「漸く見つけたぜ、ザコ野郎!」
ゴーミンの最後の一体を吹っ飛ばし、マーベラスが謳う。
その声に振り返ったファイトローが、無表情な仮面に焦りの色を浮かべた。
「ば、莫迦な……俺の幻夢ジャミングは完璧だ。お前たちは同士討ちしたはずでは……」
「悪いな。俺はお前たちマドーと、幻夢界で何度も戦ってきた。そんな俺に、まがい物の幻夢ジャミングなど通用しないッ!」
「僕たちも、魔空空間で戦ったこともあるしね。種さえわかればこっちのもんさ!」
「なめるなよ。幻夢ジャミングだけが俺の力と思うな! くらえぇっ!!」
「あーもう、面倒くさいわねッ!」
悪態をつくルカ。銃撃で応戦し、ミサイルを全て撃破する。途端に広がる爆風が、その場にいる全員の視界を奪う。
「派手に……っ!」
「参ります!」
その中を刃と拳銃が行き交い、黒い煙から飛び出したジョーとアイムが、それぞれ二条の斬撃と銃撃を繰り出す。
「もういっちょ!」
「派手に!」
「いっちゃおう!」
次いで、鎧。そしてルカとハカセがすれ違いざまに強烈な攻撃を浴びせた。
「はあっ!」
「そりゃあっ!」
火花散る視界が晴れた刹那、ファイトローの眼前に刃がふたつ。
「ぐっ、このおおおっ!!!」
振り下ろされた二人の斬撃が受け止められる。次の瞬間、ファイトローの手がアメーバのように変形し、刃を封じた。
「そのまま死ね!」
至近距離でミサイルランチャーを展開する。
「そうは……」
「行くかよ!」
弾頭が露出した瞬間、クライムバスターとゴーカイガンの銃口が肩にねじ込まれる。浴びせられたエネルギー弾が誘爆を促し、ファイトローの肩が砕けた。
「が、あああああ……!」
-Special chaaaaaaarge!!!-
「二人とも伏せてくださいッ!」
ゴーカイガレオンバスターを構えた鎧が叫ぶ。射線から二人が離脱したのを確認し、トリガーを思い切り引き絞った。
-Raaaaaaaaaising Straaaaaaaaaaaaike!!!-
膨大なエネルギーがファイトローを貫く。機械の鎧が弾けとび、その仮面に大きくヒビが入った。
「これで終わりだ!」
「レーザー・ブレード!」
-Faaaaainal Waiiiiiiiive!!!-
青く煌く刃が、真紅に輝く刃が、二人の手の先で重なる。
「シャリバンッ!」
「ゴーカイッ!」
クラァァァァッシュッ!!!
×字の軌跡がファイトローの身体に刻みこまれ、飽和したエネルギーがスパークする。
「ぐっ、うううう……死んで……死んでたまるか……俺は……生き延び……!」
頑なに命を手放すまいとあがく怪人が、断末魔を押さえ込んだまま斃れ、爆発した。
それと同時に、幻夢ジャミングが歪ませていた空間が元に戻る。
イガ星を照らす太陽を背に、二人の紅き戦士が並び立ち、大きく見得を切った。
*
「協力、感謝する!」
「止せよ、ガラじゃねえんだ」
敬礼する電に、マーベラスが煙たそうに手を振る。
「いやいや、そうも言っていられないぞ。君たちはザンギャックの皇帝を討ち倒した勇者だ。これからも行く先々で感謝されるかもしれないんだ。ちょっとは慣れておくんだな」
「……スーパー戦隊ってのも楽じゃねえなぁ」
ため息とともに苦笑するマーベラス。
「さて、これから君たちはどこへ行くんだい?」
「ザンギャックの本星だ」
宇宙で二番目のお宝を探しにな。とジョーが説明する。
「そうか。見つかるといいな。そいつが」
「見つかるか、じゃねえよ。見つけるのさ。それが海賊ってもんだからな」
不敵な笑みを浮かべて、マーベラスが言い切る。「なるほど、確かにな」と、電が頷いた。
「では、わたくしたちはそろそろお暇させていただきます」
「また遊びに来ますね~っ!」
アイムと鎧が手を振りながら、上空に停泊するゴーカイガレオンに乗り込む。
すぐにエンジンが回転をはじめ、ガレオンが浮上していく。
「……頑張れよ、ゴーカイジャー!」
青い空に吸い込まれるように消えていったガレオンに向け、電は再び敬礼をした。
・
・
・
「……そういえばさ」
「あん?」
再び星の海に出たゴーカイガレオンの中で、ルカがふと思い出したように呟く。
「あの星にもお宝、あったんだよねぇ……ほら、あいつが言ってた<イガクリスタル>っての」
その単語に、鎧がそういえば、と頷いた。
「なんであれ、狙わなかったの?」
「簡単な話だ。ありゃ宇宙で二番目のお宝じゃないからな」
その問いに、マーベラスはしれっと答える。
シャリバン曰く、イガクリスタルは太陽に匹敵するエネルギーを秘めた結晶体らしい。
「太陽に匹敵ってことは……結局のとこ、太陽と同じくらいの価値しかない、ってこった」
「……なるほどな。宇宙で二番目のお宝が、太陽ひとつ分ってことはないだろうしな」
ジョーが納得し、アイムたちも「なるほど……」と得心した。
「それに、ここであっさり手に入ってもつまんねえじゃねえか」
そういうマーベラスに、ルカも「それもそーね」と破顔する。
「さて、ちょっと寄り道しちまったが……改めて出航だ! ハカセ、ワープ準備!」
「もうとっくにできてるよ!」
ハカセの返事に「上等だ!」と返し、舵輪に手をかける。
……と、その視線が、イガ星と太陽を捉えた。
あの男は……あのギラギラ輝く太陽のように強く、穏やかな陽だまりのような笑顔を見せた、伊賀電は、これからもイガ星を守るために戦い続けるのだろう。
かつて地球を守り戦い抜いたときのように。
そして、地球を守り続けてきた、34のスーパー戦隊のように。
――じゃあな、シャリバン。
口の中で小さく呟き、マーベラスは舵輪をしっかりと握り締めた。
「目標、ザンギャック本星。ゴーカイガレオン……出航ッ!!!」
周辺の空間が歪み、ゴーカイガレオンを次なる宇宙へと送り出す。
まだ見ぬ、新世界を目指して。
-fin-
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ふぅ。ようやく完結っと。
並び立つ紅。映えますねーかっけーですねー。もっと文才があればこのかっこよさをもっと伝えられるのに……MOTTOMOTTO!
イガ星でのお話はこれにて終わりですが、ザンギャック本星はまだまだ遠く。
冒険の中、彼らが立ち寄り、そして出会う人々とは……
そんなかんじで、【ゴーカイ・プラネット・クルーズ】シリーズは今後もやる予定!
ええ予定は未定ですとも!(マテ