炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ゴーカイSS】GO-KAI PLANET CRUISE-太陽のような男-(中編)【後日談】

 艦隊戦で損傷したゴーカイガレオンのメンテナンスをするべく、マーベラスたちは電の誘いを受け、イガ星へと向かった。 

「おお、デカベースだ。地球署といっしょなんだなぁ……!」 
「そりゃそうだよ。統一企画なんだから」 

 宇宙警察イガ星署・デカベースのドックにガレオンを停め、降りる6人の前に、先行していた銀色の戦艦・グランドバースから電がやって来た。 

「さっきメカニックに話を通しておいた。この損傷具合なら数時間で仕上がるそうだ」 

 弾薬の補充もしておこう。という電に、アイムが「ありがとうございます」と深々と頭を下げた。 

  
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「君たちの事はギャバン隊長からも聞いている。地球で隊長と一緒に戦ったそうだね」 
ギャバンさんとお知り合いなんですか? それに隊長って……」 

 ああ。と頷いて、電が遠くを見るように目を細める。 
 マーベラスたちが通されたデカベースのブリーフィングルーム。署長である電のデスクには、小さなフォトフレームが立てかけられていて、その中には若き日のギャバンと電の姿があった。 

「俺は、もともと地球に住んでたんだ」 

 森林パトロールの仕事に就いていた電は、当時地球の防衛を担当していたギャバンと些細な誤解をキッカケに知り合ったのだ。 

「その時に、マクーのダブルモンスターに襲われて、瀕死の重傷を負ってしまったんだが、彼はそんな俺を助けてくれたんだ」 

 ギャバンの故郷であるバード星の高度な医療技術により一命を取り留めた電は、バード星に留まり訓練を開始、宇宙刑事となって、ギャバンの居る地球に戻ったのだという。 

「俺が地球担当になるに伴って、彼は銀河パトロール隊の太陽系地区を任されることになった」 
「なるほど、それで隊長ってことね」 

 ふぅん。とルカが頷いた。 

ギャバン隊長は、俺にとっては先輩であり、上司でもあり……そして、命の恩人なんだよ」 
「恩人、か」 

 電が口にした単語を、マーベラスがふとリピートする。 

「うん?」 
「……いや、なんもねえよ」 

 外の空気吸ってくる。と呟いて、マーベラスがブリーフィングルームを後にした。 

「……何か彼の気に障ることでも言ったかな?」 
「あ。多分大丈夫ですよ」 

 首をかしげる電に鎧がそう言って、「ねぇ?」とジョーに同意を求める。ジョーも「そうだな……」と首肯した。 

マーベラスさんも、以前ギャバンさんに命を救われたことがあったそうなんですよ」 
「電さんと自分とを、重ねちゃったのかも」 

 アイムの説明とハカセの指摘に、電は合点がいったと頷き、写真のギャバンに視線を送り、思いを馳せた。 


   * 


「……ふぅっ」 

 吐いた息が、イガ星の大気と混ざり合い霧散する。 
 地球に良く似た気候が穏やかな風を呼び、彼の頬を撫ぜていった。 

「俺と同じ、か」 

 脳裏によぎる、幼き日の記憶。 

  ――よろしく勇気だ! 

 ギャバンの言葉と、力強い腕。それに“今”をもたらされたのが、自分だけではなかったことを知り、嬉しいような、残念なような、複雑な感情がない交ぜになってマーベラスの胸中を渦巻いた。 

「……何やってんだかな俺は。らしくねえ」 

 頭を力任せに掻き毟る。くしゃくしゃになった髪を適当に整え、デカベースへ戻ろうと回れ右をした。 

「……うん?」 

 と、その足が止まる。背後からの大勢の足音を聞いたマーベラスが振り返ると、その光景に表情が変わる。 

 ザンギャックの雑兵・ゴーミンが群れを成してデカベースへと向かってきていたのだ。 
 そのうちの一人が、マーベラスを見つけた。さっそくしとめようと銃撃を放つ。 

「ふっ、おりゃあ!」 

 飛んできた銃弾を咄嗟にゴーカイサーベルで叩き落し、即座にゴーカイガンで反撃に転じる。盛大に吹っ飛んだゴーミンが他のゴーミンにぶつかり、将棋倒しよろしく転がっていく。 

「なんでてめえらがこんなところに居る?!」 

 マーベラスの問いかけに答えることなく、起き上がったゴーミンたちが一斉にマーベラスに襲い掛かった。 

「ちっ……」 

 舌打ちをひとつして、マーベラスが躍り出る。刃と銃弾が乱れ舞い、ゴーミンを次々に蹴散らす。 

「クライムバスターッ!」 

 と、上空からの声とともに、熱線が走る。背後からマーベラスを攻撃しようとしていたゴーミンが、音もなく倒れた。 

「大丈夫か!?」 
「たりめーだ!」 

 デカベースから飛び降りた電の声に、悪態交じりの声が返る。マーベラスと背中合わせになった電が、愛用の光線銃を構え、ゴーミンの大群と相対した。 

マーベラスさーん!」 

 次いで鎧たちも飛び降り、それぞれが一斉にゴーミンをなぎ倒していく。 

「しかし、どうしてここまで接近を許してしまったんだ? デカベースのレーダーシステムに異常はなかった筈だが……」 

「それは俺の“幻夢ジャミング”の力だ」 

 電の疑問に、律儀に答える声がひとつ。 

「誰だっ!?」 

 不意に、ゴーミンの群れがふたつに割れる。その奥から、全身を機械のような鎧で覆った異形の怪人が姿を現した。 

「ふふ……会いたかったぞ、伊賀 電。いや、シャリバン!」 
「会いたかっただと……? それに“幻夢”……まさか貴様!?」 

 聞き覚えのある単語に、電が声を荒げる。「そのまさかよ」と怪人が不敵に笑ってみせた。 

「俺は宇宙犯罪組織マドーの生き残りだ。もっとも、幹部でも魔怪獣でもない、ただの一兵卒だったがな」 

 顔に張り付いた無機質な仮面。それがマドーの戦闘員である<ファイトロー>のものであることに、電が気づく。 

「生き残るために、手当たり次第に力を求めたもんだぜ。ザンギャックの行動隊長の地位も手に入れ、安泰は得たと思っていたんだが……」 

 ザンギャック皇帝の死により、帝国はその力を急速に失った。怪人は内部分裂を起こす上層部を早々に見限り、部下を引き連れ独自に動くことを決めた。 

「そう、俺の真の目的のためにな……!」 
「真の目的だと? それは何だ!?」 

 電の問いに、怪人が低く嗤う。 

「俺の目的はマドーの再興よ! そのためには我らが魔王の復活が不可欠……俺は死霊界にいるであろう魔王を、再び現世に呼び戻すのだ! <イガクリスタル>を使ってな!!!」 

 イガクリスタル。 
 イガ星の中枢を担う、超エネルギーの結晶体である。 
 太陽にも匹敵するといわれたその力を、かつてマドーの首魁・魔王サイコが求め、そのためにイガ星は一度滅んでしまった。 

 現在はイガ星の地下神殿に安置され、それをふさぐようにデカベースが建っているのだ。 

「イガクリスタルは、俺たちイガ星人の魂だ! 奪わせるわけには行かない! ましてや魔王サイコの復活など、この俺が必ず阻止してみせる!」 

 高らかに叫ぶ電が、おもむろに宇宙警察のユニフォームを脱ぎ捨てる。 
 白を基調としたアンダーウェア姿になった電が、天に両手を掲げた。 

「赤射ァッ!!!」 

 次の瞬間、赤いメタリックのスーツに身を包んだ戦士が、地上に立つ。 

宇宙刑事シャリバンッ!!!」 

 響く名乗りの叫びが、真紅に煌いた。 



    -つづく- 


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 電が話題にした出会いのシーンは、ギャバン42話のエピソード。 
 あのシーンは割と笑えます。自分で自分殴りまくる電とかw 

 今回はどーしてもバトルシーンをやりたかったので、急遽敵キャラを製作。ファイトローが事故改造の果てに強くなりました。という、マジレンブランケンみたいなキャラに。 
 元ネタはかつて「特撮エース」で短期連載されてた小川雅史氏によるコミック作品。アレもひとりのファイトローが発端でした。 

 ん? 赤射はしたけどアレがない? 

 どーしても今回で組み込めなかったので後編に入れます(滝汗