炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ゴーカイSS】GO-KAI PLANET CRUISE-太陽のような男-(後編)【後日談】

「漸く見つけたぜ、ザコ野郎!」 

 ゴーミンの最後の一体を吹っ飛ばし、マーベラスが謳う。 
 その声に振り返ったファイトローが、無表情な仮面に焦りの色を浮かべた。 

「ば、莫迦な……俺の幻夢ジャミングは完璧だ。お前たちは同士討ちしたはずでは……」 
「悪いな。俺はお前たちマドーと、幻夢界で何度も戦ってきた。そんな俺に、まがい物の幻夢ジャミングなど通用しないッ!」 
「僕たちも、魔空空間で戦ったこともあるしね。種さえわかればこっちのもんさ!」 

 シャリバンハカセの得意げな表情に、ファイトローがぎり、と歯噛みした。 

「なめるなよ。幻夢ジャミングだけが俺の力と思うな! くらえぇっ!!」 

 肩の装甲が展開し、マイクロミサイルの雨が降る。それを苦もなくかわすマーベラスたち。しかし、通り過ぎた弾頭が旋回し、再び矛先を彼らに向ける。 

「あーもう、面倒くさいわねッ!」 

 悪態をつくルカ。銃撃で応戦し、ミサイルを全て撃破する。途端に広がる爆風が、その場にいる全員の視界を奪う。 

「派手に……っ!」 
「参ります!」 

 その中を刃と拳銃が行き交い、黒い煙から飛び出したジョーとアイムが、それぞれ二条の斬撃と銃撃を繰り出す。 

「もういっちょ!」 
「派手に!」 
「いっちゃおう!」 

 次いで、鎧。そしてルカとハカセがすれ違いざまに強烈な攻撃を浴びせた。 

「はあっ!」 
「そりゃあっ!」 

 火花散る視界が晴れた刹那、ファイトローの眼前に刃がふたつ。 
 シャリバンマーベラスが初対面とは思えない連携でファイトローを切り裂いていく。 

「ぐっ、このおおおっ!!!」 

 振り下ろされた二人の斬撃が受け止められる。次の瞬間、ファイトローの手がアメーバのように変形し、刃を封じた。 

「そのまま死ね!」 

 至近距離でミサイルランチャーを展開する。 

「そうは……」 
「行くかよ!」 

 弾頭が露出した瞬間、クライムバスターとゴーカイガンの銃口が肩にねじ込まれる。浴びせられたエネルギー弾が誘爆を促し、ファイトローの肩が砕けた。 

「が、あああああ……!」 

 爆風に乗り、戒めから逃れるマーベラスシャリバン。 

  -Special chaaaaaaarge!!!- 

「二人とも伏せてくださいッ!」 

 ゴーカイガレオンバスターを構えた鎧が叫ぶ。射線から二人が離脱したのを確認し、トリガーを思い切り引き絞った。 

  -Raaaaaaaaaising Straaaaaaaaaaaaike!!!- 

 膨大なエネルギーがファイトローを貫く。機械の鎧が弾けとび、その仮面に大きくヒビが入った。 

「これで終わりだ!」 
「レーザー・ブレード!」 

  -Faaaaainal Waiiiiiiiive!!!- 

 青く煌く刃が、真紅に輝く刃が、二人の手の先で重なる。 

シャリバンッ!」 
「ゴーカイッ!」 

  クラァァァァッシュッ!!! 

 ×字の軌跡がファイトローの身体に刻みこまれ、飽和したエネルギーがスパークする。 

「ぐっ、うううう……死んで……死んでたまるか……俺は……生き延び……!」 

 頑なに命を手放すまいとあがく怪人が、断末魔を押さえ込んだまま斃れ、爆発した。 
 それと同時に、幻夢ジャミングが歪ませていた空間が元に戻る。 
 イガ星を照らす太陽を背に、二人の紅き戦士が並び立ち、大きく見得を切った。 


    * 


「協力、感謝する!」 
「止せよ、ガラじゃねえんだ」 

 敬礼する電に、マーベラスが煙たそうに手を振る。 

「いやいや、そうも言っていられないぞ。君たちはザンギャックの皇帝を討ち倒した勇者だ。これからも行く先々で感謝されるかもしれないんだ。ちょっとは慣れておくんだな」 
「……スーパー戦隊ってのも楽じゃねえなぁ」 

 ため息とともに苦笑するマーベラス。 

「さて、これから君たちはどこへ行くんだい?」 
「ザンギャックの本星だ」 

 宇宙で二番目のお宝を探しにな。とジョーが説明する。 

「そうか。見つかるといいな。そいつが」 
「見つかるか、じゃねえよ。見つけるのさ。それが海賊ってもんだからな」 

 不敵な笑みを浮かべて、マーベラスが言い切る。「なるほど、確かにな」と、電が頷いた。 

「では、わたくしたちはそろそろお暇させていただきます」 
「また遊びに来ますね~っ!」 

 アイムと鎧が手を振りながら、上空に停泊するゴーカイガレオンに乗り込む。 
 すぐにエンジンが回転をはじめ、ガレオンが浮上していく。 

「……頑張れよ、ゴーカイジャー!」 

 青い空に吸い込まれるように消えていったガレオンに向け、電は再び敬礼をした。 


 ・ 
 ・ 
 ・ 


「……そういえばさ」 
「あん?」 

 再び星の海に出たゴーカイガレオンの中で、ルカがふと思い出したように呟く。 

「あの星にもお宝、あったんだよねぇ……ほら、あいつが言ってた<イガクリスタル>っての」 

 その単語に、鎧がそういえば、と頷いた。 

「なんであれ、狙わなかったの?」 
「簡単な話だ。ありゃ宇宙で二番目のお宝じゃないからな」 

 その問いに、マーベラスはしれっと答える。 

 シャリバン曰く、イガクリスタルは太陽に匹敵するエネルギーを秘めた結晶体らしい。 

「太陽に匹敵ってことは……結局のとこ、太陽と同じくらいの価値しかない、ってこった」 
「……なるほどな。宇宙で二番目のお宝が、太陽ひとつ分ってことはないだろうしな」 

 ジョーが納得し、アイムたちも「なるほど……」と得心した。 

「それに、ここであっさり手に入ってもつまんねえじゃねえか」 

 そういうマーベラスに、ルカも「それもそーね」と破顔する。 

「さて、ちょっと寄り道しちまったが……改めて出航だ! ハカセ、ワープ準備!」 
「もうとっくにできてるよ!」 

 ハカセの返事に「上等だ!」と返し、舵輪に手をかける。 
 ……と、その視線が、イガ星と太陽を捉えた。 

 あの男は……あのギラギラ輝く太陽のように強く、穏やかな陽だまりのような笑顔を見せた、伊賀電は、これからもイガ星を守るために戦い続けるのだろう。 

 かつて地球を守り戦い抜いたときのように。 
 そして、地球を守り続けてきた、34のスーパー戦隊のように。 

  ――じゃあな、シャリバン。 

 口の中で小さく呟き、マーベラスは舵輪をしっかりと握り締めた。 

「目標、ザンギャック本星。ゴーカイガレオン……出航ッ!!!」 

 周辺の空間が歪み、ゴーカイガレオンを次なる宇宙へと送り出す。 

 まだ見ぬ、新世界を目指して。 



   -fin- 



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 ふぅ。ようやく完結っと。 

 並び立つ紅。映えますねーかっけーですねー。もっと文才があればこのかっこよさをもっと伝えられるのに……MOTTOMOTTO! 

 イガ星でのお話はこれにて終わりですが、ザンギャック本星はまだまだ遠く。 
 冒険の中、彼らが立ち寄り、そして出会う人々とは…… 

 そんなかんじで、【ゴーカイ・プラネット・クルーズ】シリーズは今後もやる予定! 

 ええ予定は未定ですとも!(マテ