艦隊戦で損傷したゴーカイガレオンのメンテナンスをするべく、マーベラスたちは電の誘いを受け、イガ星へと向かった。
「おお、デカベースだ。地球署といっしょなんだなぁ……!」
「そりゃそうだよ。統一企画なんだから」
宇宙警察イガ星署・デカベースのドックにガレオンを停め、降りる6人の前に、先行していた銀色の戦艦・グランドバースから電がやって来た。
「さっきメカニックに話を通しておいた。この損傷具合なら数時間で仕上がるそうだ」
弾薬の補充もしておこう。という電に、アイムが「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。
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「君たちの事はギャバン隊長からも聞いている。地球で隊長と一緒に戦ったそうだね」
「ギャバンさんとお知り合いなんですか? それに隊長って……」
ああ。と頷いて、電が遠くを見るように目を細める。
「俺は、もともと地球に住んでたんだ」
「その時に、マクーのダブルモンスターに襲われて、瀕死の重傷を負ってしまったんだが、彼はそんな俺を助けてくれたんだ」
「俺が地球担当になるに伴って、彼は銀河パトロール隊の太陽系地区を任されることになった」
「なるほど、それで隊長ってことね」
ふぅん。とルカが頷いた。
「ギャバン隊長は、俺にとっては先輩であり、上司でもあり……そして、命の恩人なんだよ」
「恩人、か」
電が口にした単語を、マーベラスがふとリピートする。
「うん?」
「……いや、なんもねえよ」
外の空気吸ってくる。と呟いて、マーベラスがブリーフィングルームを後にした。
「……何か彼の気に障ることでも言ったかな?」
「あ。多分大丈夫ですよ」
首をかしげる電に鎧がそう言って、「ねぇ?」とジョーに同意を求める。ジョーも「そうだな……」と首肯した。
「電さんと自分とを、重ねちゃったのかも」
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「……ふぅっ」
吐いた息が、イガ星の大気と混ざり合い霧散する。
地球に良く似た気候が穏やかな風を呼び、彼の頬を撫ぜていった。
「俺と同じ、か」
脳裏によぎる、幼き日の記憶。
――よろしく勇気だ!
「……何やってんだかな俺は。らしくねえ」
頭を力任せに掻き毟る。くしゃくしゃになった髪を適当に整え、デカベースへ戻ろうと回れ右をした。
「……うん?」
と、その足が止まる。背後からの大勢の足音を聞いたマーベラスが振り返ると、その光景に表情が変わる。
ザンギャックの雑兵・ゴーミンが群れを成してデカベースへと向かってきていたのだ。
そのうちの一人が、マーベラスを見つけた。さっそくしとめようと銃撃を放つ。
「ふっ、おりゃあ!」
飛んできた銃弾を咄嗟にゴーカイサーベルで叩き落し、即座にゴーカイガンで反撃に転じる。盛大に吹っ飛んだゴーミンが他のゴーミンにぶつかり、将棋倒しよろしく転がっていく。
「なんでてめえらがこんなところに居る?!」
「ちっ……」
舌打ちをひとつして、マーベラスが躍り出る。刃と銃弾が乱れ舞い、ゴーミンを次々に蹴散らす。
「クライムバスターッ!」
と、上空からの声とともに、熱線が走る。背後からマーベラスを攻撃しようとしていたゴーミンが、音もなく倒れた。
「大丈夫か!?」
「たりめーだ!」
「マーベラスさーん!」
次いで鎧たちも飛び降り、それぞれが一斉にゴーミンをなぎ倒していく。
「しかし、どうしてここまで接近を許してしまったんだ? デカベースのレーダーシステムに異常はなかった筈だが……」
「それは俺の“幻夢ジャミング”の力だ」
電の疑問に、律儀に答える声がひとつ。
「誰だっ!?」
不意に、ゴーミンの群れがふたつに割れる。その奥から、全身を機械のような鎧で覆った異形の怪人が姿を現した。
「ふふ……会いたかったぞ、伊賀 電。いや、シャリバン!」
「会いたかっただと……? それに“幻夢”……まさか貴様!?」
聞き覚えのある単語に、電が声を荒げる。「そのまさかよ」と怪人が不敵に笑ってみせた。
「俺は宇宙犯罪組織マドーの生き残りだ。もっとも、幹部でも魔怪獣でもない、ただの一兵卒だったがな」
顔に張り付いた無機質な仮面。それがマドーの戦闘員である<ファイトロー>のものであることに、電が気づく。
「生き残るために、手当たり次第に力を求めたもんだぜ。ザンギャックの行動隊長の地位も手に入れ、安泰は得たと思っていたんだが……」
ザンギャック皇帝の死により、帝国はその力を急速に失った。怪人は内部分裂を起こす上層部を早々に見限り、部下を引き連れ独自に動くことを決めた。
「そう、俺の真の目的のためにな……!」
「真の目的だと? それは何だ!?」
電の問いに、怪人が低く嗤う。
「俺の目的はマドーの再興よ! そのためには我らが魔王の復活が不可欠……俺は死霊界にいるであろう魔王を、再び現世に呼び戻すのだ! <イガクリスタル>を使ってな!!!」
イガクリスタル。
イガ星の中枢を担う、超エネルギーの結晶体である。
太陽にも匹敵するといわれたその力を、かつてマドーの首魁・魔王サイコが求め、そのためにイガ星は一度滅んでしまった。
現在はイガ星の地下神殿に安置され、それをふさぐようにデカベースが建っているのだ。
「イガクリスタルは、俺たちイガ星人の魂だ! 奪わせるわけには行かない! ましてや魔王サイコの復活など、この俺が必ず阻止してみせる!」
高らかに叫ぶ電が、おもむろに宇宙警察のユニフォームを脱ぎ捨てる。
白を基調としたアンダーウェア姿になった電が、天に両手を掲げた。
「赤射ァッ!!!」
次の瞬間、赤いメタリックのスーツに身を包んだ戦士が、地上に立つ。
響く名乗りの叫びが、真紅に煌いた。
-つづく-
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電が話題にした出会いのシーンは、ギャバン42話のエピソード。
あのシーンは割と笑えます。自分で自分殴りまくる電とかw
ん? 赤射はしたけどアレがない?
どーしても今回で組み込めなかったので後編に入れます(滝汗