「な……なに、これ?」
敵前であることを忘れているかのような、獅子丸の素っ頓狂な声が転がる。
『どうした!? ぼさっとしてんな!』
そんな相棒に喝を入れると、うなづきながら剣を握り直し、跳んだ。
「うわっ!?」
『む!?』
その跳躍に、俺のみならず当人までもが驚く。間合いを詰めるべく肉薄するつもりが、獅子丸の……いや、ガオの身体はしれっとホラーを飛び越しちまいやがった。
『おいおい、なにやってんだ?』
「いや、なんか……力が……出すぎてるっていうか?」
なんだそりゃ?
『とにかく、こまけー事ァ後だ。まずは目の前のホラーだろう!?』
「わかってる……よ!」
呑気にくっちゃべってるところを好機と見たか、ホラーが強襲を仕掛ける。とっさに“右手”に牙央剣を持ち替えた獅子丸がその爪による攻撃を受け止め――
『なにっ!』
刃に阻まれる前に、ホラーの掌が“斬られ”ちまった!?
「くっ!」
しかし、ホラーは攻撃の手を緩めない。ひょっとしたら、コイツ“斬られたことにすら気づいていない”のか!?
受け止めているうちに、刃すら返すことなく魔獣の爪が、牙が文字通り削がれていく。
やがて、ホラーの攻撃がぱたりと止んだ。……いや違う。
――武器が、尽きたんだ。
『今だ、斬れ!』
「はあっ!」
腹の底から息を吐き出し、獅子丸が正眼に構えた牙央剣を大きく振りかぶり――真下に振るう。
牙央剣の刃はホラーを切り裂いてなお止まらず地面を裂き、斬撃の衝撃波が草木を薙ぎ払っていった。
「……っはぁ」
四散するホラーを一瞥したのち、獅子丸が鎧を返召し、荒く息をついた。
『……はっは。なかなかどうしてすげえじゃねえか』
「いや……確かに……全力で斬った……けど……あんなに……斬れるはず……ないんだけど……な」
俺の感嘆の声に、肩で息をしながら、獅子丸が返す。やれやれ、褒めてんだから喜んどけよなー。
「それより……今の、鎧召喚した時のアレ……なんだったの? 大きな手甲みたいなのが右腕についてたけど……」
『あー……それな。不意に思い出しただけで、俺もよくわからねえんだ。まぁ、元老院に報告ついでに聞いてみようぜ。俺の元持ち主の手掛かりになるかも知らん』
「そう、だね……でも、ちょっと待って……」
あん?
「なんか……力……入んなくて……ちょっとだけ……休んだら……動けると……思う」
どさり、と片膝をつき、魔戒剣を杖代わりに体を支える獅子丸。その情けない面構えは、さっきまでホラーと渡り合っていたヤツと同一人物には見えない。
『しょーがねえなぁ』
とはいえ、俺自身も妙な疲労感が……肉体なぞ持っちゃいないはずなのにな……?
・
・
・
この時。
疲弊していたからか、それとも相手のほうが一枚上手だったからなのか……
俺たちの様子を陰で伺っている“ヤツ”の存在に、俺も獅子丸も、ついぞ気づくことはなかった。
「……ようやく見つけたぞ。“騎士殺しの魔導具”……!」
-つづく-
自分で考えといてなんですが、“騎士殺しの魔導具”とかまた中二臭いネタをw
その辺の謎も、シーンを追うごとに明らかになる・・・・・・よね?(ぉぃ
「闇を照らすもの」もスタート、スピンオフ映画もと、未だ衰えることの知らない「牙狼」シリーズ。
異聞譚もまだまだやっていくぜー!
敵前であることを忘れているかのような、獅子丸の素っ頓狂な声が転がる。
『どうした!? ぼさっとしてんな!』
そんな相棒に喝を入れると、うなづきながら剣を握り直し、跳んだ。
「うわっ!?」
『む!?』
その跳躍に、俺のみならず当人までもが驚く。間合いを詰めるべく肉薄するつもりが、獅子丸の……いや、ガオの身体はしれっとホラーを飛び越しちまいやがった。
『おいおい、なにやってんだ?』
「いや、なんか……力が……出すぎてるっていうか?」
なんだそりゃ?
『とにかく、こまけー事ァ後だ。まずは目の前のホラーだろう!?』
「わかってる……よ!」
呑気にくっちゃべってるところを好機と見たか、ホラーが強襲を仕掛ける。とっさに“右手”に牙央剣を持ち替えた獅子丸がその爪による攻撃を受け止め――
『なにっ!』
刃に阻まれる前に、ホラーの掌が“斬られ”ちまった!?
「くっ!」
しかし、ホラーは攻撃の手を緩めない。ひょっとしたら、コイツ“斬られたことにすら気づいていない”のか!?
受け止めているうちに、刃すら返すことなく魔獣の爪が、牙が文字通り削がれていく。
やがて、ホラーの攻撃がぱたりと止んだ。……いや違う。
――武器が、尽きたんだ。
『今だ、斬れ!』
「はあっ!」
腹の底から息を吐き出し、獅子丸が正眼に構えた牙央剣を大きく振りかぶり――真下に振るう。
牙央剣の刃はホラーを切り裂いてなお止まらず地面を裂き、斬撃の衝撃波が草木を薙ぎ払っていった。
「……っはぁ」
四散するホラーを一瞥したのち、獅子丸が鎧を返召し、荒く息をついた。
『……はっは。なかなかどうしてすげえじゃねえか』
「いや……確かに……全力で斬った……けど……あんなに……斬れるはず……ないんだけど……な」
俺の感嘆の声に、肩で息をしながら、獅子丸が返す。やれやれ、褒めてんだから喜んどけよなー。
「それより……今の、鎧召喚した時のアレ……なんだったの? 大きな手甲みたいなのが右腕についてたけど……」
『あー……それな。不意に思い出しただけで、俺もよくわからねえんだ。まぁ、元老院に報告ついでに聞いてみようぜ。俺の元持ち主の手掛かりになるかも知らん』
「そう、だね……でも、ちょっと待って……」
あん?
「なんか……力……入んなくて……ちょっとだけ……休んだら……動けると……思う」
どさり、と片膝をつき、魔戒剣を杖代わりに体を支える獅子丸。その情けない面構えは、さっきまでホラーと渡り合っていたヤツと同一人物には見えない。
『しょーがねえなぁ』
とはいえ、俺自身も妙な疲労感が……肉体なぞ持っちゃいないはずなのにな……?
・
・
・
この時。
疲弊していたからか、それとも相手のほうが一枚上手だったからなのか……
俺たちの様子を陰で伺っている“ヤツ”の存在に、俺も獅子丸も、ついぞ気づくことはなかった。
「……ようやく見つけたぞ。“騎士殺しの魔導具”……!」
-つづく-
自分で考えといてなんですが、“騎士殺しの魔導具”とかまた中二臭いネタをw
その辺の謎も、シーンを追うごとに明らかになる・・・・・・よね?(ぉぃ
「闇を照らすもの」もスタート、スピンオフ映画もと、未だ衰えることの知らない「牙狼」シリーズ。
異聞譚もまだまだやっていくぜー!