シーン1~西の番犬所~
「…誰です?」
薄暗い室内。ぼんやりと舞台のように浮かぶ祭壇に、斬より少々年上くらいの容姿の男性が立つ。西の番犬所の神官である。
「南の番犬所に属する、焔群斬。ぶしつけな訪問を、先ずは謝罪する」
つかつかと歩み寄り、立ち止まると同時に深々と頭を下げる斬。
「ほう、“紅蓮騎士”の系譜の者ですね。…用件を聞きましょうか」
神官の言葉に、斬はかしこまって腰を落とした。
「先般、西の管轄内に逃げ込んだホラー、この俺に討たせて頂きたく、西の管轄内での行動の許可をもらいたい」
頭を下げながらも、ハキハキと告げる斬の姿に、神官は軽く頷いた。
「いいでしょう。…ただし」
「?」
「単独行動は許されません。よって、西の管轄の魔戒騎士・絶狼(ゼロ)と行動をともにしなさい」
「……」
「不服ですか?」
正直、不服ではあった。ひとりで動くことを善しとしていた斬にとっては、厄介な命令である。
『…斬』
「…わかり、ました」
ヴィスタに促され、不承不承ながらも肯定の意思を示した。
「では、ゼロを紹介…したいところではあるのですが…」
言葉を濁す神官に訝しげな視線を向ける斬。
「あれはなかなか番犬所に寄り付かないものでしてね。…もっとも、東の管轄も掛け持っていますから、仕方の無い、といえばそれまでなのですが」
「はぁ…」
そういえば聞いた事がある。西と東の管轄を受け持つという魔戒騎士の話を斬は思い出した。
「まぁ、おそらくいつもの場所にいるのでしょうけれど。…申し訳ないが、そちらから合流をしてもらいましょう」
「仕方ないな…分かりました。では、その場所とやらを教えてもらいましょうか?」
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「…へぁっくし!」
『どうしたのゼロ、風邪でもひいた?』
「いや、誰かが俺の噂でもしてるんだろ」
鼻をこすりながら、ゼロ…涼邑零は今日20個目のシュークリームに手を伸ばした。
-つづく-
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西の神官って、TVシリーズでは第二十三話「心滅」に、しかも1シーンしか登場して無いから、いまいちキャラクターが掴みにくいんだよなァ…(トオイメ
斬本人や「紅蓮騎士」、ヴィスタの紹介はまたおいおいってことで。