炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第3話/シーン3


「相手になる、チェスト!」

 イツツバンバラと戦うイナズマン。強力な火炎放射をかいくぐり、ときに跳ね返し、さながら蝶のように軽やかに鮮やかな戦いを見せ付けた。

「エイジ、俺たちも行くぞ!」

 思わず見とれていたエイジにタクマの声が飛ぶ。それに応え、エイジは自らのうちに眠らせているヴォル細胞を呼び覚ます。

「融機鋼、着装ッ!」

 ヴォルテックスとルシファード、そしてファディータが戦闘態勢を整える。

「うん? ……君たちもミュータントだったのか?」
「いえ、違います。でも……あなたの“仲間”ですよ」

 彼らを視界の端に捉えたイナズマンの問いかけに、ヴォルテックスが否定して肯定する。

「雑兵どもは俺たちに任せておけ。イナズマンは……そこのトーテムポールを頼むぜ!」
「ああ、わかった!」

 ルシファードに促され、イナズマンが大きく頷き、改めてトーテムポール……もとい、イツツバンバラと対峙した。

「くらえ、火柱攻め~っ!」
「逆転チェスト!」

 イツツバンバラの火炎放射を、イナズマンが超能力で文字通り反射させた。自分で放った炎をまともに浴びて、イツツバンバラが悶絶する。

「おのれぇ……ならば!」

 振りかざした左腕の触手を地面にたたきつける。イナズマンの足元で地面が大きく揺らぎ、亀裂が入り始めた。

「死ねいっ、イナズマン! 地割れ振動ッ!!!」
「なっ……しまった!?」

 ぱっくりと口を開けた地割れに滑り落ちるイナズマン。その身体が地の底に沈み、割れた地面がすぐさまピタリと閉じた。

「フッフッフッフッ……イナズマンめ、口ほどにも無い!」
「……そいつはどうかな?」
「!?」

 背後からかけられた声に、イツツバンバラが振り向く。眼前には先ほど葬ったはずのイナズマンの姿があった。

「名づけて、イナズマン・ミラクルチェスト! お前が倒したつもりでいたのは、私の分身だ!」
「ぬぅぅぅ……!?」

 謀られて怒り心頭のイツツバンバラが火柱を放つ。それを躱し、イナズマンがその名の如く稲妻となる。

「超力稲妻落とし! チェスト!!」

 超エネルギーを秘めた雷撃がイツツバンバラを穿つ。

「ぐぅっ……いまいましい……!」

 イツツバンバラの機械の身体が、スパークを撒き散らしながら、最期へと向かう。

「バラバラバラバラァ……」

 とどめの落雷が脳天を貫き、新人類帝国の尖兵は爆裂した。


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「ほぉ……君が、ランちゃんとサキさんを? いや、大変だったなぁ……」

 戦いが終わり、別行動でショッカーを追跡していた本郷と合流したエイジたちは、五郎を連れてアミーゴへと戻った。

「ランが……本当にすみませんでした」
「俺からも礼を言わせてくれ。ありがとう」

 エイジとタクマが頭を下げると、五郎は「男として当然のことをしたまでだよ」と笑って見せた。

「それにしても、仲間がまたひとり増えたんだ。めでたいじゃないか! なぁ、猛?」
「ええ、本当に。これからよろしく頼むぞ、渡!」

 五郎が、本郷が差し出した手を取ろうとした刹那、彼の脳裏に厭な感覚がよぎる。

「なんだ、この感覚は……!?」

 弾かれるように店を飛び出す五郎。突然の展開に仲間たちも言葉を失う。

「おい、どうした? 何か気に入らんことでも……? いったいどうしちまったっていうんだ? 五郎の奴は?」

 立花が首をかしげた。


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「バ~ラ、バラバラバラ、バンバァーッ!」

 五郎の耳に謎の声が届く。満月に照らされた、奇妙な人影がじっと五郎に視線を注いでいた。

「誰だ!?」
「新人類帝国の帝王バンバ!」

 帝王バンバと名乗った人影は、五郎に手を差し出して口を開く。

「渡五郎よ……お前は、優れたミュータントだ。新人類に忠節を尽くして生きるか、逆らって死ぬか……。お前の選ぶ道は、二つに一つ!」

 どちらを選ぶ? と問いかけるバンバ。しかし我らが渡五郎・イナズマンに、そんな甘言は通用しない。

「笑わせるな! 新人類に忠節だと? 返事は、これだっ!!」

 差し出された手を勢いよく払い、念力でバンバを吹き飛ばす。しかし、バンバは不敵な笑みを浮かべたままだ。

「イツツバンバラは倒れたが……新人類は無数にいる。そのことをよく覚えておくがいい! 渡五郎・イナズマン!!」
「っ待て!!」

 バ~ラ、バラバラバラ、バンバー!

 奇怪な笑い声とともに、帝王バンバの姿が掻き消えた。

「消えたか……」

 五郎が、拳を力いっぱい握りしめる。

「だが、俺は勝った! 新人類の一人、イツツバンバラを倒したんだ! 人類を滅ぼそうとする新人類帝国……俺は奴らを許せん! この命のある限り、戦ってやるっ!」

 熱い闘志を胸に、改めて誓う五郎の姿が、満月に照らされた。
 と、五郎の背後でカウベルがなり、アミーゴからエイジが顔を出した。

「あの、どうかしたんですか五郎さん? 立花さんがご機嫌ナナメなんですけど……」
「うん、なんだあれは?」

 続いて店から出てきたタクマの目が、何かを見つける。
 それは少しずつシルエットを拡大させ、派手なカラーリングの車として、彼らの前に現れた。

「これは?」
「五郎さん、この車、ライジンゴー!」

 乗っていた制服姿の少女が、そう言った。

「キャプテンサラーからのプレゼントよ。五郎さんの車です」
「俺の車?」

 オウム返しに問う五郎に、少女はニッコリ笑顔でうなづく。

「今日から、あなたも少年同盟員よ」

 がんばって。と激励して、少年同盟の独特のハンドサインを示した彼女は、テレポーテーションで基地へと戻っていった。

「……でも、なんで“少年”なんだろうね? エイジ」

 ふとわいた疑問を、ランが口にする。それに答えたのはタクマだった。

「恐らくは、子供のときのほうが眠っている超能力を引き出しやすいからだろう」
「それと、もうひとつ……というか、たぶんこっちが最も大きい理由だけど、子供の汚れのない心でしか、正義のために超能力を使えないから……かな」

 エイジが続け、本郷が頷く。

「大人になるにつれて、正義を嘲笑するようになるのは……」
「邪悪なるものが、快楽につながることを知ってしまうためだ!」

 快楽の誘惑は、正しいことに対する心の壁をもろくする。新人類帝国が大人だけを集めているのは、その邪悪な心をコントロールしやすいからなのだ。

「そうですか……。人間とは、悲しい生き物ですね?」
「でもないぜ……?」

 ぽつりと呟いたサキに、タクマがニッ、と笑ってみせる。

「俺たちのような、オ・ト・ナってのもいるからな」
「フフ……そうですね」

 少しおどけたタクマに、サキがふっと微笑む。それを見たタクマが、「やっぱり変わったな」と口の中で呟いた。

「渡五郎……イナズマンか。新人類帝国にとっては脅威。俺たちにとっては、頼もしい仲間だな」

 本郷が五郎に近づき、先ほどは叶わなかった握手を互いに交わす。本郷が噂の仮面ライダーと知って、ひどく驚いたようだった。

「こらッ、お前たち! いつまでも店の前で何をやっとるんだ!」

 カウベルが鳴り、しびれを切らした立花が「さぁ入った入った」と本郷たちを手招く。開いた扉の向こうから漂うコーヒーの香りが、戦士たちに安らぎを与えることを約束していた。

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 ――その名は、渡五郎!
 強力な正義のミュータントが誕生した。

 二段階の変転を遂げ、無限の超能力を得るイナズマンと、空陸両用の万能車・ライジンゴーが組めば、怖いものなど何も無い。

 新人類の野望を打ち砕く、その日まで戦え……自由の戦士イナズマン!!!



   -次回に続く-





 その奇怪ぶりはライダーの蜘蛛男にも匹敵する、ミュータントロボット第1号イツツバンバラ。

 ゲーム中では謎の使い回しをされて倒されても倒されても復活します。ある意味可愛そうなキャラw
 まぁ彼に限らず、ゲスト怪人たちは出場枠に限りがあるので何度でも復活してますがw
 この辺はナガーを利用してうまいこと説明つけられればいいかなーとか。

 さて、分身能力ことイナズマン・ミラクルチェストですが、この技は本来「イナズマンF」になってから新たに加わった能力です。ゲーム中ではいきなり使えるので今回もいきなり使わせてもらっております。便利なのでw

 イナズマンにはこれに加え、相手の攻撃をまるっとお返しする逆転チェストもあり、ゲーム中屈指のチートキャラとなっております。「分身」に至っては、味方ユニットでこれを有するのは彼のみですしね。ニンジャヒーローでもいれば違ったかもですが。
 さらには能力アップがレベル依存なので、武器改造なども不要という、至れり尽くせりを地で行くキャラクター。育てて置いて損がない。
 マクー空間などで動けなくなるのが唯一の弱点ですが、これも強化パーツで補えたりするので、正直穴がなさ過ぎる……スタッフにファンがいたんでしょうねw

 次回は、もうひとりのオリジナル主人公たちである、TDF警備班のエピソードを中心に、少し世界観を掘り下げられれば良いですねぇ。