炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【SS】みなみ☆……………好き、です。【らき☆すた~陵桜学園 桜藤祭】

「…先輩」
 声をかけられ、振り返る。

 視界に飛び込むのは、一番逢いたかった子の姿。
「やぁ、岩崎さん」
 待ってたよ…の言葉を飲み込む。
 岩崎さんも、その思いはきっと同じだろうから。


「…いつだったか」
 ふと、岩崎さんが呟くように言の葉を紡ぐ。
「私たちは、この気持ちがなんなのか…よく、わかっていなくて」

 ―――そう。
 だから、俺はこう言った。


  『わかるまで付き合うよ』

  『あ、いや……わかってからも……付き合いたい……かな』


「でも…今は」
 そう、今は。

 繰り返された時間の中で、幾度となく彼女との想い出を作ってきた“今”は。

「この想いの意味…それから、その先も」
「うん。わかってる」
 それはもう、十二分に。


「それじゃ…」
 肩を抱き寄せ、近づく。
 頬を桜色に染めた、彼女の傍は…とても暖かい。
「答え合わせ、しようかな?」

 二人して、深呼吸。

 それから…


「「好き」」

 岩崎さんの「…です」と小さく言いかけた声は、重ねた唇に閉ざされた。





     らき☆すた~陵桜学園 桜藤祭~ After Episode
     想い出のつづき
     岩崎みなみの場合~きれいに☆なりたい~





 桜藤祭が終わって、一月あまり。
 そろそろ受験シーズン真っ只中といった感じで、季節にあわせたように、周囲の空気も引き締まってくる。
 まぁ、ウチのクラスはもとがもとなのでゆるーり感は否めないのだけれど。

 というか、今の俺は正直それどころではない。



 みなみちゃんが、構ってくれない。



 …と言うと、なんか俺ダメ人間みたいだが、実際そんな感じだ。
 まぁ、構ってくれないと言うか、なんというか…避けられてる? ような。

 ここ1週間、ろくに口も利いてない。電話してもつながらないし、メールしてもなしのつぶて。

 …早くも倦怠期ですか、俺たち?


「…うんうん、ゆーちゃんから話は聞いてるよ。この私にどーんとまっかせたまへー☆」
「…お願い、します」


 …うん?
 廊下の片隅にて聞き覚えのある声。こなたさんと…みなみちゃん?

「みなみちゃん!」
「…!」
 俺が声をかけると、みなみちゃんがびくっとして固まる。
 …かと思うと、こなたさんに二言三言伝えて…走り去っていってしまった。

「…なんで、だよ…」
 呼び方か? 呼び方が悪いんですか?
 そりゃ、ちゃんづけとか恥ずかしいのかもしれないけど、それでいいですって言ったのはみなみちゃんだぞ。

「あ、ゆうきくん。おはよ」
 脳内で悶絶しまくる俺にこなたさんが声をかける。…人の気も知らないで…
「おはよ。…って、こなたさん。みなみちゃんと何話してたの?」
 そう問いかけると、こなたさんは妙に意味深な笑みを浮かべて

「…ナ・イ・ショ♪」

 とだけ言って、さっさと教室に入っていった。




 …オイ。



  *


「むー…」
 帰り道を、独り歩く。

 結局、その日一日こなたさんから情報を聞き出すことはかなわなかった。
 ふと思い立って、小早川さんや田村さん、パティさんにも聞いてみたのだが…

 口をそろえて「ナイショ」の一言で済まされてしまった。

 …あ。小早川さんだけ最後に…


  『ナイショですけど…きっと、先輩にとってはいいことですよ?』


 …だって。

「にしたって…俺に少しぐらい相談してくれたっていいのにな」
 仮にも…というと語弊があるけど…彼氏なんだしさ。


   rrrrr…

「?」
 メールだ。…っと、こなたさんから?


     【放課後、私がバイトしてるコスプレ喫茶に来て! 来ないと絶対後悔後の祭り!!】


「なんだそりゃ」
 ったく、こっちはそれどころじゃないってのに…
 とはいえ、絶対後悔とまで言われると…気になってしまう。
「…まぁ、行ってみますか」
 了解、と返信して、一路、コスプレ喫茶へ。

  *

 扉を開けた途端、出迎えてくれたのはハルヒコスプレのこなたさんとみくるコスプレのパティさん。
 …だけでなく、かがみさんたちや小早川さんたちまで一緒だった。
「今日、なんかイベントあったっけ?」
「うん、今日限定の特別イベントね♪」
 ちょっと待っててね、と奥にひっこむこなたさん。
 と、奥のほうから小さく声が聞こえてきた。




 「…あの、いくらなんでも…この格好は…やりすぎかと…」
 「いやいや~。やりすぎかなって思うくらいがちょーどいいんだよ♪ ほらほら、ゆうきくんも待ってるよ?」
 「あ…押さないで…くださ…」



 次の瞬間

 ―――言葉を、失った。


 俺の眼前に、みなみちゃんがいた。
 それも、純白のウェディングドレスにその身を包んで。
 エクステっていうのだろうか。付け毛でロングヘアーになった彼女は、いつもの雰囲気とは全然違っていて…


「…って、ほらゆうきくん。感想感想」
 こなたさんに促され、はっと我に返る。

「っと…その…すごく、綺麗だよ」
「ぁ……」
 お互いに照れて、その後の言葉が続かない。



「…でも、なんでまた?」
「ゆうきくん、それは聞くだけヤボってもんじゃない?」
 こなたさんに怒られた。
「みなみちゃんはね、キミのためにもっと綺麗になりたい、かわいくなりたいって相談にきたんだよ」
「最初は、私に相談しにきたんだけど…あんまり役にたてなくって…」
 申し訳無さそうに目を伏せる小早川さんに「そんなことない…」とみなみちゃんがフォローする。
「で、私に白羽の矢が立ったわけなのだよワトスンくん」
 だれがワトスンだ。
「それで、これなのか…」
 改めて、みなみちゃんを見る。

「あの…」
 おずおずと、みなみちゃんが声をかける。
「…私……もっと可愛くなります…綺麗になります…」
 きゅっ、と、俺の手を握る。

「先輩の望む…私になりたいんです……」

 俺の望む…みなみちゃんか…
 だったら、そんなのはとっくの昔になっている。

「…今のままで」
「え?」
「ありのままの、みなみちゃんが…俺は好きだ」

「…うわぁ、私の努力全否定~?」
 後ろでこなたさんの抗議の声が聞こえたが、気にしない気にしない。

「背伸びする必要、ないよ」
 俺にとって、みなみちゃんは…充分魅力的だから。

「…でも」
「?」

「俺の為に、綺麗になろうって想いは…すごく嬉しい、かな」
 ふわりと、みなみちゃんの頭を撫でる。
「あ…」
 一気に耳まで真っ赤になるみなみちゃんが、猛烈に可愛い。



「ねーねー」
 …ったく、いいところなのに。
「…なに、こなたさん?」
「邪魔されたからって怒んないでよ。…せっかくだからさ、ゆうきくんも着替えてみない?」
 唐突な提案。
「何に?」
「タキシード」
「誰が」
「キミが」
 …どっかでみたようなやり取りだな。

「いやー。せっかくみなみちゃんがウェディングドレス着てるんだからさ。ゆうきくんも揃えて、結婚式しちゃおうよ♪」

 …………マジデスカ?

「わぁっ、おもしろそう!」
「これは…いいネタになりそうっス!」
「コナタ、GJ!」

 うわぁ、みんな乗り気だよ。

「…あの…」
 くい、と俺の袖をみなみちゃんが引っ張る。

「先輩さえ……よければ……その…」
 …はは。そんな上目遣いで言われちゃ、断りようがないじゃないか。

「うん、やろうか。…結婚式!」
「…………はい!」

 手にしていたブーケより可憐な、笑顔の花が咲いた。



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 以上、みなみ編でしたー。
 実はギリギリまで呼び方は悩みました。
 恋人になってまで「岩崎さん」じゃいくらなんでもよそよそしいし、
 だからって呼び捨てにはし辛いし…ということで折衷案。

 …いや「みなみさん」でも良かったんでしょうけども。

 ま、いいか(ぉぃ

 次回は…どうしよ?
 つかさかゆたかあたりになるかな~マジで未定だわ。

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 ↑web拍手…です、先輩…