炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

第1話/シーン13

「……イチ…ウイチ…」

 声が…聞こえる…

「コウイチってばぁ!!!」

 次の瞬間、キンキン声が至近距離で響き、コウイチの意識が跳ね上がった。

「な…?」
 身体は起こせなかった。鈍痛が全身を支配し、指一本動かすのすら億劫だ。
 僅かに感じる揺れと、眼前に浮かぶ空が、自分の身体が担架に乗せられ運ばれていると教えていた。

「…イ…オリ…?」
 そして。
 自分の名を叫ぶ、幼なじみ。
 今にも泣きそうな、若しくは怒りそうな顔で。

 ああ、そうか。
 合点がいった。

「…悪いな。お前の造ったVFS、墜としちまってよ」
 自分自身はなんとか無事だったが、機体に傷をつけてしまった。
 コイツが、全身全霊をかけて造り上げた、大事なモノだっていうのに。
「ホントに…すまん」
「…バッカぁ!!!」
 謝っていたのに、怒られた。
「はぁ…?」
「機械なんて、直せば済むじゃない! でも…でも! コウイチは死んだら戻ってこないのよ!?
 大怪我したら、治んないかもしんないのよ!
 なのになんで、自分よりシルエットのこと心配してるのよぉ…!」
 瞳に大粒の涙を浮かべながら、コウイチを罵倒するイオリ。
「…そう、だな」
 ズキズキする右腕をムリヤリに持ち上げ、イオリの頭をぽふっと撫でる。
「悪い。心配…かけた」
「べっ…! 別に心配なんか…」
 頬を紅く染めてそっぽを向いた。

「さぁ、早く戻りましょう。一刻も早くセガワ隊員を休めないと」
 担架を持っていたクルーの一人が急かした。イオリは頷くと、コウイチから離れ、乗って来たヘリへと戻る。
「タキダ隊員、戻りますよ!?」
「…あ、ああ」
 珊瑚礁でぼーっと突っ立っていたシンジロウに、もう一人が声をかけ、担架に乗ったコウイチをヘリへ運んでいった。




「…銀色の巨人、か…」

 まるで…


「―――みたい、だな」
 最後にシンジロウが呟いた言葉は、海風に消されて飛んでいった。





  ウルトラマンスパーク・第1話:了




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 怪獣、そして巨人の出現から数日。
 休暇をもらったコウイチはイオリとともに市街へと向かう。
 ところが、そこでまた新たな怪獣が現れ―――!

 次回「その名はスパーク」
 その魂に輝きを込めて、立ち上がれウルトラマン


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 はい、お待たせしましたの第1話・完!
 はたして今後ちゃんと続くのか否か…(蝶トオイメ

 まぁ、がんばってみるかな。




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 ↑web拍手です。次回への希望を抱いて、今後もがんばりますよ(謎