炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン3【緑青騎士篇】

 南の神官・スーニャより、緑青騎士討伐の命を受けてから、一夜が明けた。

 斬と紅牙は、それぞれ手分けしてゲートの破壊へと赴く。
 これは日課であると同時に、ゲートを回収しているであろう緑青騎士を見つけるためのものだ。

「これで4つ目か……ヴィスタ、周囲のゲートの状況は?」
『今のところ変化なしね。もっとも、今のこの場所だと、どこから回収されても追いつけないでしょうけど』
「わかってるよ。次へ急ごう」

 うなづいて、斬は魔界道を介し、次なるゲートの破壊へと急いだ。

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 太陽が真上に昇る頃、割り当てられたゲートの破壊を終えた斬は、一旦自宅である「紅葉の家」へと戻る。
 同じくゲート破壊に向かっていた紅牙と、別行動で緑青騎士の捜索を行っていたあかねと落ち合うためだ。

「お疲れ様、斬さん」
「遅かったな」

 グラウンドで子供達の相手をしていた二人に声をかけられる。

「ああ、最後につぶしたゲートの付近でヴィスタが妙な気配を感じたらしいんだが…」
『すぐに途絶えちゃってね。で、しばらく周囲を探ってもらってたの」

 結局収穫は無かったんだがな、と苦笑して、斬は紅牙とあかねに首尾をたずねる。

「こっちも似たようなもんだな。ゲートが消えたわけでもなし。怪しい人影とかも見なかったしな」
「私も似たようなものね。とりあえず、怪しそうなところ片っ端から探し回ってみたんだけど」

 紅牙がため息混じりに呟き、あかねも肩をすくめて、芳しくない結果に終わったことを伝えた。

『まぁ、奴とて魔戒騎士よ。昼間にわざわざ目立つこともすまい』
『気配のかけらも出さないってことは、どこかで“死んでる”可能性も考えられるわね。その間は結界を張ってるから、私達でも探知は難しいわ』

 ここで言う“死”は、単純に死亡のことを指しているわけではない。魔戒騎士は、パートナーたる魔導具…すなわちホラーに自らの命を与えるため、一月に一度“死”ぬのだ。

 魔導具たちの助言に、斬が腕組みをして唸る。

「となると…やはり夜を待つしかないか…」

 ホラーと戦うことを主とするなら、ゲートの破壊をしに昼から行動することはまずありえない。
 必然的に陰我が活性化し、ホラーが現出する夜が彼の舞台になる。

「ま、そうなるわな。できりゃその前に見つけときたかったが…」
「仕方ないさ。後でもう一度探索に回ろう」

 その前に腹ごしらえだ。と言って、紅牙とあかねを「紅葉の家」に招き入れる。

 厨房からは子供達の声と、香辛料の香りがした。

「お、今日はカレーか」
 紅牙がにんまりと笑った。


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「そう言えば」

 カレーをほおばりながら、斬の父・刃が呟く。

「北と東、それと西の管轄から、助っ人が来ると聞いたぞ」
「助っ人?」
 うむ、とうなづく刃。

「神官の配慮だろう。緑青騎士のうわさとその実力のほどは現役時代、私も聞いたことがある。お前達の力も知らないわけじゃないが……如何せん若すぎる帰来がある。騎士としての経験が長い分、緑青騎士のほうが数段有利だからな」

 流石に年長者の言葉には重みがある。三人の若き騎士はそろってため息をついた。

「ところで、その助っ人ってのは一体誰何なんです?」
「うむ、私も詳しくは聞いていないのだが…」

 スプーンをカレー皿に滑り込ませながら、刃の目が宙を泳いだ。

「……確か、一人は金剛騎士だとか」


   -つづく-


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 早くも律っちゃん復活フラグw(ぇ

 さて、次回からは助っ人参戦の3名のミニエピソード。しばし本編からは離れます。

 べっ、別に本編の展開が思いつかなくて手詰まってるわけじゃないんだからね!?(ツン