「はぁ…はぁ…」
ベースタイタンを飛び出し、現場へと走るミライの姿があった。
現場となっている山間部は遠く、乗り物を有していない彼にとっては長い道のりとなりそうであった。
「急がなきゃ……」
失ったらしい記憶の根幹が、危険を発しているのが分かる。ただ、それがなんなのかまでははっきりしなかった。
「カイトさん……みなさん……無事でいてください…!」
駆ける足に力を込め、ミライが走る速度を上げた。
*
「グランゴン、止まりません!」
「ラゴラスもダメだ!」
「ラゴラスもダメだ!」
ダッシュバード両機からの通信を受け、ヒジカタが顔をしかめる。見れば自分の位置からでも、既に2台怪獣の姿が視認できるところにまできていた。
「仕方が無い。呼び寄せているのがアンノウンとはいえ、ラゴラスとグランゴンを鉢合わせさせるわけにはいかん。各機、グランゴンに攻撃を集中させるぞ!」
「ヤツは前にも倒したことがある! 冷凍弾で粉々にしてやるぜ!」
「今回は近くに火山も無いかラ、復活の心配もないハズだヨ!」
「今回は近くに火山も無いかラ、復活の心配もないハズだヨ!」
2号機のメインパイロットであるコバが、操縦桿のトリガーを引く。
ミサイルランチャーから冷凍弾が射出され、その弾頭が狙い違わずグランゴンを狙う。
が、それがグランゴンの巨体に着弾することは無かった。
「なに!?」
アンノウンが頭部から光線を放ち、冷凍弾を撃ち落したのだ。
「グランゴンをかばった…?」
唖然と呟くカイトの眼前で、アンノウンが跳躍する。背中の器官が一瞬激しく震えたかと思うと、それは大きく広がり―――
「!!?」
着地地点にいたグランゴンを、“それ”で一息に包み込んだ。
「な、何をしているんだ…あれは…?」
絶句するDASHの面々を尻目に、広げた翼状の器官は元の大きさに戻り、その場にいたはずのグランゴンは、影も形もなくなっていた。
「ま、まさかあの怪獣……」
「グランゴンを……喰ったのか!?」
「グランゴンを……喰ったのか!?」
何事も無かったかのようにたたずむアンノウン。と、それがくるりと回れ右し、今度はその標的をラゴラスに向けた。
再び翼に似た器官を広ると、こんどはその内側から無数の触手が伸び、ラゴラスの四肢を絡めとった。
再び翼に似た器官を広ると、こんどはその内側から無数の触手が伸び、ラゴラスの四肢を絡めとった。
「なんなんだ、あの怪獣は…」
触手がわななき、掃除機のコードリールのように一気に体に戻っていく。それに絡めとられたラゴラスは、なすすべも無くアンノウンのそばまでその身をもっていかれ……
触手がわななき、掃除機のコードリールのように一気に体に戻っていく。それに絡めとられたラゴラスは、なすすべも無くアンノウンのそばまでその身をもっていかれ……
グランゴンのときと同様、背中の器官に、一瞬のうちに“喰われて”しまった。
「……!?」
背中の器官を元に戻すと、ゲップのような低い音が怪獣のうちから響く。
と、その全身がぞわぞわと蠢き、外観が見る間に変わっていった。
と、その全身がぞわぞわと蠢き、外観が見る間に変わっていった。
「今度は何だ!?」
「姿が…変わっていくヨ!?」
「姿が…変わっていくヨ!?」
背部にはグランゴンに見られた赤い<マグマコア>を有した瘤が現れ、頭部はラゴラスに似た形状へと変化した。
『怪獣から高エネルギー反応』
無線越しにエリーの淡々とした声が響く。
無線越しにエリーの淡々とした声が響く。
「いかん、全機退避!」
3機が旋回した刹那、熱線と冷凍光線が瘤と頭部から上空に向けて放たれた。
「まさかあの怪獣…喰った怪獣の能力を身につけるって言うの?」
「なんてこった…いつぞやのラゴラスエヴォよかタチが悪ぃじゃねえか!」
「なんてこった…いつぞやのラゴラスエヴォよかタチが悪ぃじゃねえか!」
ミズキが驚愕し、コバが焦燥に歯噛みする。
「これは…かなりの強敵になるかもしれない……」
ポケットに忍ばせた<マックススパーク>に触れながら、カイトが呟く。ダッシュバードに乗り込んでいる今、うかつに変身することはできない。機体が撃墜でもされればだが、僚友が乗っていることもあり、無茶はできないのだ。
「どうすれば……」
キャノピー越しに怪獣をにらみつけた、その視線がふと、小さな影を捉えた。
「あれは……ミライくん?」
怪獣から少し離れた場所、登山道の入り口辺りに、息を切らせたユニフォーム姿のミライがいた。
怪獣から少し離れた場所、登山道の入り口辺りに、息を切らせたユニフォーム姿のミライがいた。
「なんでこんなところに…? いけない、逃げるんだ!」
思わず叫ぶが、上空からその声が届くことは無い。
「……思い、だした…!」
地上から怪獣を見上げ、ミライが声を上げる。
「そうだ、ボクはあの怪獣…いや、<超獣>を追っていたんだ…!」
蘇る記憶。
空を割って現れた、新たな<超獣>。
それは、かつて彼と仲間達を苦戦させた高次元捕食体・ボガールをベースにしたものであった。
それは、かつて彼と仲間達を苦戦させた高次元捕食体・ボガールをベースにしたものであった。
CREW GUYSとの共闘のさなか、背中の捕食機関に捕らえられた彼は、割れた空の中に引きずり込まれ……
「そうか、それでボクはこの“世界”へ……」
ひとりうなづき、ミライは改めて怪獣…否、超獣をにらみつける。
「今度こそ、あいつを倒す!」
ばっ、と左腕を構える。と、光とともに、腕に赤いブレスレットが現れた。
中央の球体に触れ、一気に擦る。輝きが増し、同時に力が、ミライの全身を駆け巡っていく。
中央の球体に触れ、一気に擦る。輝きが増し、同時に力が、ミライの全身を駆け巡っていく。
「メビウ――――――――――――――――――――――――――――スッ!!!」
掲げた拳から、正義の燐光が迸った。
-つづく-
--------------------------------
さて、と言うわけで今回の超獣紹介。
<捕食超獣・ボガールジェネ>
高次元捕食体・ボガール(厳密には亜種であるレッサーボガール)をベースに、カメレオンなどの捕食動物などと融合させた超獣。
その食欲・捕食能力ともにオリジナルを上回り、また、捕食した生物の特性を取り込み、自らの力にすることも可能。
「ジェネ」とは広食性動物の意を指す「ジェネラリスト」から。
高次元捕食体・ボガール(厳密には亜種であるレッサーボガール)をベースに、カメレオンなどの捕食動物などと融合させた超獣。
その食欲・捕食能力ともにオリジナルを上回り、また、捕食した生物の特性を取り込み、自らの力にすることも可能。
「ジェネ」とは広食性動物の意を指す「ジェネラリスト」から。
ちなみに、メビウス側の時間軸は30話~42話の間。この時点でメビウスの世界では、対ヤプール用メテオール「ディメンショナル・ディゾルバー」を用いて次元の扉を半永久的に閉じている(26話)はずなのですが…
なぜ再び空が割れ、なおかつメビウスがマックスの世界に飛ばされることになったのかは…今後明らかになる……ハズ。
なぜ再び空が割れ、なおかつメビウスがマックスの世界に飛ばされることになったのかは…今後明らかになる……ハズ。