炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【レジェンド大戦】Episode:TIMERANGER/過去への“帰還”

 明日の明日は、明後日。 
 明後日の明日は、明々後日。 

 明日がずっと続いていって――未来。 


 1000という時を越えた先の未来にある。 


 ここは、31世紀。 



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「やれやれ……明日の試合が急にキャンセルになったかと思えば、急に時間保護局へ出頭だぁ? わけわかんねえなぁ……」 

 ボヤキながら、真新しい白い制服に袖を通す大男が一人。 

「急に僕たちを呼び出した理由ってなんなんでしょうね? 今の僕たちは、すっかり保護局から離れてしまってるのに……」 

 その傍らを歩く、人懐っこい笑顔の青年。彼の言葉に、男は「そうなんだよなぁ……」と頭をかいた。 

 大男の名は、ドモン。 
 青年の名は、シオン。 

 ともに、21世紀と31世紀……2つの時代を守った戦士<タイムレンジャー>だった二人である。 



    BEGINNING to LEGENDWAR 
    Episode:TIMERANGER/過去への“帰還” 



 二人がブリーフィングルームに到着すると、既に先客があった。 

「よう、遅かったな。花形ファイター」 
「なんでぇ、お前も呼ばれてたのか。トップレーサーも随分と暇なんだな」 

 ドモンの憎まれ口に「お前ほどじゃないさ」と皮肉で返すのは、ドモンたちの僚友であったアヤセだ。 

「シオンも忙しい中よく来れたわね。どこの研究所からも引く手あまたって聞いてるわよ?」 
「はい。どうやら今回の呼び出しは相当重要な案件だったらしくって。すぐさま休暇申請が受理されちゃいました」 

 そう。とシオンの言葉に頷き、考え込む仕草をするのは、これまた元僚友のユウリである。 

「あのときのメンバーが全員集合、か……。ユウリは何か聞いてないのか?」 

 アヤセの問いに、ユウリは首を横に振る。 
 かつての戦いから10年。彼らを取り巻く歴史は大きく動きながらも、平穏な日常へと戻ることができていた。 

 ドモンは再びグラップのリングへと戻り、病を克服したアヤセはスピードの世界を突き進む。 
 シオンは持ち前の器用さと知性を活かし研究者の道を歩み、ユウリは愛する家族たちとの生活を楽しみながら、インターシティ警察の敏腕捜査官として活躍中だ。 

 保護局員としてのライセンスこそ継続して所持していたが、彼らにとって、ここでのことはもはや過去に過ぎないはずであったのだが。 

「……やあ、揃ったようだね」 

 と、不意に自動ドアが開く。新たな来訪者の姿に、4人は目を丸くした。 

「久しぶりだな、みんな!」 
「タック!」 

 タイムレンジャーを陰で支えたサポートロボットは、懐かしげに目を細めて4人の姿をカメラ・アイにおさめた。 


    * * * 


「……宇宙帝国ザンギャック?」 
「そうだ」 

 詳しい説明もそこそこに、タイムジェットのコックピットへと案内された4人は、聞きなれない単語を耳にする。 

「君たちがその崩壊を救った21世紀……2001年から10年後の2011年に、地球はザンギャックの総攻撃を受けることになっている」 
「そんな……」 

 シオンが悲痛を帯びた声を上げる。必死で戦って、尊い犠牲を払って、ようやく得た時の平穏が、またも乱されようとする事実に。 

「無論、地球側もむざむざやられたりはしない。君たちより以前に活躍した<ゴーゴーファイブ>、君たちの後に地球を守る<ガオレンジャー>をはじめとした、<スーパー戦隊>と呼ばれる者たちが一同に介し、それを退けるんだ」 

 その代償は、とても大きいのだけれどね。 
 という一言を、タックはそっと胸に仕舞う。 

「うん? ってことは俺たちが呼ばれた理由って……」 
「そうだドモン。君たちもそのスーパー戦隊の一員<未来戦隊タイムレンジャー>として、戦いに赴いて欲しい。これは、君たちにしか出来ない特殊な任務なんだ」 

 もともと<タイムレンジャー>というのはスーパー戦隊のチーム名ではなく、時間保護局の局員、ならびにその緊急戦闘モードのことを指す言葉である。 
 しかし、彼らが過去で戦ったことが、彼らを<スーパー戦隊>として、歴史が認識してしまったため、単純に局員を送り込むことは出来ないのだ。 

「なるほどな。それで俺たちってことか」 
「今回は特例中の特例だ。本来、過去の人間との過度な接触は禁じられていることは君たちももう知ってるだろうが、今回はそうもいかないからね。全てのスーパー戦隊と協力して、宇宙帝国ザンギャックに立ち向かって欲しい」 

 タックの言葉に、4人が思い思いに頷く。 

「そっか……もう一度あの時代に帰れるのか……って、“帰る”って表現はちょっと違うか?」 
「いいんじゃない? あの時代は、私たちにとって、もうひとつの家みたいなもの……だもの」 
「家……故郷。確かに、そうかもしれませんね」 

 ぱっと破顔するシオン。 

「ドモン、いくら過去の人間との接触が許されてるからって、ホナミちゃんには会いに行くなよ? さすがにスーパー戦隊以外の人間は対象外だろうしな」 
「わ、わぁってるよそんぐらい!」 

 アヤセに見透かされ、顔を真っ赤にして反発するドモン。その視線がじとっとユウリへと向いた。 

「いーよなユウリは。俺と違って堂々と想い人に逢える訳だし?」 
「ちょっ、へんな言い方しないでよ……私は……」 

 急に矛先を向けられ、ユウリが狼狽した。 

「さぁ、まもなく出発するぞ。緊急システム発動! プロバイダス、スタンバイ!」 


  -タイムゲート・オープン- 

  -タイムジェット発進- 


 タイムゲートの番人が、その拳でタイムジェットを送り出す。 


(竜也……) 

 4人の思いを乗せ、時の翼が飛び立った。 


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 ――A.D.2011 

 のちに「レジェンド大戦」と歴史に記される戦い。 
 色とりどりのスーパー戦隊の中に混じり、独り生身で尖兵に立ち向かう男の姿があった。 

「くっ……はぁっ!」 

 得意の正拳突きが雑兵の顔面を打ち抜く。もう何体となく斃したはずなのだが、その数は一向に減る気配はなかった。 

(くっ……キリがないな……) 

 ふと、左手首に意識が向く。かつてそこにあった“力”を思い出し……首を振る。 

「ダメだな。ないものねだりはするもんじゃない」 

 そう思い直し、拳を握りなおした彼を、艦隊の砲撃が襲う。 

「ぐあっ!?」 

 榴弾の嵐が、守るもののない生身の身体を容赦なく傷つけていく。 

「くっ、そお……」 

 既に満身創痍。それでも尚、彼は立ち上がる。 

(負けられ、ないんだ……!) 

「俺たちが守った“今”を、これからも守る“明日”を! その“明日”の向こうにある……あいつらのいる“未来”を……お前たちなんかに壊させてたまるか!」 

 絶叫した刹那、戦艦の砲口がこちらを向く。思わず目を伏せ―― 

「……えっ?」 

 いつまで経ってもこない自分の終焉に視界を広げると、周囲の時間が止まっていた。 

「……相変わらずの無茶しぃだなァ」 
「でも、お前らしいよ」 

 背後から聞こえるのは、懐かしい声。 

「10年経っても、やっぱり竜也さんは竜也さんです!」 
「……ええ、そうね。見間違いようなく」 

 振り返った、その先には…… 

「ドモン、アヤセ、シオン……ユウリ」 

 ともに戦った、戦友たちの姿。 
 そして、心を通わせた、想い人の姿。 

「どうして……ここに……」 
「ご挨拶な奴だな。俺たちがいちゃいけないのか?」 

 呆然とする男……竜也に、ドモンが口を尖らせる。 

「守りにきたのよ……あの時のように。今を……そして、明日を」 

 そっと竜也の手をとったユウリが、その手首にブレスレットを……<クロノチェンジャー>をつける。 

「あなたと、一緒にね!」 

 その言葉が聞こえた瞬間、時が再び動き出す。砲撃で爆ぜた地面。吹き上がる爆風をものともせず、5人が立つ。 

「そうか……。それじゃあ……いくぞ皆ッ!」 

 竜也の合図に、左腕のクロノチェンジャーをかざす。 



  ――CHRONO CHANGER! 



 ストレージフィールドの中。5人の身体にクロノ粒子がスーツとなって纏われる。 
 その身に、力が宿った。 

「タイムレッド!」 
「ピンク!」 
「ブルー!」 
「イエロー!」 
「グリーン!」 


  T I M E R A N G E R ! ! ! 


 繰り出すタイムエンブレムが光り輝き、ザンギャックに戦線を布告する。 




 ――西暦3011年の未来人たちと、一人の男が再び出会った。 

 ――新しい“時”を、また刻むために。 




   -It continues to the LEGEND WAR- 






 レジェンド大戦SSシリーズ、10作目の大台を飾るのはタイムレンジャー編。 
 今回のサブタイは原典の48話のサブタイをアレンジしてみました。 

 実は再会後の展開としての案が最初にあったんですが、そのネタは別の作品でやりたいなァと思い立ち一度は凍結したタイムレンジャー編なのですが、この展開を思いつき急遽再浮上と相成りました。 

 別の作品? まぁそのうちにね♪(←ォィ 

 前回のジェットマン編で「再びの別離」を描き、今回で「再会」を書いて…… 

 別に意図はしてなかったんですが、ちょっと運命的なものを感じずに入られませんなァw(ぇ 





 ううむ、どうも文の終わらせ方に迷う。 
 もっと精進していかないと。