炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

そのよん/あばんたいとる

 ―――待ちに待った放課後が来た。

 大急ぎで飛び出した私は、いつもどおりに康助さんのところへ向かう。

 今日も一緒に帰って…そ、そろそろ手くらい繋いじゃってもいいかな…な、なんて思ってみたり。えへへ……。

 …あ、康助さんいた!
 丁度教室から出るところだったみたい。うん、今日もタイミングばっちり。

「こーすけさ……」

 かけようとした声が止まる。

 ……瑞希さんと、一緒だ。

 咄嗟に物陰に隠れて、様子を窺う。
 …あれ? なんでわたし、隠れてるんだろう?


 康助さんが瑞希さんに何か話しかけてる。
 耳を澄ませてみる。


「遊園地?」
「あ、うん。ゆ、優待チケット手に入ってさ。2枚。一人で行くのもなんだし……もし良かったらなんだけど、今度の日曜…どうかな?」
 少しどもりながら、康助さんがそう言う。これって…もしかしなくてもでーとのお誘い…だよね?

 瑞希さん……どうするんだろ?
 ……断って、くれないかな……

「うん、いいよ」
 ……あ。
 瑞希さんがにっこり笑顔でそう応えた。

「ほ、ほんと!? は、はは…良かったあ…」
 康助さんも嬉しそうな笑顔を見せる。

 …康助さんの笑顔は好きだけど、今は…なんかヤだ。

「それじゃ、日曜。駅前で…そうだな」
「10時くらいでいいかな?」
「あ、うん。それで」

 楽しそうに会話する二人。完全に出るタイミング、逃しちゃったな…

「……康助さんと遊園地、かぁ」



「ふむふむ。アイツも結構積極的になりおったのぉ」
「あの杠葉をデートに誘うだけならいざ知らず、承諾までされたとはね。こいつは脈アリと見ていいんじゃねえ?」

 ―――背後から声!?

「…って、藍川さんに狩野さん」
 びっくりしたぁ。いつの間に背後にいたんだろう。くノ一としての自身がちょっと揺らいでしまう。

「気になる?」
 藍川さんの言葉が胸に刺さる。…気になる。ものすごく。
「ふむん。……じゃ、着いてってみようぜ」
 …え? 着いて行くって…お二人にですか?
 いや、でもデートのお邪魔になるわけには…

「こっそり行って、遠くから見物…もとい、見守るンだよ。ま、要は尾行だわな。俺らも康助と杠葉のことは気になるし。…な、風間」
「なっ!? …だから私に振らないでよ」
 縁ちゃんまで…。
「で、どうする?」

 ……康助さんと瑞希さんのデート。

 あの二人の仲良いところを見るのは…ちょっとヤだけど…

「…行きますっ。行きますです!」

 逆にこれはチャンスかもしれない。
 康助さんの好きなものとか、いろいろわかるかもしれない。
 そうしたら、わたしだって……!

「うし、決まりだな。じゃ、10時前に現地集合ってことで」
「変装して行った方がいいか?」
「目立たないようにしとけよ。尾行ばれたら意味ねーんだから
さ」

 大丈夫。わたしはこれでもくノ一。尾行だってお手の物だもんっ。

「…すずっち?」
「がんばりましょうね、縁ちゃんっ!」
「…え? あ、ああ……うん」

 康助さん。……覚悟しておいてくださいですですっ!




   かのくの:そのよん/トラブる遊園地




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うむ、随分と久しぶりになっちまった。
しかし、アバンタイトル(導入部)にしちゃ長くしすぎたような(汗

康助が思いのほかハイスペックになってきた…
俺こんな風にさらっとデートになんか誘えねえよorz

…いやまあ、それでも康助いっぱいいっぱいだったと思うけどね。