炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【レジェンド大戦】Episode:BOUKENGER



 宇宙という海原を往く、さまざまなスペース・シップ。 
 何度も繰り返された技術革新は、船の形状を多種多様に進化させた。 

 SF映画に出てきそうな円盤型はもちろん、海に浮かべても違和感がなさそうな帆船型や、艦船型まで。 

 そんなスペース・シップの一隻が、とある星を目指し、降り立った。 

 船の名は、<ゴーゴーボイジャー>。 
 その動力に、果て無き冒険心-ボウケンスピリッツ-を燃やす、冒険者たちの船である。 

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「お前さん、地球人かい?」 

 ボイジャーの乗組員が、情報収集に訪れたパブで声をかけられる。 

「そうだが……よくわかったな?」 
「昔の知人に、地球人と交流がある奴がいてな。……それより、こんな辺境でのんびりしてていいのかい?」 

 老齢らしい異星人の言葉に違和感を覚え、彼の座る席の隣に腰掛ける。バーテンに酒を頼み、それを勧めると、老異星人は小さく会釈してそれを飲み干した。 

「どういうことだ?」 
「おや、お前さん知らんかったのか……」 

 とつとつと語りだす異星人の言葉に、青年の表情がにわかに険しくなる。 
 がたん、と派手な音をたてて椅子から立ち上がると、わき目も振らずにパブを飛び出した。 

「さくら、俺だ。今すぐボイジャーの発進準備を。戻り次第すぐこの星を発つぞ!」 

 通信端末に怒鳴り込むような声でそう告げ、青年……<明石 暁>は仲間の待つ船へと急いだ。 




     BEGINNING to LEGENDWAR 
     Episode:BOUKENGER/未来への冒険 




 再び宇宙へと戻るゴーゴーボイジャー。その行き先は、出発地たる地球だ。 

「でも、本当なんでしょうか? そのザンギャックという宇宙帝国が……」 
「裏は取ってある」 

 ボイジャーの舵を握りながら問いかける暁のパートナー<西堀さくら>に、先ほどの星で入手した新聞を見せる。 

「宇宙帝国ザンギャック……その強大すぎる規模は、銀河連邦警察をもってしても全容の把握はできていないらしい。既にいくつもの星が、連中によって支配され、略奪されている。さくら、立ち寄った星のいくつかで、門前払いを食ったことがあっただろう?」 
「それって……」 

 得心のいったさくらに頷く暁。 

「どういう経緯で地球を狙うに至ったのかは皆目検討がつかないが……む?」 

 ふと、メインモニターの違和感に暁が眉根を寄せる。「どうしました?」と問うさくらに視線で応えると、その先では小規模な艦隊戦が繰り広げられていた。 

「あの艦隊は確か……」 

 視線を先ほどに新聞に向ける。馬を動力としたチャリオットの意匠を抱く特徴的なフォルムは、宇宙帝国ザンギャックの戦艦だ。 

「暁さん、あっちの赤いスペース・シップが……」 

 さくらの指差す方では、真紅のボディが眼にまぶしい帆船型の宇宙船が、砲撃で応戦をしていた。 

「……さくら、赤いほうに加勢するぞ」 
「えっ?」 

 何を根拠に、と問おうとするさくらに、暁は不敵な笑みを浮かべてみせる。 

冒険者の勘だ」 

 言うが早いか、ボイジャーのコントロールを自分の座るコックピットへと移し、アクセルを吹かせる。 

「超絶轟轟合体!」 


  -VOYAGER FORMATION- 


 炎神が雄たけびを上げ、超巨大戦艦が、人の形をとった。 


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 ダイボイジャーの拳の一撃が、ザンギャックの戦艦を打ち、撃破する。 

 ものの10分もしないうちに、5隻の艦隊はガレキと化していた。 

「ふぅ……」 

 コックピットで、暁が一息つく。ザンギャック側の戦力としては、おそらく平均的なものであろう戦艦の性能はかなり高く感じられた。 

(こんなものが大挙して地球に迫ってきたら……) 

 暁の背中を、厭な汗が伝った。 

「あ、暁さん。スペース・シップから通信が入ってます」 
「繋いでくれ」 

 通信プロトコルがノイズの中から信号をピックアップし、モニタへと繋ぐ。 

「!」 

 そこに映し出された人物が視界に飛び込んだ途端、暁は絶句した。 

「久しぶりだな、明石……いや、<ボウケンレッド>」 
アカレッド!?」 


    * 


「そうか、奴らが地球へ向かわないように戦ってくれていたのか……」 

 礼を言う暁たちに、アカレッドは首を振る。 

「しかし、奴らの大多数が既に太陽系へ侵攻してしまった。力になれず、すまない」 
「いや、あんたが謝ることじゃあない。それに……」 

 暁の脳裏に、ともに戦った戦友たちの姿が浮かぶ。 

「俺の仲間や、他のスーパー戦隊もいる。そう簡単にやられやしないさ」 

 もちろん、俺たちもすぐに向かうつもりだ。 
 そう言う暁に、アカレッドがじっと視線を向ける。 

「……どうした、アカレッド?」 
「今回の戦い……おそらく一筋縄ではいかないだろう」 

 その言葉に、一瞬反論をしかけ、しかしすぐに口を噤む。 
 数対の艦隊を相手取るだけでも手間取ったのだ。あれの数十倍、否、数百倍の規模で迫られれば…… 

「確かに、君たちスーパー戦隊の力があれば、地球は守れるだろう。だが、その戦いで君たちはその力を喪う事になるかもしれない」 
「どういうこと……ですか?」 

 さくらの問いに、今はまだ言えない、と口を閉ざすアカレッド。 

「ボウケンレッド。ひとつ頼みがある」 
「……なんだ?」 

 一呼吸おいて、アカレッドが口を開いた。 

「そう遠くない未来。この船に乗って、君たちの“後輩”が地球に来るだろう。そのときは……」 

 彼らの、道しるべの一つとなってはくれないだろうか。 

「道しるべ?」 
「ああ。そのときがくれば、いずれわかる。お前は、お前に出来る“導き”をしてくれればいい」 

 言葉の真意はわからない。だが、なぜか暁の心に、それはすっと入り込んでいく。 

「……わかった。そのときがくれば、だな」 

 暁がそういうと、アカレッドは大きく頷いた。 

「何がわかったんですか、暁さん」 
「さてな」 

 合点がいかない、といった表情で、さくらが暁とアカレッドを見る。その間は、彼女にはわからないなにかで繋がれているようだった。 

「だが、とにかくわかったのさ」 
「はぁ……?」 

 首をかしげるさくらを、暁が「ほら」と促す。いつしかアカレッドが駆る帆船……<ゴーカイガレオン>は宇宙の闇の先へと消えていた。 

「俺たちの今できることをやろう。頼まれ事は、ちょっとだけ先の話らしいからな」 

 そう、今はまず、目の前の脅威を払うこと。 

「さくら、ワープ準備だ。目標、地球!」 
「了解っ」 

 ボイジャーのネオパラレルエンジンが全力で回転を始める。その先には、先ほどの戦いなど比較にならない世界が待っているだろう。 

 だが、負けるわけにはいかない。いや、負けない。 

 なぜなら彼らは、スーパー戦隊であるのだから。 

「ゴーゴーボイジャー、発進!」 

 空間が歪み、ボイジャーが故郷へ向けて飛び立った。 





     -It continues to the LEGEND WAR- 




 第11弾は、物語のキーパーソンたるアカレッドが始めて登場した、ボウケンジャーをフィーチャー。 
 ゴーカイ21話ラストでの、暁のセリフ「これでよかったんだろう? アカレッド……」という言葉の真意を、自分なりに解釈したらこうなりました。 

 うん、けっこうアバウトな感じがするw 

 むー、ここへきてスランプかおいィ…… 

 ここらで気分転換とばかりに別ジャンルで攻めようかナァ……