シーン3:掌/Gimmick
「ぶあっはははははははっ!」
夜の街に、男の笑い声がこだまする。笑われた側……猛竜はというと、珍妙な格好で地面にめり込んでいた。
「……笑ってねーで起こしてくんねえかなオイ」
「悪い、悪い」
笑っている側……猛竜の僚友が、くくくとこみ上げる笑いをこらえながら、ひっくり返った猛竜を引っ張りあげた。
「で、今度は何使ったんだっけ?」
友人の問いに、猛流は装備していた義手を外してみせる。
もっとも、ジョイント部分ががっちりかみ合って外れず、猛竜の身体ごと吹っ飛ぶ羽目になってしまったのだが。
「こないだはドリルに変形したっけ?」
「あー、岩盤ブチ抜こうとしたら食い込んじまって逆に俺が回転した」
苦い顔をする猛竜に再び噴出す僚友である。
「っていうか、なんでそんなトンデモ義手なんて着けてるわけ? 直してもらうんじゃなかった?」
「俺の義手は、今直して貰ってる真っ最中」
そう言いながら、ズダ袋から新たな義手を取り出して装着する。
「こいつは、その交換条件ってヤツさ。あの法師のねーちゃん、興味の湧くまんまに色々作ってんだけど、義手を欲しがる騎士連中からは『フツーのくれ』って言われてて実験出来なかったんだと」
そこで猛竜への“お願い”である。猛竜自身も、面白そうだと安請け合いしたものの、正直全力で後悔している所であった。
「しかし、俺も彼女の“作品”をまともに見るのは初めてだけど、ギミックはともかくよく出来てるね。こっちで剣も握れるんじゃないの?」
「ああ、大体はな。号竜人……つったか? それの応用だとさ」
ガチャガチャと、義手を開いたり握ったりして見せる。その挙動は、手袋などで隠してしまえば完全に人間のそれと見紛うだろう。
「まぁ、フツーのくれっつー奴らの気持ちはよーく解かる……んっ?」
コートのすそを引っ張られる感覚を覚え、猛竜が振り返る。仮面をかぶった子供が、赤い封筒を差し出していた。番犬所からの使い・メメだ。
「おぅ、おめーか。ご苦労さん」
赤い封筒……番犬所からの指令書を受け取ると、メメは煙のように姿を消した。
「新たなホラーの出現です、ってか」
神官の口調を真似ながら、猛竜がポケットの中を探る。指令書の内容を確認するには、魔導火をつかってそれを燃やさなければならないのだ。
「……あっと、そういや火種切らしてたっけか」
「火、貸そうか?」
「あー、頼まぁ……いや、いいわ」
そう言えば。と呟く猛竜に、首をかしげる僚友の前で、猛流は義手の中指と親指を重ねて擦り合わせる……いわゆる、指パッチンをしてみせる。
小さな破裂音とともに、人差し指に魔導火の炎が灯った。お、今度は巧くいった。と笑う猛竜が指令書を燃やし、浮かびあがった指令を読み始める。
「……なんでもありだね、もう」
肩をすくめる僚友であった。
-つづく-
いや嘘ですがw
でもまぁ、彼に使わせた&使わせる予定のトンデモ義手の一部はライダーマンのカセットアームを参考にさせてもらってはいますけどネ。
地味に4期「魔戒の花」から番犬所の使い・メメがゲスト出演。
指令書を持ってくる人間って原典だとゴンザが主だったので、今回は番犬所から指令を受け取るカッコになるかなぁ、と思ってた矢先にメメが出てきてくれたのでこのシーンが書けたと言っても過言ではないかも知れない。
義手ライターは思いつきとは言え、やりたかったネタでしたしw
さて、次回からいよいよまともな戦闘パートに突入予定。
今回の敵ホラーはいかなる魔獣か。待て次戒!