ディケイドSSシリーズ「A.R.WORLD STORYS」のシンケンジャー編を、マイミクのシムテック氏より寄稿いただきました。
まったくネタが思いつかなかったので、まさに願ったり叶ったりでw
シムテックさん、改めてありがとう御座います!
それでは、どうぞ!
↓
↓
↓
↓
↓
--------------------------------
暑い夏の昼下がり。
志葉家当主、丈瑠の自室。
庭に面した障子扉が荒々しく開かれると、部屋の主がまさに苦虫をかみつぶしたような顔で入ってきた。
そして怒りを畳にぶつけるかのような勢いでドスンと座り込む。
「ったく、あのガンコジジィ!」
珍しく毒づく丈瑠。
「もう、知るか!!」
吐き捨てるように言い、そのまま机の前で大の字になる。
不機嫌の原因は爺・彦馬との喧嘩だった。
丈瑠の家臣で、父親代わりでもある彦馬は重度の腰痛を患っている。
本当であれば定期的に病院へ通わなければならないのだが、丈瑠達の留守を預かる立場の彦馬はなかなか病院へ行こうとはしなかった。
ある出来事から、あまり病院通いを無理強いしないよう努めていた丈瑠だったが、それにも限度があった。
また新たにギックリ腰でも起こしたのであろう、夕べなどは黒子達の肩を借りねば歩く事すらままならぬ有様だった。
見かねた丈瑠が先ほど、病院へ行くよう言いつけたのだが、またもや彦馬は頑といて言うことを聞かない。
結局、行け、いや行かない、の押し問答は口ゲンカへと発展したのだった。
(ガンコジジィ……か……前にも言ったことあったっけ)
一人の飄々とした男の顔を思い出す。
そう、「あいつ」と出会った時の事だ。
俺達の「世界」を風のように通り過ぎていった「あいつ」と……
思えば俺とあいつは似ているのかもしれない。
今まで、ただひたすらに侍の道を歩いてきた自分。
しかし、流之介達と共に戦うようになってからは、新しい出会いと発見の連続だった。
いまやお馴染みとなった流之介と千明の喧嘩。
筆舌に尽くしがたい茉子の料理が起こす騒動。
丈瑠や爺まで巻き込む源太の空回り。
それらを幸せそうに見守ることはの笑顔。
そんな彼らと過ごす時間の中で、丈瑠は自分が少しづつ変わっていっているのを感じていた。
きっとあいつもそうなのだろう。
最初に出会った時と、別れ際のあいつでは、少しだが確実に何かが違っていた。
それが何かは解らない。
だけどきっとあいつも変わっていっているのだ。
新たな世界を巡る旅の中で。
今なら解る。
それを感じたから、自分はあいつを受け入れたんだということを。
俺と似ていると言ったなら、あいつはどう答えるのだろう?
「俺は世界の王になる男だ。殿様ごときと一緒にするな」
とでも言うのだろうか?
そう考え、苦笑する。
きっとあいつは今もどこかで、あの尊大さを失わないまま、学び、変わっていっているのだろう。
丈瑠は起きあがると再びあぐらをかき、一つ伸びをした。
「俺も、もっと変わらなきゃな……」
そうつぶやき、筆をとると、目の前の紙に自然と筆を走らせた。
さらさらと二つの文字が書かれていく。
そして筆を置くと、自分の書いた文字を見て再び苦笑した。
(さて……と…)
丈瑠は立ち上がり、部屋を出た。
爺が愛用している湿布を買いに行く為に。
開け放たれた障子扉から、無人となった丈瑠の部屋に一陣の風が舞い込む。
その風に乗り、丈瑠の書いた
『変身』
の二文字の「書」が庭から青空へと舞い上がっていった。
まずはこれまで。
--------------------------------
To be continued next WORLD…