シーン13~届かぬ力、届かぬ想い~
「おおおおおおおおりゃああああああっ!!!」
朱狼の十文字槍が空を裂き、無数に襲い来る触手を文字通り薙ぎ払う。
「そらぁっ!」
討ちもらした触手は天翔が放つ光術で弾き、僅かながら中枢に通ずる路が顕われた。
「往け、紅蓮のぉッ!!!」
「はああああああっ!!!」
ベガの足が地を蹴り、紅い火花が散る。飛び込んだ先には、ホラーの肉体に隠されたかなみの体があるはずだった。
「取り戻させて…もらうっ!」
振り上げた紅蓮斧が閃いた刹那―――!
ガギィッ!
「…っ何!?」
その刃は突如として顕れた強固な鎧に阻まれた。
『くっ…なんて堅さなの?』
間合いをとりつつ着地する。間髪いれずに走る触手を斧で断ち斬り、斬が仮面の下で歯噛みした。
「にゃろぉ…。天翔、アレやるぞ!」
「はいよ!」
朱狼の合図で、天翔が魔導筆で十字を描く。その軌跡が朱狼の槍に宿り、巨大な光の刃を生み出した。
「届けよ…うおらぁっ!」
轟音とともに振り回した槍の穂先が巨大ホラーを捉える。ガードする触手を苦も無く貫き、その刃は中枢まで一直線に駆け抜ける。
しかし…
「んぐっ!」
槍の疾走は寸前で止められた。赤黒く毒々しい装甲は、キズひとつ負ってはいない。
『むぅ…ソウルメタルを通さぬとは…』
シヴァが苦々しく呟いた。
「下がれ、暁ッ!」
斬の声に紅牙が振り返る。
「…来い、“火影(ほかげ)”…!」
低く呟いたベガの足元がぼうっと光り、嘶(いなな)きとともに紅蓮色の鎧を纏った巨大な馬が現出する。
「こいつぁ…魔導馬か!?」
その場を離れながら紅牙が声を上げた。
「はっ!」
ベガの腕が手綱を引く。“火影”なる魔導馬が足を雄々しく持ち上げ…蹄を地面に叩きつけた。
力強い音があたりを支配し、その音は紅蓮斧に新たな力を与え…その刃を巨きく、強くする。
「今度こそ…届かせる!」
巨大な紅蓮斧…斬馬大紅蓮斧を奮い、再び手綱を握り締めるベガ。斬の意思に呼応するかのように火影が地を蹴り、ホラーに跳びかかる。
「うおおおおおおおおおっ!!!」
火影の蹄がホラーの巨体を蹴飛ばし、更に跳躍する。火影から飛びあがり、ベガは渾身の力を以って斬馬大紅蓮斧を振り下ろす!
「いけぇっ!」
「届いてっ!」
紅牙の、天翔の声が斬の背中を押す。剛なる刃がエウルディーテの装甲に振れ、神殿内の空気がビリビリと震えた。
―――ピシィッ
何かが軋み、ひび割れた音がした。
「!」
『いける!?』
―――やらせないわよ。
凍てつくような声が響く。
刹那、ドン! と衝撃がベガの鎧を揺らした。
「ぐっ!?」
まず弾き飛ばされたのは、紅蓮斧だった。
「何っ!?」
―――斬は死ぬの。私が殺すの。抵抗なんかしちゃだめだよ…
「紅蓮の、かわせぇ!」
紅牙の声が飛ぶ前に、鋭利な刃物と化した触手がベガを切り裂いた。
吹っ飛ぶベガの体を火影の鞍が受け止めた。衝撃で鎧が還り、斬の素顔を露にする。
「がはっ」
吐いた血が床を濡らした。
「そんな…魔導馬の力を借りても駄目だっての!?」
天翔の声に焦りの色が混じる。
『万策…尽きたかの』
「…クソッタレ」
シヴァの声に、紅牙が舌打ちをする。
「…いや、まだだ」
うめき声混じりに、それでもしっかりとした口調で斬が言った。
「今の一発で思い出した…。俺たち紅蓮騎士の系譜に伝わる、最強無比の秘奥義をな…!」
-つづく-
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見出せるか勝機!?
風雲急を告げるファイナルバトル、目が離せねぇ!
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=homurabe
↑web拍手だ。コメントもらえると作者がハッスルらしいから、まぁ頼むぜ(ザルバ・談)