炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【牙狼SS】血錆の兇刃:シーン2【緑青騎士篇】

 分厚い雲に覆われ、文字通りの闇夜が訪れる。
 南の管轄のはずれ、建設途中で放棄されたビルの中に、彼はいた。

「…さて、これぐらいあれば当分は遊べるか?」
 低く呟いて、黒衣の男―――緑青騎士・咎牙が集めたオブジェの群れを一瞥する。

 その全てに<陰我>を有し、<ゲート>と化したそれは、瘴気を溜めに溜め込み、いつホラーが現れてもおかしくない状態になっていた。

『…譲一郎』
「おう」
 譲一郎と呼ばれた男が、眼帯を外す。その下には、本来あるべき右目が無く、ソウルメタル製の髑髏を模したアクセサリが埋め込まれていた。彼のパートナーたる魔導具<ナラカ>である。
 旧き魔戒語で<視線>を意味するそれが、じっとゲートに視線を注ぐ。
 やがて、ゲートが活性化し、そこからわらわらとホラーが現出しはじめた。

「ひのふの……ざっと30ってとこか」

 譲一郎の口元が享楽に嗤う。黒衣から大降りの魔戒剣を取り出し、その鞘を抜き捨てた。

「ホラー共……まとめて俺が喰らってやる……!」


  *


 ―――時間にして、おおよそ90秒。

 <タイムリミット>ギリギリをもって、ホラーの群れを全て屠った譲一郎が、息一つ乱さず佇んでいた。

「……フン」

 鼻を鳴らし、纏っていた鎧を返召する。

「癒えん…な」

 右手を数度握ったり開いたりを繰り返し、呟く。

 なまじ相手にしたのが素体ホラーばかりであったからなのか、譲一郎は不完全燃焼であるらしかった。
 戯れに数体、抜け殻のゲートに憑依させ強化を図ったものの、それですら足りない。


『やはり、自然に現れるのを待ったほうが良いのではないか?』
「俺を飢えさせる気か、ナラカ?」
『…まずい飯をこまごまと喰うより、うまい者をたらふく喰ったほうが良いと思うがな』

 ため息混じりに呟くナラカを無視して、眼帯を付け直す。

『どこへ?』
「寝る」

 思うままに戦い、思うままに喰らい、思うままに寝る。

 それは、人が久しく忘れている<本能>と呼べるものであろうか。

『寝るのも結構だが、その前に武器の浄化をすべきだな』
「…やれやれ、面倒くせぇな」
 懐から取り出した胡桃を噛み砕きながら、譲一郎が再び魔戒剣を取り出した。



   -つづく-



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 緑青騎士・咎牙<トガ>こと、呉桐穣一郎。
 中の人のイメージは…やっぱエンケンさんこと遠藤憲一かなぁ。
 湯けむりスナイパーとかあんまり見なかったけどシブすぐる。
 あの眼光が出せる俳優さんはそうそういないと思うよ。

 一方、相方の魔導具・ナラカのイメージボイスは中田譲治氏。
 あーかーいーあかーい 赤い蛙は…(違
 当方、声優としてよりは大教授ビアス様の印象が強いのですがw
 「今日は地球はお盆だ」発言とか。


 しかしなんだこのナイスミドルコンビw