炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

2014-05-31から1日間の記事一覧

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン4【真鍮騎士篇】

「な……なに、これ?」 敵前であることを忘れているかのような、獅子丸の素っ頓狂な声が転がる。 『どうした!? ぼさっとしてんな!』 そんな相棒に喝を入れると、うなづきながら剣を握り直し、跳んだ。 「うわっ!?」 『む!?』 その跳躍に、俺のみならず…

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン3【真鍮騎士篇】

俺……こと魔導具<アルド>が、魔戒騎士・立神獅子丸の“相棒”となってから、一週間が経過した。 未だ任務には当たってないものの、こいつの“人となり”的なものはだんだんわかってきた。 『獅子丸よぉ……なんで一言の言い返しもしねえんだよ……言われたい放題だ…

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン2【真鍮騎士篇】

オレが阿門のじーさんトコに厄介になってから、数ヶ月が経った。イカついじーさんとの二人(?)暮らしってのも存外悪くは無いもんだね。 ボロボロだったオレの“身体”も修復が終わった。鏡で見せてもらったが、ずいぶんとイケメンになってて驚いたもんだ。 …

【牙狼SS】無銘の友誼:シーン1【真鍮騎士篇】

<アルド> それがあのじーさん……阿門法師からもらったオレの名前だ。 「なんだお前、旧い魔戒語のことも憶えておらんのか? ……“名も無き者”という意味だ」 『!? っテメー、それ結局<名無し>ってことじゃねえか!!!』 かんらかんらと笑ってやがった。……

【牙狼SS】無銘の友誼:プロローグ【真鍮騎士篇】

―――誰だ…… 誰だ、オレを呼ぶのは……? 沈んでいた“意識”が急速に浮上する。ぼんやりとした光が、やがて鋭くなって……オレは目を醒ます。 「……おう、ようやっと起きたか」 『うおわああああああっ!!?』 とつぜんぶつかった視線に驚き、次は馬鹿でかい自分の…

【牙狼SS】血錆の兇刃:エピローグ【緑青騎士篇】

白み始めた東の空を眺めながら、6人の若者たちが思い思いに疲れた身体を地面や樹木に預けている。 人払いの法術は間もなく解ける。日が昇れば、公園の惨状が人目に晒され、ちょっとした騒動になるだろう。 それまでには突き刺さった緑青剣を引き抜き、ここ…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン16【緑青騎士篇】

――真なる烈火炎装 魔戒法師の祖、<炎人>の末裔とも言われる、紅蓮騎士の系譜に伝わる最大奥義である。 鎧に魔導火を纏わせる通常の烈火炎装とは大きく異なり、ソウルメタルを文字通り燃やし、炎の鎧を以って戦う。 今世において、この技を扱えるのは、当代…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン15【緑青騎士篇】

「さあて、そんじゃま行きましょうか!」 優雅に舞う揚刃が、ソウルメタルで造ったメダルを取り出す。魔導火をともし、ぱっと投げ上げ、気合を放つ。念を送り込まれたメダルは、炎の飛礫となって一斉に咎牙に降り注ぐ。 「まだまだいくわよっ」 次々にメダル…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン14【緑青騎士篇】

咎牙と同じく、錆びた銅の色を持った甲蟲の鎧が、少しずつ黒ずんでいく。心なしか、少しずつ大きくなっているようにも思えた。 『ソウルメタルが、デスメタルへと変貌している……』 「デスメタルって、確か闇に堕ちた魔戒騎士の鎧の……?」 相棒の呟きに反応し…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン13【緑青騎士篇】

既に幾合の攻防が繰り広げられたのか。11を最後に、誰もが数えることを放棄していた。 90秒前後を、狼を象った鎧が数体組み合い、切り結び、叩きつけ、かわす。 制限時間ギリギリで鎧を脱ぎ、紅牙たちは身体を休めていた仲間と交代し、肩で大きく息をし…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン12【緑青騎士篇】

「あれが……緑青騎士・咎牙」 「鎧を纏っただけで心が折れそうになる気魄を放ちやがるぜ……ったく、とんでもねえ」 びりびりと皮膚に受ける殺気を感じ、斬と紅牙がごくり、と固唾を呑んだ。 「――来る!」 誰かの声が聞こえた刹那、錆びた鎧が飛び掛り、大きな…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン11【緑青騎士篇】

「律さん……」 突然の闖入者に、驚きとともに一瞬の安堵が、あかねの緊張の糸を切る。力の抜けたその肩を、瑠璃色の袖がそっと抱いた。 「大丈夫、あかねちゃん?」 「光さんも……どうして……」 問いかけに、「そりゃこっちのセリフだわよ……」と光が返しながら…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン10【緑青騎士篇】

人の気配のない……事前に人払いの方術でも仕掛けていたのか……公園に、金属音と打撃音がこだまする。 既に打ち合いは両手の指を使い切ってなお足りないほどの数に及び、周囲の地面や植木には、弾かれ受け流された衝撃の余波による傷跡がいたるところに刻み込ま…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン9【緑青騎士篇】

ふわり、と不意に譲一郎の黒衣が風圧に揺らぐ。 「……!」 咄嗟に、あかねが前傾姿勢になる。“無形の位”……構えなき構えをを得手とする彼女ではあったが、噴き上がる殺気が彼女に僅かながら恐れを抱かせ、それが身体を動かしてしまったのだ。 刹那、佇む譲一郎…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン8【緑青騎士篇】

日没から、数時間が経過した。 間もなく大気に漂う陰我の密度は最高潮に達するだろう。 そんな闇夜の中を、魔戒騎士の正装たるコートが、三つ翻る。 「今のところ、妙な気配はないみたいね」 「……だな」 先んじた女性のような男の声に、静かに別の男の声が答…

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン7【緑青騎士篇】

騎士たちが南の管轄に集結し、一夜が明けた。 紅牙の提案に乗り、ローラー作戦を以って咎牙を追跡することにした彼らは、早速ペアを組み、管轄の南と北から作戦を開始した。 「そっちはどうだった?」 「特に異常は無かったな。周囲に気を配っても見たが、付…