「はぁ……なんだってこんなことに」
とにかく埃まみれの身をなんとかしましょう、と茶紗に促されて寮の風呂へと向かった覚夜がため息をつく。
更衣室で制服を脱いだ自身の体を見る。愛も変わらず揺れる胸とは対照的に、どうにも心許ない下半身。
「……やっぱり、ない」
感覚的には“なくなっている”ことには気づいていたが、改めて事実を目の当たりにして、ショックが倍増したらしい。思わず膝をついてしまう覚夜。
「覚夜さーん、入らないんですかぁ?」
「はいはい……」
「はいはい……」
既に湯船に使っている茶紗の声に生返事を返し、バスタオルを体に巻く。大きくなった胸の分すそが持ち上がって、なんとも居心地が悪かった。
かけ湯をしてから、湯船に入る。爆発に巻き込まれた際にところどころ擦っていたのか、すこし身にしみたが、すぐにそれも和らぎ、暖かな感覚が全身をほぐしていった。
「わぁ、浮いてますねぇ」
「え?…ってうわあ!」
「え?…ってうわあ!」
いつの間にか近づいてきていた茶紗がぷかぷかと浮かぶ覚夜の乳房をまじまじと見つめていた。
「や、やぁ…そんなに見ないでよぉ…」
「っていうか胸って浮くものだったんですか……ふむふむ」
「だから見ないでってばぁ……」
「っていうか胸って浮くものだったんですか……ふむふむ」
「だから見ないでってばぁ……」
胸を押さえる覚夜だが、それでもなお茶紗が顔を近づけていく。
「なんか納得いきませんねぇ……私と体格あんまり変わらないのに胸は私より…どころかこれ、ネネさんより大きいんじゃ?」
おもむろに茶紗の小さな掌が覚夜の胸に触れる。ぽよんと大きく弾み、水面に波紋を起こす。
「あふ…ちょ、触っちゃ……」
全身を駆け巡る未知の感覚に、覚夜の顔がぼおっと赤くなる。
「さ、茶紗……」
とろんとした目が、茶紗をじっと見つめる。
「…あ、あら?」
ふと雰囲気の変わった覚夜に、茶紗がたじろぐ。
……なんかヤバい。
そう思って後ずさりかけた茶紗の手を、ふっと覚夜が掴んだ。
「ぴゃ!?」
次の瞬間、一息に引っ張り込まれ、その身が覚夜の豊満な胸に包まれる。
「あ、あのあの…か、覚夜さん!?」
「んー? 覚夜さん、だなんて他人行儀はやだなぁ…?」
「んー? 覚夜さん、だなんて他人行儀はやだなぁ…?」
ふわりと微笑む覚夜。その妙な色っぽさに茶紗は思わずドギマギしてしまう。
「僕と茶紗は主従でしょう? だったらぁ…それに即した呼び方、あるとおもうんだけどなぁ…?」
(ち、近い! 近い近い近い~っ)
温泉と覚夜の熱気にアテられクラクラする茶紗。
「ほら…?」
「え、ええと……ご、ご主人様…?」
「うーん、惜しい」
「え、ええと……ご、ご主人様…?」
「うーん、惜しい」
きゅっと、覚夜の腕が茶紗を抱きしめる。
「わわわわっ…」
「“お姉様”でしょ? 茶紗…はい復唱」
くい、と茶紗のあごに手を添え、じっと見つめる覚夜。
「“お姉様”でしょ? 茶紗…はい復唱」
くい、と茶紗のあごに手を添え、じっと見つめる覚夜。
「……お、お姉様…」
「よろしい」
「よろしい」
にっこりと笑う覚夜に、胸の高鳴りを覚える茶紗。
(あ、あれ…なんかヘン… 今覚夜さんは女の子で…いや、女の子だから…なのかな…)
百合をこよなく愛し、彼が男だと気づくまではことあるごとにネネや巴をけしかけていた茶紗であるが、いざ自分がその立場になってしまった。さまざまな感情が渦巻き、目を回してしまう。
「よくできました。ご褒美をあげなきゃ…ね?」
顔を近づけていく覚夜。その桃色の唇がゆっくりと茶紗の唇を目指し……
「あ、あの、ちょ、お、お姉様!?」
(く、くち、くち、くちびる…が…)
思わず目を閉じた、そのとき。
「なにやってンのあんたはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
強烈な怒声が聞こえたかと思うと、衝撃が通り抜け、目を開けると覚夜の体が宙を舞っていた。
「あ、ネネさん…?」
「お風呂に入ったとたんにありえない光景見たわよ!? てゆーかなんで覚夜に胸があるのよ!? 私聞いてない!」
「お風呂に入ったとたんにありえない光景見たわよ!? てゆーかなんで覚夜に胸があるのよ!? 私聞いてない!」
いつの間にか風呂場にいたネネの拳がうなりをあげていた。
「しかもばいんばいんなのじゃー! 覚夜までわらわをうらぎったのじゃー! 聞いてないのじゃー!!」
洗い場に突っ伏した覚夜の体をがくがくと揺らしながら同じくいつの間にやら現れた巴が嘆く。
洗い場に突っ伏した覚夜の体をがくがくと揺らしながら同じくいつの間にやら現れた巴が嘆く。
「…ああ、ごめんね巴」
と、吹っ飛ばされたはずの覚夜がしっかりとした口調で巴の手をとった。
「きみにこの胸をあげることはできないけれど、その代わり…」
巴を抱きかかえる。頬に柔らかな感触が当たった。
「好きなだけ愛してくれていいから、ね?」
「う、うむ……」
「う、うむ……」
暖かい覚夜のまなざしに、とろけた表情の巴が頷いた。
「こらお姉ちゃん! いきなり懐柔されてどーすん…の!?」
今度はネネに接近し、やさしく抱擁する。
「もう、だめだよやきもち焼いちゃ。でも、そこがネネのかわいいところなんだけどね…」
「え? か、かわ、いい…?」
耳元でささやかれ、とたんにネネの顔が真っ赤に染まる。
今度はネネに接近し、やさしく抱擁する。
「もう、だめだよやきもち焼いちゃ。でも、そこがネネのかわいいところなんだけどね…」
「え? か、かわ、いい…?」
耳元でささやかれ、とたんにネネの顔が真っ赤に染まる。
「フフ、耳まで真っ赤になって照れてる。可愛……い……」
ふと、覚夜の語尾がかすれる。
「どうしたの?」
「……あふぅ」
ぱたり。
「わーっ、覚夜が倒れたのじゃーっ!!」
「だ、だだだ大丈夫ですか覚夜さーん!」
「ちょ、早く部屋に運ぶわよ!! お姉ちゃん、茶紗! 慌ててないで手伝いなさーい!!!」
「だ、だだだ大丈夫ですか覚夜さーん!」
「ちょ、早く部屋に運ぶわよ!! お姉ちゃん、茶紗! 慌ててないで手伝いなさーい!!!」
*
次に目を覚ましたとき、覚夜の体は元に戻っていた。
暴走した理由は、彼の体を変化させた茶紗の妖力にプラスして、温泉内に溶け込んでいたさまざまな妖力にアテられたのではないか、というのが彼の推測である。
「……茶紗のカートリッジは、もうすこし術者として練度があがってから使うことにするよ」
ものすごく複雑な表情で、覚夜が呟いた。
「まぁ、なんにせよ無事でよかったわね」
「そうでもないんだけどね…」
「そうでもないんだけどね…」
と、げんなりした覚夜の視線の先をネネが追うと
「茶紗!わらわにそなたの妖力をよこすのじゃ! わらわもばいんばいんになりたいのじゃーっ!」
「だめですー! 私の妖力は覚夜さんに使ってもらって、今度こそネネさんと禁断の愛をーっ!」
「だめですー! 私の妖力は覚夜さんに使ってもらって、今度こそネネさんと禁断の愛をーっ!」
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「……ネネ、止めてきて?」
「……ごめん、ムリ」
「……ごめん、ムリ」
盛大にため息をつく二人であった。
-fin-
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百合は…っ
とてつもなく…っ
とてつもなく…っ
むずかしかった……っ
どうも俺です。
一ヶ月以上ぶっちぎりつつ、どうにか完結にこぎつけましたw
いや難産でしたorz
いや難産でしたorz
思いつきでモノ書くもんじゃないやなw
まあ楽しかったですが。
まあ楽しかったですが。
コレを昇華させてもっと百合に強い人になりたいです。
…薔薇? ゴメンソレムリ。