「よう、遅かったな斬」
南の管轄の各所を案内した後、斬と透は番犬所を訪れた。
「ああ。北からの客人を案内していてな。…ええと、なんだ、俺たちが最後かな?」
そうみたい、とあかねが応える。
「さて、そんじゃま全員そろったところで、簡単に自己紹介しときましょうかね。私はみんなのコトは知ってるけど、初対面組も多いみたいだしね」
早速とばかりに場を取り仕切るのは瑪瑙色のコートを纏った女性…もとい、男性。瑪瑙騎士・揚刃<アゲハ>こと御堂光である。
「東の管轄から来た、鬼塚律だ。金剛騎士・殴牙<オウガ>を名乗っている」
「こいつん家は、前にも言ったと思うが造り酒屋だ。赤酒も造れる数少ない名店だぜ?」
紅牙の説明に、ほぅ、と斬が呟く。
「まぁ、コイツ本人はものすげえ下戸で、一口呑んだだけでぶったおれちまうんだがな」
「余計なことは言わんでいい!」
すかさず突っ込む律に、カラカラとわらう紅牙。周囲の空気も穏やかに緩む。
「赤酒か…俺はあまり得意じゃないが、父さんが割と好きだな。久しぶりに呑みたいって言ってたっけ」
「なら、今度送るよ。これを気に、お得意様になってくれればうれしい」
跡継ぎだけあってか、商魂はそれなりに有しているようだった。
「こいつん家は、前にも言ったと思うが造り酒屋だ。赤酒も造れる数少ない名店だぜ?」
紅牙の説明に、ほぅ、と斬が呟く。
「まぁ、コイツ本人はものすげえ下戸で、一口呑んだだけでぶったおれちまうんだがな」
「余計なことは言わんでいい!」
すかさず突っ込む律に、カラカラとわらう紅牙。周囲の空気も穏やかに緩む。
「赤酒か…俺はあまり得意じゃないが、父さんが割と好きだな。久しぶりに呑みたいって言ってたっけ」
「なら、今度送るよ。これを気に、お得意様になってくれればうれしい」
跡継ぎだけあってか、商魂はそれなりに有しているようだった。
「水晶騎士・氷翠<ヒスイ>。雪野透です。北の管轄に属しています」
「そうそう。透とはこないだ閑岱で初めて会ったんだけど、そこでね…」
「わっ、わーっ!」
「そうそう。透とはこないだ閑岱で初めて会ったんだけど、そこでね…」
「わっ、わーっ!」
ケラケラ笑いながら語ろうとする光の口を、慌てて透が抑える。
「?」
「な、なんでもない…なんでも」
「な、なんでもない…なんでも」
ジト汗をかきながらも有無を言わせぬ迫力でそれ以上の追求を遮断する。
「北の管轄なら、いっしょね。私は神薙あかね…」
「碧玉騎士<麗牙>だね。お噂はかねがね」
「碧玉騎士<麗牙>だね。お噂はかねがね」
自己紹介をするあかねに、身なりを正して笑顔を見せる。女性の前に立つ時の、彼なりのポリシーだ。
「噂ねえ…出所は誠太郎くんあたりかしら?」
「ご明察。ま、悪口は言ってなかったよ」
『あのコならまず言わないでしょうけどね』
リルヴァのひとことに、あかねも「言えてる」と微苦笑した。
「ご明察。ま、悪口は言ってなかったよ」
『あのコならまず言わないでしょうけどね』
リルヴァのひとことに、あかねも「言えてる」と微苦笑した。
「さて、そんじゃ改めて。瑪瑙騎士<揚刃>こと、御堂光よ。一応、籍は西の管轄なんだけど、閑岱に出入りしてることが多いわね。…ってまぁ、ここにいるのは、みんな閑岱で出会ったから知ってるか」
「そうだな。…あ、そうだ。この間の魔界斧の修繕の際には世話になった。ずいぶん見違えたんでびっくりしたよ」
「あら、ありがと。私も斧を扱うのは初めてだったから張り切っちゃったわ。またやらせてね」
「あら、ありがと。私も斧を扱うのは初めてだったから張り切っちゃったわ。またやらせてね」
・
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紅牙、次いで斬が自己紹介した後、早速本題に入ることにした。
「目的自体ははっきりしてる。ヤツはただ、強いものと戦って勝つことしか頭にないからな」
事実、この南の管轄でも、先般の東の管轄でも、咎牙はゲートを回収し、そこから現出したホラーをひとりで徹底的に叩きのめしていた。
「問題はどこにいるか、ね。みんなが集まる前にも、私達で探索はしていたけど…手がかりはなかったわ」
「管轄内の魔戒騎士との余計な接触を避けるために人避けの結界でも張ってるとか…かな?」
『それだけなら我らが結界を探知できよう。そういう気配は感じられなかったのか?』
光の相棒たる魔導具・セラが問う。
『残念ながら、ね』
ため息混じりにヴィスタが答えた。
「ヤツは目的を満たすためなら同じ魔戒騎士だろうが、あるいは神官にだって刃を向きかねない。東で戦ったときはわりとすぐ見つけることができたし、接触を断とう、という考え自体ないんじゃないか?」
そう言うのは、この中では唯一咎牙と刃を交えた経験のある律だ。
「まぁ、邪魔をされるのは嫌うみたいだけど」
「で、実際のところ…ヤツの強さはどんな具合だ、律よ?」
紅牙が問うと、律は重々しく唸る。
「…強いな。俺は以前、北の管轄に移る前の<牙狼>…冴島鋼牙と模擬戦をしたことがあるが、正直比較にならない…というか、比較の仕様がない」
「というと?」
「魔戒騎士には、それぞれの固有の太刀筋があるのは、みんなも周知のとおりだ。だが、アイツにはそれらしきものが見受けられない。ある程度太刀筋を覚えれば、牙狼の動きにも、勝てるかどうかは別にしてついていくことくらいはできる。しかしそれがなく、それこそ赴くままに剣を振るわれるとなると、かなり厄介だ。ホラーに剣を持たせているようなモノだからな」
「管轄内の魔戒騎士との余計な接触を避けるために人避けの結界でも張ってるとか…かな?」
『それだけなら我らが結界を探知できよう。そういう気配は感じられなかったのか?』
光の相棒たる魔導具・セラが問う。
『残念ながら、ね』
ため息混じりにヴィスタが答えた。
「ヤツは目的を満たすためなら同じ魔戒騎士だろうが、あるいは神官にだって刃を向きかねない。東で戦ったときはわりとすぐ見つけることができたし、接触を断とう、という考え自体ないんじゃないか?」
そう言うのは、この中では唯一咎牙と刃を交えた経験のある律だ。
「まぁ、邪魔をされるのは嫌うみたいだけど」
「で、実際のところ…ヤツの強さはどんな具合だ、律よ?」
紅牙が問うと、律は重々しく唸る。
「…強いな。俺は以前、北の管轄に移る前の<牙狼>…冴島鋼牙と模擬戦をしたことがあるが、正直比較にならない…というか、比較の仕様がない」
「というと?」
「魔戒騎士には、それぞれの固有の太刀筋があるのは、みんなも周知のとおりだ。だが、アイツにはそれらしきものが見受けられない。ある程度太刀筋を覚えれば、牙狼の動きにも、勝てるかどうかは別にしてついていくことくらいはできる。しかしそれがなく、それこそ赴くままに剣を振るわれるとなると、かなり厄介だ。ホラーに剣を持たせているようなモノだからな」
律の言葉に、鋼牙と剣を交えたり、ともに戦ったことのある紅牙と透が軽く身震いする。実力だけなら<牙狼>にも匹敵するとされる<咎牙>が、太刀筋などないかのごとくあらぶるままに剣を振るう。そのさまは、魔獣…いや、魔神とでも形容したほうがいいのかもしれない。
「正直、俺たちの実力でどこまで対処できるかかなり怪しい。戦うときは、できるだけ全員でかかっていかないといけないかもな」
律がそう締めくくると、魔戒騎士たちは大きく息を吐いた。
-つづく-
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1シーンで伝える情報量がまちまちになりすぎて困る。
テレビ番組を小説形式にトレースしているのが拙いのかも知れないw
とはいえ、もうこのスタイルになれちまったしなぁ……
本格的にモノカキ目指すようになることがもしもあるなら、改めるほうがいいのかも知れんけど。
んー、光と律に関連性を持たせたかったけど今回は入りきらなかった…
次回以降のシーンか、あるいは番外編で日常パート書いてそっちにネタを回すか……
次回以降のシーンか、あるいは番外編で日常パート書いてそっちにネタを回すか……