未知なる秘宝・プレシャスを求め、かつて<不滅の牙>と呼ばれた男は、その大きすぎる冒険スピリッツを宇宙へと向けたのだ。
そして、彼の傍らには―――純粋な敬愛を、何時しか恋心へと変えていた、一人の女性の姿があった。
彼女の名は、西堀さくら。
彼にも内緒でゴーゴーボイジャーにもぐりこみ、宇宙のプレシャス探索任務に同行したさくら。
その胸中には、未知なるプレシャスへの純粋な興味以上に、隣で目を輝かせながらダイボイジャーの舵を取る、明石暁への想いでいっぱいであった。
その胸中には、未知なるプレシャスへの純粋な興味以上に、隣で目を輝かせながらダイボイジャーの舵を取る、明石暁への想いでいっぱいであった。
「……ふぅ」
コックピットからみえる無数の星を数えながら、さくらがため息をつく。
彼に想いを伝えると決め手から数ヶ月。その仲は一向に進展する気配も無かった。
いや、分かっているのだ。自分が動かなければ、あの朴念仁は気づきもしないことくらいは。
彼に想いを伝えると決め手から数ヶ月。その仲は一向に進展する気配も無かった。
いや、分かっているのだ。自分が動かなければ、あの朴念仁は気づきもしないことくらいは。
「でも、だからといって何をすればいいのか…」
彼女とて年頃ではある。が、生まれが財閥の令嬢、元陸自特殊部隊という背景は、彼女から色恋沙汰というものを思い切り遠ざけていた。
こういうとき、菜月やレオナ…彼女たちに相談をすべきであっただろうか……と思う。
少し考えて、あんまり立場はかわらなそうだ、という結論に至る。
少し考えて、あんまり立場はかわらなそうだ、という結論に至る。
いずれにせよ、冒険者は色恋沙汰には縁遠いのだ。
「……さくら、交代の時間だ……ん?」
背後の自動ドアーが開き、想い人がひょっこりと顔を出す。が、とうのさくらはそれに気づかず、ぼんやりとモニタを眺めていた。
「……おい」
「わひゃっ!?」
「わひゃっ!?」
急に頬に熱い感触が触れ、さくらの声が裏返る。驚いて振り返ると、少々呆れ顔の暁がいた。
「あ、いえ…ちょっと考え事を…」
覗き込む暁の顔を近くに感じ、自身の顔が熱くなるのを感じる。
「ん…?どうした、顔が赤いが、風邪でも引いたか?」
と呟きながら、おもむろに手をさくらの額に当てる。
と呟きながら、おもむろに手をさくらの額に当てる。
「…!」
見る間にさくらの顔が真っ赤になる。
「…うーん、熱は無いようだが……まぁ、もう交代の時間だ。しばらく休んでろ」
*
48時間の休息の後、再び暁との交代のためにコックピットへと向かう。
「明石さん……交代の時か…」
「明石さん……交代の時か…」
声をかけようとしたその口が止まる。
「……」
暁が、シートに背を預けて眠っていた。
「……ふぅ」
思わずため息がこぼれる。
なれない宇宙での任務。いかな<不滅の牙>とて疲れは溜まるであろう。
それを口にしてくれないことに、少し寂しく思うさくら。
なれない宇宙での任務。いかな<不滅の牙>とて疲れは溜まるであろう。
それを口にしてくれないことに、少し寂しく思うさくら。
(そりゃ…パートナーとして、心配をかけたくないとか思ってるのかもしれませんけど)
それより、もう一歩先へ進みたいと願う彼女にとって、それは無用の優しさといえた。
「……むにゃ」
不意に暁の体が動き、さくらの手をとる。
「え?」
何事、と思ういとまもなく、ぐいと引っ張り込まれ……彼に抱きかかえられるような体勢になってしまった。
「え? え? えええ!!?」
突然の出来事に、恥ずかしさとうれしさと、なんだかよく分からない感情がぐるぐると渦を巻く。
「あ……明石……さん」
硬直していた自分の体が、少しずつ和らいでいくのが分かる。伝わる体温が、鼓動が……敬愛し、それ以上に想いを抱く人の全てが、伝わってくるようだった。
「……む?」
と、暁の意識が覚醒する。
「……あ」
「………む?」
「………む?」
僅かの沈黙。暁が、現状を確認し、その顔が一気に色を失った。
「す、すまん!」
ばっと腕を放し、さくらの体を引き離す。
「寝ぼけて…いたようだ。いや、悪かった。少し疲れていたらしい。…あっと、もうこんな時間か。じゃ、交代だな」
さくらに声をかける余地を与えず、逃げるようにコックピットを去る暁。
あとには、ぽつんとひとりさくらだけが残された。
あとには、ぽつんとひとりさくらだけが残された。
*
「……もうすぐ、交代の時間…か」
腕時計に目をやり、ため息を一つつくさくら。
あれから3日ほど経っていたが、交代の引継ぎも淡々と行われ、必要以上の会話を交わすことも無かった。
こぼれるため息も、いつも異常に陰鬱だ。
あれから3日ほど経っていたが、交代の引継ぎも淡々と行われ、必要以上の会話を交わすことも無かった。
こぼれるため息も、いつも異常に陰鬱だ。
「……いけない、このままじゃ」
動かなければ、何も変わらない。むしろ、後退は必至だ。
「なんとか、しないと」
「…何をだ?」
意を決した刹那、背後から暁が声をかけた。
「!!」
「あ、すまん…驚かせるつもりは無かったんだが」
「あ、すまん…驚かせるつもりは無かったんだが」
ばつが悪そうに視線をそらす暁。
「…あ、いえ。勝手に驚いただけですから」
「そうか」
「そうか」
会話が途切れる。
「あーっと…後退するぞ。引継ぎを」
「あ…はい」
「あ…はい」
また、淡々とした空気が二人の間を流れる。
「……なぁ、さくら」
「は、はい」
「は、はい」
と、それを断ち切ったのは暁のほうであった。
「この間は……その、悪かったな」
「いえ……」
「いえ……」
ここだ、ここで踏み出さないと。
さくらが、息を呑む。
さくらが、息を呑む。
「うれしかったです」
「…は?」
「あ、いや…その…変な意味じゃなくて」
「…は?」
「あ、いや…その…変な意味じゃなくて」
慌てるさくら。
「なんというか、頼ってもらえたって思えたんです」
「…?」
「…?」
訝しげな視線を向ける暁。
そんなことは…と言いかける暁であったが、心当たりを思い出して、口ごもる。
「まぁ、実際には頼ってもらえたのとは違いますけどね。ただ、明石さんのいろいろを、受け止められるように……私はなりたいんです」
そういう、関係に。
さくらの真摯な言葉を聴き、暁は大きく息を吐いた。
「……明石、さん?」
「すまん。こういうとき、どう応えていいか……わからない」
「すまん。こういうとき、どう応えていいか……わからない」
視線をそらした、その横顔は、耳まで真っ赤になっていた。
「……いいですよ。今は」
明確な一歩ではないだろうけれど。それでも、確実に進んでいるってことは、彼の反応を見れば明らかであった。
「明石さんが、明石さんの言葉で、応えてくれるのを……待ってます」
「……ああ。なるべく、待たせないようにする」
「期待してますよ?」
「……ああ。なるべく、待たせないようにする」
「期待してますよ?」
微苦笑するさくらに、暁も苦笑いを浮かべた。
「あ、そうだ」
「ん?」
「ん?」
さくらが、ちょっと恥ずかしそうに口を開く。
「今度から……“暁さん”って、呼んでいいですか?」
* * *
あれから、数週間が経過した。
順風満帆、ゴーゴーボイジャーは今日も道なき宇宙をゆく。
「あれが、次の目的地ですか?」
「ああ。<惑星イスラ>だ。先ほど、高いハザードレベルをあの星系で観測した。プレシャスが眠っている可能性がある」
「ああ。<惑星イスラ>だ。先ほど、高いハザードレベルをあの星系で観測した。プレシャスが眠っている可能性がある」
その表情は、宝物を手にした子供そのもので、いつもの暁からは想像もつかないほどに無邪気であった。
「……なんか、妬けちゃいますね」
「ん?」
「ん?」
少しだけ頬を膨らませて、さくらが呟く。
「私より、プレシャスに心を躍らせてるみたいです」
「…それは、否定しないな」
「…それは、否定しないな」
そうですか、とさめた口調でさくらが言うと、その頭を、ぽんと暁のてが軽く撫でた。
「だが、お前と一緒にいるときは、わくわくというより……ドキドキするな」
「……! そ、そんなこと真顔で言わないでください!」
「……! そ、そんなこと真顔で言わないでください!」
顔を真っ赤にするさくらに、暁はからからと笑う。
「さぁ、もうすぐ到着だ。ミッションスタート……アタック!」
指を鳴らし、アクセルを一気に踏む。
ネオパラレルエンジンが、二人のボウケンスピリッツを糧に、フル回転を始めた。
-To be continued GEKIRANGER VS BOUKENGER-
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ネタは前からあったけど、書くにいたらなかったのを久しぶりに掘り起こしてみた。
恋愛ベタなさくらとボウケンバカな朴念仁の暁の恋の行方は…
いやもう、ほんとにどーなってるんでしょうねw