背中にちくちくと突き刺さる感覚を覚えながら、エイジはひたすらに歩く。
やがて、人気の無い開けた場所に出る。閉店したはいいが、次の当てがなく廃ビルと化したスーパーの跡地であった。
「…あら、デートスポットにしては気の利かないチョイスねぇ?」
妖艶な女性の声が背中を這う。振り返ると、タイトなイブニングドレスに身を包んだ妙齢の女性が佇んでいた。
「……この間の蟷螂の仲間か」
「まぁ、そんなところかしらねぇ?」
「まぁ、そんなところかしらねぇ?」
ちろり、と赤い舌を出して笑う。
「ということは、お前も俺を連れ戻しに来た……」
「そーいうこと」
「そーいうこと」
その姿が“ブレ”はじめ、女性の姿が、蟷螂を模したそれに変わる。
「…!」
「おとなしく着いてきてくれればいいんだけれど…そうもいかないんでしょう?」
手にした2本の鎌を器用に回し、その切っ先をエイジに向ける。
「おとなしく着いてきてくれればいいんだけれど…そうもいかないんでしょう?」
手にした2本の鎌を器用に回し、その切っ先をエイジに向ける。
「くっ…」
「大丈夫よ…ちょっと手足を切り取って、おいしくいただいちゃうだけだから……」
「大丈夫よ…ちょっと手足を切り取って、おいしくいただいちゃうだけだから……」
蟷螂の眼が、享楽に光る。刹那、その姿が掻き消えた。
「!」
否、驚異的なスピードで以って肉薄してきた。
咄嗟に両手を突き出し、刃を止める。鈍い金属音が走り、エイジの掌の表皮を剥いだ。
否、驚異的なスピードで以って肉薄してきた。
咄嗟に両手を突き出し、刃を止める。鈍い金属音が走り、エイジの掌の表皮を剥いだ。
「あらあら…さすがは<ジェノサイドロイド>…頑丈ねぇ?」
「くっ…」
「くっ…」
強い…素直にその感情が頭をよぎる。
(今のままじゃ太刀打ちできない……どうすれば…?)
……と、先日の蟷螂男との戦いを思い出す。
(俺も……“変われる”なら……“変われば”……!)
後方に跳び、蟷螂女と距離をとる。
「…ふんっ」
地を掴まんばかりに足をしっかりとつけ、腹に力をこめる。
地を掴まんばかりに足をしっかりとつけ、腹に力をこめる。
「うおおおおおおおおおっ!!!」
先の戦いを思い出しながら、“変身”した自分自身の姿をイメージする。
(怒れ!怒れ! あのときのように……俺の姿を…変えろ……っ!!!)
しかし、あわ立った感情が体温を僅かに上げるのみで、その体に変化は起こらない。
(!? 変わ……れない?)
「曲芸は終わりかしら?」
耳元で声がした刹那、銀色の軌跡が目の前に迫る。咄嗟に頭を低くし交わしたが、次の瞬間足を払われ、コンクリの床を転がった。
「ぐはっ!」
「ふぅん…どうやら、変身がコントロールできないみたいね。もし変身されたらちょっとヤバかったかも」
よろよろと立ち上がるエイジに、蟷螂女が意地悪そうに微笑んだ。
-つづく-
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変身シーンのお披露目はもうちょっと先になるかなw
さて、変身できないエイジはどう動く…?