炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【レジェンド大戦】Episode:GINGA‐MAN



 穏やかな土と緑の香が、風に乗って新たな季節の到来を告げ往く。

 全てを癒し慈しむ森の自然の中で、一人の男が佇んでいた。


「……すぅ」

 静かに、深く呼吸をひとつ。

 刹那、閉じていた目をかっと開き、腹の底から声を搾り出すように発する。

「炎のぉ……」

 ざわ、と周囲の木々が色めく。大きく開いた両の手のひらを重ね、やおら前に突き出した。

「たてがみぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 轟いた叫び声は、数秒反響した後に風に混ざり、辺りは再び静かになる。

「……うーん、やっぱりダメか」


 ため息をついて、男……かつて<ギンガレッド>であった、リョウマはそう呟いた。




     After of LEGENDWAR
     Episode:GINGA-MAN/チカラの喪失




「またやってたのか、リョウマ」
「兄さん……」

 背後から声をかけられ振り返ると、リョウマの兄・ヒュウガが茂みの奥から現れた。

「あの戦いから、もうじき半年になる。力が……“アース”が使えないのは、もう既に散々試して解りきってるだろうに」
「そりゃ、そうだけどさ……」

 あの戦い……<レジェンド大戦>と称された、宇宙帝国ザンギャックとの戦いの中で、彼ら<ギンガマン>をはじめとしたスーパー戦隊の戦士たちは、持てる全ての力を集め、地球存亡の危機をなんとか退けることに成功した。

 しかし、その戦いの果てに、戦士たちは戦う力を……スーパー戦隊としての力を完全に喪ってしまったのだ。


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「兄さんは……前に“アース”を捨てたことがあっただろう? そのときって、どんな感覚だったんだい?」

 ふと、リョウマが兄に尋ねる。
 レジェンド大戦より以前、3000年前の封印からよみがえった<宇宙海賊バルバン>との戦いの中、一時ギンガマンとの戦列を離れたヒュウガ……黒騎士は、バルバンの首魁・ゼイハブを倒せる唯一の武器を振るうために、自らアースを捨てたことがあるのだ。

「そうだな……あれは、正確にはアースを封じただけだったから、随分感覚が違うよ」

 自らの手を数度握っては開いて、ヒュウガが呟く。

「今は、自分の中にアースを感じないのはもちろんだが……この地球(ほし)との繋がりも、薄れて言ってる感じがして……」
「うん、そうだ……。それが、すごく怖いんだ。今までそんなこと、一度だってなかったからさ」

 ギンガマンの力の源である“アース”は、元来地球から借り受けた力である。
 ギンガの森に住まう民たちは、大なり小なりこの力を操る術を生まれながらに有しているのだ。

「モークが言うには、俺たちがアースを使えるのは、自然の力を引き出すアンテナみたいなものを持っているから、らしいんだが……レジェンド大戦の時に、そのアンテナを丸々喪ってしまったんだろうって」
「そうか……」

 大地に手を触れる。風に手をかざす。
 リョウマは全身を使って自然と重なろうとしたが、風はただ通り過ぎ、大地は何も応えてはくれない。

「俺たちの……スーパー戦隊の力って、どうなったんだろう?」
「さあな……デカレンジャーや、協力者の異星人たちは、集まった俺たちの“力”は、小さな光のかけらになって宇宙中に散らばった、って言ってたが……」

 それは、いつか自分のもとへ戻ってくるのだろうか。
 答えの見つからない問いを、意識の向こうへ追いやって、ヒュウガはふと空を見上げた。

「……きっと、戻ってくるよ」
「うん?」

 ふと、明るい声でリョウマが言う。

「俺たちの力。それが、どんなカタチでかは、わかんないけど。……いつかまた、俺たちの力が、本当に必要な時が来ると思うんだ」

 ――その時に、きっと。

 リョウマが空を見上げ、その先の宇宙へと目を向ける。

 確証はない。でも、ヒュウガもなぜか、そんな気がして……

「ああ……そうだな。きっとそうだ」

 大きく頷いた。


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 ざざん。と、風が木々を揺らす。
 力を喪った戦士たちを慈しみ、励ますように。



    -fin-





 さてさて。 
 レジェンド大戦シリーズ第13弾・ギンガマン編でゴザイマス。

 今回のネタ元は、マジレンジャー編と同じく、レジェンド大戦において喪った力の規模の件。 

 ちょっと前にギンガマンがアースを使うメカニズムを自分なりに考察したことがあって、それをリンクさせての執筆となっております。 
 アースは、スーパー戦隊の特殊能力の中でも、厳密に術者の内にあるものではないという珍しいタイプ(類似例はマジレンジャーの魔法が近い?)なので、力を使えないということはどういうことか、と言ったところから発想し展開。 

 あくまで二次設定なので真に受けないように(ぇ 


 さて、そろそろ連載作に手を出す方向へむこうか。 
 たまには特撮以外のネタにも手を出しておかないとバリエーションが似通ってしまって結果的に執筆能力が低下しかねないような気がするし。