炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:エピローグ“約束”【紅蓮騎士篇】

エピローグ“約束”




 ―――南の番犬所での決戦から、一月が経過した。

 エウルディーテの魂と、バイアラァスの毒と病から解き放たれたかなみは、多少衰弱してはいたものの、心身ともに異常なく、すぐに元気を取り戻した。

 凍りついた7年の時を取り戻すように、斬はかなみに色々なことを話し、かなみは時に驚き、時に微笑みながらそれを聞いた。

 彼を良く知る人物が見れば、きっと気付いていただろう。
 この7年で、彼がもっとも穏やかな顔をしていたことに。


 そして…




「…ここまで連れてきてなんだけど、本当にいいのか?」
「うんっ」
 魔戒法師の聖地、閑岱に、斬とかなみの姿があった。

  “わたし、魔戒法師になりたい”

 斬の話を聴いていたかなみがそう言ったのは、3日ほど前のことだった。
 当然、斬は反対した。が、頑として譲らないかなみに根負けし、閑岱の地へと案内したのだ。


「この間も言ったでしょ。わたし、斬くんともう離れたくないの。一番近くにいたいの。だから…」
 魔戒騎士の隣に立てる場所。それが彼女の目指す、魔戒法師という道だった。
「だけど…」
「危険だって言うんなら、それは違うよ」
 言いかけた言葉をさえぎられ、口篭る斬。
「だって…斬くんが必ず守ってくれるでしょ?」
 ふんわりと微笑むかなみに、斬は何も言えなかった。
『…あーあ、あっついあっつい。聞いてられないわ~』
 と、かなみの髪飾りから丸っこい声が聞こえる。
『エウルディーテの言う通りね。アテられてる私達の身にもなってもらいたいわ』
 その声にヴィスタも大げさに溜息をついてそう言った。


 かなみが解き放たれた時、消滅したと思われていたエウルディーテは、かなみがお守りとして着けていたソウルメタル製の鈴に偶然憑依し、生き永らえていた。

 その背信行為により、一度は消滅されかかった彼女を救ったのは、誰あろうかなみだった。
 “理由はどうあれ、自分という命を守ってくれたから”
 かなみは、そう言ってエウルディーテの宿った鈴を撫でた。

 結局、エウルディーテはその鈴に完全に封印されることとなり、かなみのたっての希望で彼女のパートナーとなって、現在に至っている。


「しっかし、ここまで心配性な魔戒騎士なんて見たこと無いよ」
 飛んできた呆れ声に斬が視線を向ける。含み笑いを浮かべながら、長身の女性がこちらに歩いてきた。
「安心しな。あんたの想い人は私たちで立派な魔戒法師に育て上げてやるから」
 邪美と名乗ったその魔戒法師が、不敵な笑みを浮かべた。
『そーよ。この私もついてるんだから。だいじょーぶだって♪』
「むしろそれが不安だ」
『どーゆー意味よっ!』
 怒るエウルディーテに、周囲からどっと笑い声があがった。

「…まぁ、一度こうと決めたら譲らないのは、かなみのいいところでもあるからな」
 斬が腰を下ろして、かなみに視線を合わせる。

「修業が終わったら、迎えに来る」
 どれくらいかかるのか、今はまだ分からないけど。
 ここでの別れは、あの時とは違うから。
「うん。約束」
 かなみが瞳を閉じる。斬は少し躊躇った後、額にそっと口付けた。
「…もぉっ」
 と、かなみが不満気な声を漏らす。
「“約束”は、こっちでしょ」
 そう言いながら、斬の顔を抑え、その唇にキスをした。
「…ね?」
「……」
 耳まで真っ赤になって、斬がうつむく。

『『…コホン』』

 ヴィスタとエウルディーテが、同時に咳払いした。




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 というわけで、本編のエピローグです。
 次回、もうひとつのエピローグがありますので、お楽しみに。


 ところで…
 折角の閑岱のシーンなのに、翼やりんはどうした!
 …とお嘆きのファンの方々。ごめんなさい(超平伏
 プロット段階では居たんですが、なんか蛇足っぽくなったのでカットしました(爆

 いずれかなみメインの短編を書こうと思いますので、そのときまでカンベンしてやってくださいまし。
 …迂闊に自分の首を絞める発言をしたような気がした。



 でもそんなの関係ねぇ!(ぉ




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