶悪化した。その波動にアテられ、斬は一瞬足を緩めた。 『斬…!?』 「…大丈夫だ」 額にじわりと脂汗が浮かぶ。コートの袖でそれを拭い、再び足を速める。 「ただのホラーにしち…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン2【紅蓮騎士篇】

シーン2~ミッドナイト・ストリート~ 「このあたり…らしいんだが」 斬は、西の神官に教えてもらった場所に来ていた。 グレーのオーバーコートという、いささか奇抜なそのスタイルはさぞかし道往く人々の視線を集めるだろう…と思いきや、実際はそうでもない…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン1【紅蓮騎士篇】

シーン1~西の番犬所~ 「…誰です?」 薄暗い室内。ぼんやりと舞台のように浮かぶ祭壇に、斬より少々年上くらいの容姿の男性が立つ。西の番犬所の神官である。 「南の番犬所に属する、焔群斬。ぶしつけな訪問を、先ずは謝罪する」 つかつかと歩み寄り、立ち…

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:プロローグ【紅蓮騎士篇】

2007年・5月 牙狼をこよなく愛する、わが戦友(とも)に捧ぐ。 ---------------------------------------------- プロローグ~境界にて~ 黒色と混沌が混じりあい、一寸先の視界すら確保できない深淵の…