炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【レジェンド大戦】Episode:DAI-RANGER

 轟音、爆音……さまざまな音がとどろき、耳を劈く。 

 人類有史で、もっとも激しいであろう“戦場”……のちに<レジェンド大戦>と銘打たれるその戦端の最中に、一人の少年がカメラを抱えて走り回っていた。 

「うおわぁっ!?」 

 爆ぜる地面を持ち前の運動神経で危なげなくかわしつつ、物陰に隠れてシャッターを切る。 

 そのファインダーに映るのは、色とりどりに眩しい戦士……スーパー戦隊たち。 

「へへっ……やっぱかっこいいよなァ……」 

 ファインダー越しに戦士たちの活躍を垣間見て、ひとり悦に浸る。 

「天火星・稲妻炎上破ぁっ!!!」 

 背後からの雄たけび。振り向くと、別のスーパー戦隊が雑兵を蹴散らしながら戦場を駆け抜けていくのが見えた。 

「あれは……ダイレンジャーの皆さんだぁっ!」 

 目を輝かせて、少年がそれを追いかけた。 




    ANECDOTE of LEGENDWAR 
    Episode:DAI-RANGER/その背中を追っかけろッ 




 真紅の棍……ダイレンロッドをぐるぐる回し、飛び掛る雑兵をバッタバタとなぎ払う5人の戦士。 

「やれやれ……いったいどこから沸いてくるの……かっ!」 

 酔拳のような足さばきで攻撃をいなしながら、キリンレンジャー・和がため息混じりに呟く。 

「まぁ、この手の連中はワラワラでてくるのがお約束みてーなもんだからなぁ。コットポトロだってそうだったじゃねえか」 

 ダイレンロッドをヌンチャクへと変化させ、怒涛の如く打ち払うのは、テンマレンジャーこと将児だ。 

「それにしたってこの物量……俺たちを含めてのスーパー戦隊が全て集結してるにもかかわらず、一向に減る気配がない……それほどまでの戦力を有するというのか、あの……宇宙帝国ザンギャックは!?」 

 上空を悠然と往く艦隊を睨み、シシレンジャーの仮面の向こう側で大吾が歯噛みした。 

「……あれ? ねえ皆、コウはどこ?」 

 自らの“気力”で風を呼び、雑兵を吹き飛ばしたホウオウレンジャー・リンがふとたずねる。混戦のなか、かろうじて全員揃った状態を維持していたダイレンジャーであったが、気づけば6人目の弟分の姿がなかった。 

「どっかで戦ってるだろう。あいつだっていつまでも子供じゃない。そろそろ子離れすべきじゃないか、リン?」 

 背中合わせで戦うリュウレンジャーこと亮の言葉に「子離れって……」と難色を示すリンだったが、それもそうねと頷き、再び戦場に意識を向けた。 


   * * * 


「あっれ……キバレンジャーさんがいないなぁ……」 

 ひとり足りないことは、彼らにレンズを向ける少年も気づいていた。「せっかくだから全員揃った状態で一枚欲しいんだけど……」などと戦場に居ることも忘れ暢気に呟く。 

 と、その少年の肩を叩く手があった。 

「ちょっとまって、今いーとこなんだから……」 

 その手を払い、ファインダーに集中する少年。その肩がもう一度叩かれる。 

「ああもっ、いいところだって言って……る……ん……デスケド?」 

 煩そうに振り返った少年の声が消え入る。いつの間にか目の前にはザンギャックの雑兵が数人、少年を覗き込むように立っていた。 


 ・ 
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「うわうわうわうわうわぁぁぁあっ!!?」 

 “ほうほうのてい”、という言葉を実際に再現するかのように少年が逃げ回る。誕生日に買ってもらったデジタル一眼レフはいつの間にか取り落とし、腰を抜かした彼はそれに気づくことなく埃まみれになりながら雑兵たちに追いかけられていた。 

 撮影に夢中になりここが戦場であることを完全に失念していた少年は、自らの軽率さを今更ながらに猛省した。 
 とはいえ、それで事態が好転するわけでもなく、いつしか少年は追い詰められ、逃げ場を失っていた。 

「ゴー……」 

 これで終わりだ、と言わんばかりに雑兵が武器を振り上げる。 

「こ……こんのおおおおお!」 

 完全にテンパった少年が、何を思ったか雑兵に飛び掛り、全体重を乗せたタックルを腰に見舞う。不意打ちに雑兵が転がり、取り落とした武器を少年が拾い、構えた。 

「お、おおおおおお、おまえなんかあああああ……怖くないいいいいいっ!!!」 

 震える声と手で武器を振り回す。しかし雑兵はじりじりと少年ににじり寄り、へっぴり腰の彼からたやすく武器を奪い取ってしまう。 

「うひゃあっ!」 

 武器を取り上げられた勢いにまけ、地を転がる少年の身体が泥にまみれる。 

「う、うわ……」 

 再び少年の命を狙う、武器の先端がギラリと光る。少年の目に恐怖の涙が浮かび、今にも落ちそうなほどに溜まっていった。 

(おれ……ここで死んじゃうのかなぁ……) 

 悲しみ、絶望、恐怖。 
 幼いながらに知りうる負の感情に負け、目を閉じた刹那―― 

「……耳、ふさいでな」 

 ふと耳朶を打つ声。 
 それに従い、耳を思い切り押さえた途端、戦場を満たしていた音が途絶え、次の瞬間強烈なエレキギターの音がふさいだ手の向こうから轟いた。 


  ――吼新星・乱れ山彦!!! 


 すさまじい音の圧力の隙間から溌剌とした叫びが聞こえ、少年は薄く目を開く。 

「キバレンジャー! 吼新星・コウ!!!」 

 腹に響く声で名乗りを上げる背中は、見失っていたダイレンジャーの6人目。 

「あ……ああ……」 

 言葉を失う少年のほうへ振り向き、キバレンジャーが仮面の向こうでふっと微笑んだ……ように思えた。 

「大丈夫か?」 

 その言葉にようやく我に返り、小刻みに頷く。 

「まったく、戦いの中に出てくるなんて何考えてんだ? 無茶しやがって……」 
「ご、ごめんなさい……」 

 しゅんとなる少年の手に、ほら、と何かが渡される。 

「あ、これ……」 
「お前んだろ? 大事なもんならちゃんと持っとけよ」 

 砂にまみれて傷だらけになってはいたが、手になじむのは愛用するデジタルカメラであった。 

「さて、今このあたりにザンギャックの奴らはいない。早いとこ逃げときな」 
「は、はい……その……ありがとう、ございます!」 

 深々と頭を下げる少年に、キバレンジャーは手を振って応えた。 

「礼を言われるほどじゃないよ。ヒーローだもん」 

 なんてね。と小さく笑うキバレンジャー。 

「さ、早く行け! ここもまたすぐ戦場になる!」 
「わ、わかりました!」 

 踵を返し、走り出す少年。 

「さ、僕も早いとこみんなと合流しないとね……行こう、白虎!」 

 それを見送り、キバレンジャーが戦場へと躍り出た。 


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「キバレンジャー……吼新星・コウ!」 

 戦場を離れる少年が、走りながらふと真似して呟いた。 

「……やっぱ、カッコいい!」 

 いつか、自分も。 
 あんな風に、なんてことないように誰かを救える“ヒーロー”になりたい……! 

 今までは漠然とした夢だったそれが、少年の中で確固たる“目標”へと変わった瞬間であった。 


 そして、時が経ち。 
 その少年はギンギンに輝くヒーローへと成長を遂げるのだが…… 


 ――それはまた、別のお話である。 





   -It continues to GOKAIGER 17th Episode……- 





 ぎゃああああああ日付変わる前にうpできなかったああああああああ!!! 

 mixi日記のカレンダーでは3日にむりやり先んじて作ったけど、さすがにコレ反則すぐる! 

 穴掘って埋まっておきます! うわこのネタつかうの久しぶり!(落ち着け 


 さて、今回はダイレンジャー編にかこつけて某キャラクターの前日談を。 
 中の人がダイレンジャー大好きだと伺っていたので、これはコラボらせなきゃ嘘だろう!ってなわけで暖めていました。 

 昨日の執筆でそろそろ特撮ネタの執筆が自分の中で飽きてきたのかなぁと思うスランプっぷりだったのですが、今日「ゴーカイVSギャバン」を観に行って、特撮熱が再燃。やっぱりヒーロー最高! とばかりに書き上げました。 

 ……遅れたけどな!orz 

 遅れた理由? キバレンジャーの名乗りで初登場時のあの口上を再現したかったんですが、調べても出てこなくってそれに時間を取られました。 

 もーちょっと早めに動けばよかったんですけどねぇ……執筆中にアイデア浮かぶとこー言うときに困るわ(滝汗 


 今度はもっとちゃんとやります!