炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼SS】紅蓮の剛刃:シーン2【紅蓮騎士篇】

シーン2~ミッドナイト・ストリート~


「このあたり…らしいんだが」
 斬は、西の神官に教えてもらった場所に来ていた。
 グレーのオーバーコートという、いささか奇抜なそのスタイルはさぞかし道往く人々の視線を集めるだろう…と思いきや、実際はそうでもない。
 それだけ、今日びの人間が自身以外のことに無関心になっているのだろうか。
「…それにしても」
 斬が顔をしかめる。
「なんて甘ったるい匂いだ」
 通称“甘味通り”と呼ばれるこのエリアは、その名の通り、片っ端からスイーツの店が軒を連ねる。あたりから様々な香りが混ざり合い、さながら混沌と化している。
『そういえば斬、あなた甘いもの苦手だったわね』
 ヴィスタが思いだしたように言う。
「甘い匂いは…“あいつ”を思い出すからな」
 憮然とした表情で、斬がつぶやいた。
『……』
 ヴィスタはそれ以上何も言わず、斬の手の中で小さく溜息をついた。


「―――!」
『ヤツね、近いわ』
 二人が同時にホラーの出現を察知する。斬の体が弾かれるように跳び上がった。
『ちょっと! ゼロとかいう魔戒騎士との合流はどうするの!?』
「後だ! それに、ヤツも魔戒騎士の端くれならこの気配に気付いているはずだしな」

 街を疾走する斬。その背後から、バイクのエンジン音が響く。
 その音はやがて斬に近づき、並んだ。
「…ん? 見かけない顔だなァ。管轄外の魔戒騎士が何の用だい?」
 バイクに跨る青年が軽口を叩いた。銀牙騎士・絶狼(ゼロ)こと、鈴邑零だ。
「西の神官から許可は得ている。…あんた宛の指令所も預かっているぞ」
 赤色の封筒を灼く。魔導火に魔導文字がゆらめき、零の目の前に浮かび上がった。
「ふぅん。オレはあんたのお目付け役ってことか」
「そう捉えてもらって構わない」
 淡々と告げる斬の姿に、零はやれやれと肩を竦めて見せた。


  -つづく-


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 西の管轄にそんな街があるのかどうか知らんけどね(ぇ

 ところで、西というだけあって、関西方面なんじゃないか? とか今思いました(ぉ
 む、だとしたら食い倒れの街のこと。あってもおかしくないな(いやいやいやいや