炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【らき☆すた掌編】ぶらいんど☆たっち【桜藤祭】

 放課後。

 無人の教室に、一人残る俺。

「…………」

 机の上に広げられた、分厚いハードカバーの本の中に宿る世界に、思いを馳せ、活字を追いかける。

「……ふぅっ」

 やがて、全てのページを読み終えた俺は、溜息と共に本を閉じる。ぽんっと、乾いた音が誰もいない空間に響いた。

 なかなかに読み応えのある物語でした。
 普段読んでるのはいわゆるラノベとかだけど、こーいう古典文学も面白いものだ。

「んーっ!」

 本に集中し、凝り固まった身体を伸ばしてほぐす。

「さて、帰ろうかな…」
 そう呟き、鞄を取ろうとした僕の視界が―――


 急に閉ざされた。


「だーれだ?」




    ぶらいんど☆たっち





 耳元でふわりと声。

 すこしかすれたような、それでもしっかりとした声。
 目を覆うのは、柔らかくて暖かな手。

 そして、俺はこれらの主をよーく知っている。

「……みなみちゃん」

「せ、正解……です」
 復活した視界を後に回すと、恥ずかしそうに俺の恋人が佇んでいた。


   *


「それにしても、なんでまた?」

 自分で言うのもなんだが、僕たちは“恋人”と呼ばれる関係の割にスキンシップが乏しい。
 まぁ、彼女の性格を考えればさもありなん、だけど。
 それでも、一応手を繋いだりとか、キスとかはしてるけどね。

 それを、だ。

 俺がやるならともかく、彼女のほうから「だーれだ?」なんて…と。

「……泉、先輩が」

 折角恋人同士なんだから、もーちょっとスキンシップしたらどう? とはっぱをかけたらしい。
 やっぱりというか、こなたさんの差し金か。

 ……いいぞもっとやれ。

「…先輩?」
「いや、なんでもない」

 ひとり小さくガッツポーズをしていると、みなみちゃんが首をかしげていた。

「……それで」
「うん?」
 目を伏せて、みなみちゃんが問いかける。
「その……嬉しかった、ですか?」

 うわ、それでそこ聞いちゃいますか。

「……う、うん」

 本当はストレートに嬉しいって言いたいところではあったけど、みなみちゃんが照れているのを見るとこっちまでつられて照れくさくなってしまう。

「……よかった」

 と、みなみちゃんが心から嬉しそうに微笑んだ。
 きっと、世界中で俺だけが見れることのできる、彼女の笑顔。

 …なんて、ちょっとばかりうぬぼれだろうか。

「…ね、みなみちゃん」
「?」
「ちょっとむこう向いて」
 言われるまま背中を向ける彼女。その背後から、そっと手を伸ばし―――

「だーれだ」

 今度は俺がやってみる。

「……くすっ」

 小さくみなみちゃんが笑い、それから

「…ゆうき先輩、です」

 と、答えてくれる。

「ん、正解」

 目隠しにした手を外し………

「…あっ」

 そのまま、後から彼女を抱きしめる。

 心臓の位置が重なり、二人の鼓動も、重なって聴こえる。

 それはみなみちゃんも同じようで、そっと目を閉じ、心音に耳を傾けているようだった。

「……先輩」
「なに?」

 そっと、みなみちゃんの手が、俺の手に重なる。

「……大好き…………です」

「ん、俺もね」

 と、みなみちゃんの機嫌が、少し悪くなる。

 コホン、と咳払いをして。もう一度。

「俺も、大好き」

 そう言うと、みなみちゃんはとても穏やかな笑みを浮かべ、俺に体重を預けてくる。


 夕暮れの陽光が、窓越しにふたりを照らしていた。



-------------------------------

 俺の背中に立つんじゃねえ! な人には一生縁が無いよね、このイベント(何

 てなわけで、今回のテーマは「だーれだ?」

 トゥルーラブストーリーシリーズの系譜ではほぼ常連ともいえるこのイベント。ちゃんと「アマガミ」にも実装されてて嬉しかったw

 さておき。

 今回、日記タイトルにてキャラ名を表記してなかったのは、折角の「だーれだ?」ネタだったので、ギリギリまで隠したかっただけです。

 まさか彼女だったとは思うまい…とほくそえみながら書いてましたが、皆様の予想はいかがだったでしょうか?

 最初はやっぱりつかさかなーとか思いながらプロット練ってたんですが、ありきた過ぎる気がするので急遽ヒロイン変更になりました。

 今後もこんな感じでいちゃラブ書いていけたらいーなー、などと。