炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【必殺!】異伝・仕事人相対/第9場

 発動した<合>のモジカラが五体の<折神>を輝かせ、飛翔させる。

 それぞれがそのカタチを変え、合わさり―――巨大な人型に成る。

『<シンケンオー>、天下統一ッ!!!』

 その手が兜を被り、月明かりに金色の鍬形が瞬いた。


「な………!!?」

「…驚かねえんじゃなかったのかい?」

 目が点にして口をぱくぱくさせる涼次に、ぼそっと主水が突っ込んだ。

『そう何度も何度もやられてたまるか! 出会え、大ナナシ連中!!』

 巨大<ウロミタマ>が吼えると、家屋の<スキマ>を通って巨大なナナシがわらわらと現れた。

『ダイシンケン!』

 動じることなく、シンケンオーが腰から大太刀…ダイシンケンを抜き、飛び掛る大ナナシ連中に立ち向かう。

 二、三度斬撃が走り、大ナナシ連中が音もなく崩れ落ちた。

『ぐぎ…っ』

 圧倒的な迫力にたじろぎ、後ずさる<ウロミタマ>

『逃がさんッ!』

 レッドの一喝が、江戸の空に響く。

『な、なんのぉ!!!』

 窮鼠猫をかむが如く、激昂した<ウロミタマ>が口から熱気を帯びた痰を吐く。すかさずダイシンケンで叩き落すシンケンオーだったが、その痰は刃に絡みつき離れない。

「うえ…汚ぇ」

 仮面の向こうで、グリーンがしかめっ面になった。

『ハハ…かかったわ!』
『何!?』

 <ウロミタマ>が笑った瞬間、刀身に絡んだ痰が爆発を起こした。

「ぐっ…!?」

 破壊こそ免れたものの、強烈な衝撃がシンケンオーの巨体を揺らした。

『そらそら…まだまだいくぞぉ…! かぁ~~~っ、ぺっぺっぺっ!』

 調子に乗った<ウロミタマ>が次々と痰を吐く。と、シンケンオーはそれを躱すどころか積極的に刀身に痰を纏わせていく。

「何をしてるんだろう…あれじゃ刀が…」
「黙って見てな」

 心配そうに見上げる源太に、小五郎がぴしゃりと言い放った。

『ハッ!』

 べっとりついた痰の塊ごとダイシンケンを振るうシンケンオー。

『…あ』

 <ウロミタマ>がその真意に気づいたとき、その刀身は腹に当たっていた。

 刹那、強烈な大爆発が<ウロミタマ>の至近距離で発生した。

『ゴバアァガバ!!?』

「後先考えずやってるからよ」
 ハン、と鼻で笑うピンク。<ウロミタマ>は盛大に吹っ飛び、ごろごろとのた打ち回った。

「止めだ!」

 シンケンオーの内部、並び立つ五人がいっせいにシンケンマルに装填した円盤をまわす。

『ダイシンケン…侍斬り!!!』

 月明かりに輝くダイシンケンの刃に、<斬>のモヂカラが注ぎ込まれ、刀身に刻まれた紋が鮮烈に浮かび上がった。

『はぁっ!!!』

 五人同時にシンケンマルを振り下ろすと、それに連動してシンケンオーがシンケンマルを振り下ろす。

 銀色の軌跡が<ウロミタマ>を縦一文字に切り伏せ、その身を真っ二つにする。

『ゲゲゲ…外道は…人の常よ……人が人である限り…外道衆は…不滅だああああ!!!』

 朗々と語りながら消滅する<ウロミタマ>。

「……たとえそうであったとしても」

 その言葉に、レッド…烈堂が重々しく呟く。

「我らは人の心を信ずる。外道に堕ちるのも人なら、救うのもまた、人なのだから…」




   -つづく-


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 なんとも<ウロミタマ>のキャラが一定しなかった気がするorz
 HPにUPしなおす際はこの辺どうにかしたいなあ……

 さて、二の目も無事に撃破したので外道衆紹介。


 <ウロミタマ>
 大きな肉の塊のような、あるいは膨らんだ皮のようなアヤカシである。
 明確な顔は持たないが、全体的にかなり醜悪な姿。煙のように実体を薄くして人間の心の<スキマ>に自由に出入りできるという特殊能力を持ち、それによって入り込んだ人間を自由に操る。また、それを応用して敵の攻撃を回避することも可能。

 現代の伝承に「おに」と呼ばれる妖怪がいる。
 「おに」とは「おぬ(陰)」転じたものが語源とされ、もとより「姿の見えざるもの」「この世ならざるもの」であることを意味していた。おそらくは取り付かれた人間から発する、ウロミタマの目に見えぬ悪意が、「おに」の伝承のルーツであろう。



 …まぁ、鬼の起源なんぞそこらに転がってる上にもっと古いのでアテにしないよーにw