炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

Chapter:1/Scene:4

 目の前で起こった出来事に、三姉妹は言葉を失った。

 街に、白磁の鎧を煌かせ……人型のロボットとしか形容できない巨体が現れたのだ。

「な、なにアレ…?」

 と、まひるの視線が、その“ロボット”に飛びつく人影を捉えた。

「あれは…通之介?」


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「っは!」

 ロボット…シュ・ヴェルトと呼んだ…の、咽元にある赤い球体に触れると、通之介の身体は吸い込まれるように内部に移る。

「……久しぶりだな、“相棒”」

 呟くように言う。視界がリンクし、シュ・ヴェルトが視る世界が、通之介の眼に重なる。前方に立ちはだかるボーンゴーレムを睨みつけ、シュ・ヴェルトの眼が光った。

「よおっし、いくぜ!!!」

 コックピット内の球体に触れ、自らの思考と魔力を注ぎ込む。と、シュ・ヴェルトが命を吹き込まれ、動き出すのだ。


「…動、いた!」
 まひるの咽が、知らず唾を飲み込む。

「おりゃああああ!」

 シュ・ヴェルトの足が、その巨体からは想像もつかない軽やかさで駆け、ボーンゴーレムに肉迫する。刹那、振り上げた腕が、ウエスタンラリアットよろしくゴーレムのあばら骨を直撃した。

「やった…!」
 いつも淡々と喋る妹が、珍しく上ずった声を発する。強烈な衝撃を叩き込まれたボーンゴーレムがぐらりとたおれ、盛大な破砕音をたてた。

 一方、コックピット内の通之介は荒く息を吐いていた。

「……はぁ、はぁ…ったく、“一人”じゃやっぱこうなるか」

 魔力を注ぎ込む掌から、一気に力が吸い取られているような感覚に陥る。

「それに……」

 ボーンゴーレムに目を向ける。倒れ臥し、体中にヒビが入っていたはずの体は、何時しか修復され、よろよろと立ち上がっていた。

「くそ、やっぱ“魔法”を遣わないとダメージを与えられないか……」

 歯噛みする通之介。シュ・ヴェルトを動かしているのは通之介自身の“魔力”であるが、それは電池と同義であり、魔法を用いた攻撃をしなければ、たとえ蹴りやパンチがマトモに当たっても、それは効果的なダメージにはならないのだ。

「こんなとき、“あいつ”がいてくれればな……」

 この場にいない人物に思いを馳せ、しかし一瞬でそれを振り払う。

「しょうがない。今できることを、精一杯やってみるまでだ。……じゃなきゃ、“あいつ”に怒られっちまうからな」

 ふっ、と唇を僅かに笑わせ、通之介が呟いた。


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「あらあら~街中が骨だらけになっちゃうと、野良犬さんたちがたくさん出てきそうね~」
 姉がどこかズレた発言をする。が、散らばった骨が行き着く先はそればかりではない。

「街が…!」
 視線の先で、飛び散った破片が、家やビルを傷つけていく。

「あンの馬鹿……」

 唸るように呟くと、まひるがカーディガンを羽織って部屋を飛び出す。

「何処行くの、お姉?」
「あいつんとこ! バカやってるの止めるの!!!」

 そう言い残し、サンダルをつっかけて走る。

「ちょ、ちょっとまひるちゃ~ん、パジャマのまま出ちゃだめよ~」


 姉の声がする頃には、既にまひるはそれが聴こえる範囲にはいなかった。




   -つづく-



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 2年ぶりにネタを掘り起こす。
 どんだけ待たせてるねんとw

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