目の前で起こった出来事に、三姉妹は言葉を失った。
街に、白磁の鎧を煌かせ……人型のロボットとしか形容できない巨体が現れたのだ。
「な、なにアレ…?」
と、まひるの視線が、その“ロボット”に飛びつく人影を捉えた。
「あれは…通之介?」
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「っは!」
ロボット…シュ・ヴェルトと呼んだ…の、咽元にある赤い球体に触れると、通之介の身体は吸い込まれるように内部に移る。
「……久しぶりだな、“相棒”」
呟くように言う。視界がリンクし、シュ・ヴェルトが視る世界が、通之介の眼に重なる。前方に立ちはだかるボーンゴーレムを睨みつけ、シュ・ヴェルトの眼が光った。
「よおっし、いくぜ!!!」
コックピット内の球体に触れ、自らの思考と魔力を注ぎ込む。と、シュ・ヴェルトが命を吹き込まれ、動き出すのだ。
「…動、いた!」
まひるの咽が、知らず唾を飲み込む。
「おりゃああああ!」
シュ・ヴェルトの足が、その巨体からは想像もつかない軽やかさで駆け、ボーンゴーレムに肉迫する。刹那、振り上げた腕が、ウエスタンラリアットよろしくゴーレムのあばら骨を直撃した。
「やった…!」
いつも淡々と喋る妹が、珍しく上ずった声を発する。強烈な衝撃を叩き込まれたボーンゴーレムがぐらりとたおれ、盛大な破砕音をたてた。
一方、コックピット内の通之介は荒く息を吐いていた。
「……はぁ、はぁ…ったく、“一人”じゃやっぱこうなるか」
魔力を注ぎ込む掌から、一気に力が吸い取られているような感覚に陥る。
「それに……」
ボーンゴーレムに目を向ける。倒れ臥し、体中にヒビが入っていたはずの体は、何時しか修復され、よろよろと立ち上がっていた。
「くそ、やっぱ“魔法”を遣わないとダメージを与えられないか……」
歯噛みする通之介。シュ・ヴェルトを動かしているのは通之介自身の“魔力”であるが、それは電池と同義であり、魔法を用いた攻撃をしなければ、たとえ蹴りやパンチがマトモに当たっても、それは効果的なダメージにはならないのだ。
「こんなとき、“あいつ”がいてくれればな……」
この場にいない人物に思いを馳せ、しかし一瞬でそれを振り払う。
「しょうがない。今できることを、精一杯やってみるまでだ。……じゃなきゃ、“あいつ”に怒られっちまうからな」
ふっ、と唇を僅かに笑わせ、通之介が呟いた。
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「あらあら~街中が骨だらけになっちゃうと、野良犬さんたちがたくさん出てきそうね~」
姉がどこかズレた発言をする。が、散らばった骨が行き着く先はそればかりではない。
「街が…!」
視線の先で、飛び散った破片が、家やビルを傷つけていく。
「あンの馬鹿……」
唸るように呟くと、まひるがカーディガンを羽織って部屋を飛び出す。
「何処行くの、お姉?」
「あいつんとこ! バカやってるの止めるの!!!」
そう言い残し、サンダルをつっかけて走る。
「ちょ、ちょっとまひるちゃ~ん、パジャマのまま出ちゃだめよ~」
姉の声がする頃には、既にまひるはそれが聴こえる範囲にはいなかった。
-つづく-
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2年ぶりにネタを掘り起こす。
どんだけ待たせてるねんとw
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